いちゃらぶ②(日常パート)

はやしかわともえ

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その他

加那太の悩み

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「そうだ!やれっ!そこだ!」

ある日の深夜、加那太は日課にしているゲーム実況をスマートフォンで見ていた。
ライブ配信なので、運が良ければ自分も憧れの配信者とマッチできるかもしれない。

加那太はそう思って、ゲーム機本体をスタンバイしていた。そして次のマッチ、加那太はうっかりマッチしてしまったのだ。それに一瞬慌てたが、いつものようにプレイしたところ、見事に勝利した。そこから加那太はプレイヤーKAとして生配信に乱入するのが楽しくなってしまったのだ。加那太はアカウントは持っているが、チャンネルは持っていなかった。噂になっていることもクリスマスに千晶から聞いて初めて知った。まさかとは思ったが人気ブロガーである千晶が嘘をつく理由はない。

それから加那太はしばらく乱入はやめて大人しくしていた。だが、そんなある日こんなネットニュースを見つけてしまう。

「このブラウザゲーム、リニューアルするんだ。うわー」

「加那もPC買ったらいいのに」

「え?」

対面に座った千尋は読んでいた新聞を畳みながら言う。そのままコーヒーの入ったマグカップを持ち上げた。加那太には少し甘めのホットミルクを淹れてくれていた。

「え、でもPCってすごく高いんじゃ?」

「お前、普段金使わないじゃねえか。使ってもゲームソフトかプラモだろ?」

ズバリ、と言われて加那太はハッとなった。食費や生活費を千尋には渡しているが自分の金の使い道などそれくらいだ。

「PCって何も知らない人が買っていいの?」

「当たり前だろ。待て、一回あきに調べてもらう」

何を、と問おうとしたが、千尋はその隙を加那太には与えてくれなかった。

「ま、昼には返事返ってくるな。そろそろ行くわ。片付け任せる」

「う、うん。行ってらっしゃい」

加那太は朝食を食べるのを再開した。
今日はエッグマフィンだ。
とろとろの目玉焼きとカリカリのベーコンが軽くトーストされたマフィンにはさまっている。

「うんまっ」

温かいコーンスープを一口飲む。千尋はすぐ腹を減らす自分のために毎食たっぷり食事を用意してくれる。

「PCかー」

加那太にはあまり実感がわかなかったが、もし買うなら他にも欲しいものがいくつかあった。
コートを羽織って千尋が用意してくれた弁当と水筒の入った大事なリュックサックを背負う。

「火の元よーし、鍵よーし」

最後に暖房と元栓、戸締まりを確認して加那太は家を出たのだった。

朝、バスを降りて道を歩いていると、学生たちが歩いているのを見かける。
今日もみんな元気そうである。
加那太はそれにホッとして、自分の中学生時代を彼らの姿に重ねた。
自分はどんな子供だったか最近こうしてよく思い出す。
千尋がいつもさりげなく助けてくれたなとそこまで思い出して加那太のリプレイは終わりを告げる。
校門が見えてきた。
時計を見ると八時少し前、いつもと変わらない。

加那太は生徒や教員に挨拶をしながら校内に入った。
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