いちゃらぶ②(日常パート)

はやしかわともえ

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真司×千晶&千尋×加那太

千晶・自宅でスイパラをする

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仕事から帰って来て千晶は夕飯を作っていた。真司はいつものようにナキの相手をしている。寂しがりのお姫様は夜になると甘えたように鳴いて真司を独り占めにする。
千晶としては複雑だが、ナキが可愛いので我慢している。
夜になればナキは自分のねぐらで眠るので、夜まで真司に甘えるのは我慢だ。

突然インターフォンが鳴った。

「俺が出るよ」

「ありがとうございます」

真司が玄関で応対している。千晶はようやくできた肉野菜炒めを皿に盛り付ける。今日はこれがメインディッシュだ。簡単にオムレツも焼いてみた。

真司が持って来たのは巨大なダンボールだった。

「それ、なんですか?」

千晶は最近通販もしていない。真司が頷いた。

「俺の実家からだ。ほら、うち農家で果物作ってるだろ?
多分商品にならないやつだと思うぞ」

「え、果物?嬉しい」

千晶は甘いものに目がない。スイーツだけではなく、果物ももちろんストライクゾーンだ。
真司が箱を開けている。中から出てきたのは大きな桃とシャインマスカット、そしてブルーベリーだった。

「わ、高い奴ばっかり」

「多分規格に漏れたんだよ」

「こんなに美味しそうなのに」

「ちょっと味見しないか?母さんたちにお礼の電話したいし」

「はい」

真司に促されて千晶はマスカットの粒を一つもいだ。

「いただきます」

一口でマスカットを放り込み噛みしめると果汁が溢れて来る。
すっきりとした甘さに千晶は唸ってしまった。

「美味い」

「お、じゃあそう言っておくな」

真司がさっそく電話をしている。真司の家には一度遊びに行ったことのある千晶である。
また行きたい、と思っているがなかなか実現しない。

「また遊びに行くよ」

真司も電話口でそう言っている。千晶はスケジュールを改めて思い出していた。
有休もたまってきているのでそろそろ消化したい。もしタイミングが合えば行けるはずだ。

「真司さん、これでスイパラしませんか?」

電話を切った真司に千晶がそう提案すると、真司が首を傾げる。

「俺、この果物でケーキ作ります。多分沢山出来るので、かなさんたちも呼んで」

「お、いいなあ。手伝うよ」

「ありがとうございます」

千晶がスマートフォンで千尋と加那太にそれぞれメッセージを送るとすぐ了承のメッセージが返って来た。
一緒にケーキを作りたいと加那太に言われたので遠慮なく手伝ってもらうことにする。

「楽しみだなあ」

「千晶、夕飯にしよう。今日も美味そうだな」

「お腹空きましたね」

***

「わ、すごい果物の量」

加那太が驚いたような声を上げる。
今日は休日だ、千晶はずっとこの日を楽しみにしていた。

「二人共、帰りに持って行ってくれ」

「いいのか?」

「駄目にしちゃっても、もったいないし」

「確かにな。じゃあ有難くもらうよ」

四人は作業を始めた。生地を混ぜるのにはコツがいる。
それは千晶が担当した。スポンジが膨らまないと美味しいケーキは出来ない。

オーブンに生地を入れて、次はブルーベリーパイを作る。
パイシートを型に敷き詰める。クリームも忘れずに入れる。
卵黄を塗ってオーブンに入れるだけにしておく。ブルーベリーは冷凍しておいた。

「うん、お菓子って凄まじい量のバターと砂糖を入れてるよなあ」

真司の言うことは最もだ。
普段からお菓子を食べる千晶ですら驚くので真司にとっては恐ろしい量だろう。

「わ、甘い匂いしてきたよ」

加那太が嬉しそうに笑った。生地をオーブンから取り出すとふっくらと生地が焼けていた。
それに用意していた生クリームを塗る。
スポンジの間にカットしたマスカットを入れて更に生クリームでデコレートした。

「よし、一つ完成ですね」

ブルーベリーパイ、ピーチタルトも完成する。

「わああ、ケーキが三種もある」

「今切りますね」

千晶は包丁でケーキをカットした。
なんとも美味しそうだ。
写真もしっかり撮った。すっかり職業病になっている。

いただきますとそれぞれ言って好きなものを食べ始めた。

「うま」

加那太はピーチタルトを頬張っている。
お供のお茶はこの前百貨店で買った高級な紅茶である。
こういう時でなければ飲めない。

「うん、自分で作ったにしては美味しいです」

「あきは辛口だな」

千尋が笑っている。

「俺、忖度はしません」

「いいと思う」

千晶は満足した。

おわり
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