36 / 45
その他
加那太の悩み③
しおりを挟む
「それはお疲れ様でした」
「いやいや、そんな」
加那太の対面には千晶がいる。昼間、彼から加那太のスマートフォンに連絡が来たのだ。『今日仕事が終わったら会えるか?』と。
千尋も後から合流するからと千尋から連絡が来たので、加那太は了承した。千晶とは近くのファミリーレストランで待ち合わせをした。先に飲み物を頼むことにする。
加那太は簡単に今日起こった出来事を千晶に話した。千晶は驚いた様子で加那太の話を聞いていた。
「その…例の子はどうなるんですか?」
千晶が心配そうに尋ねてくる。駿太は病院に行った結果、そのまま入院することになった。
もちろんそういう噂は学校ですぐ広まる。加那太は千晶にどう言おうか考えた。だがやはり溜まっていた思いがつい先走ってしまう。
「多分これから加害者探しになる」
「やっぱり」
千晶にもそうなることが分かっていたのだ。だが聞かざるを得なかったのだろう。そうならなければいいと願うからこそだ。
「今井くんが話してくれた。特定の子達からからかわれたりしてたって」
「そう…なんですね。じゃあその子達が」
「多分ね。でも初めは隠そうとした。隠せなかったけど」
「いじめられるのは自分のせいだって思ってる子、いっぱいいますしね」
千晶の言う事に加那太は頷いた。自分がもし同じ立場だったら同じように隠しただろう。誰にも助けを求められない人たちを加那太は今まで人一倍見てきている。
「なんかごめん。暗い話になっちゃって」
「いえ!俺で良ければ話、聞きますよ」
千晶が笑ってこう言ってくれるのが有り難い。加那太は嬉しい気持ちと悔しい気持ちが混ざり合って、涙が溢れてくるのを止められなかった。
何故、人は他者を傷つけてしまうのだろう。そして、必ずそれを後悔する。もうそれは絶対に取り返せない。悔やんでも、してしまったことは取り消せないのにだ。
「か、かなさん!俺じゃやっぱり頼りないですか?」
千晶がオロオロし始める。どうやら加那太を泣かせてしまったと思っているらしい。
加那太は拳で涙を拭った。千晶に笑ってみせる。
「あきくんに話したらホッとした。僕、怖がりだから本当は怖かった。ありがとう」
「かなさん、大丈夫ですよ」
千晶が笑う。ふと見ると千尋が歩いてくる。
「待たせたな…ってまだ食ってなかったのか?」
「色々あったんだよ、千尋」
「そうか。また話してくれ」
「うん」
千尋の優しさに加那太は感謝した。
✣✣✣
「で、ですね」
料理を食べ終わり、一息ついていると、千晶がカバンから何冊か冊子を取り出した。
加那太に渡してくるのでそれらを受け取る。ページごとに色とりどりの付箋が貼られていた。
「千尋さんに聞かれたんですが、せっかくPCを買うならゲーム専用の方がいいんじゃないかなって。かなさんはブラウザゲームがやりたいんですよね?」
「あきくん、こんなに調べてくれたの?」
「俺、家電割と買うので」
「へええ」
「ゲーミングPCはスペックも高いし、技術も上がって、だんだん安くなってきています。
それに、PCを買うならゲーミングチェアとヘッドホンとか欲しくならないですか?」
「なる」
「あきはセールスが上手いなぁ」
千尋の言葉に千晶が笑いながら言う。
「あとはかなさんが買いたいって思うかどうか、なんですけど」
「うん、すごく憧れる。
でもそんな贅沢しちゃっていいの?」
「加那はもうすぐ誕生日だし、ゲーミングチェアとヘッドホンくらい買ってやる」
「ヒエッ!」
相変わらず千尋はスパダリだ。加那太は嬉しくなった。
「分かった。一回パンフレットしっかり読んでみる」
「はい。俺ももう少しリサーチしてみますね!またメールします」
「ありがとう、二人共」
三人が店を出ると、見計らったように車が停車した。窓が開く。
「千晶ー、良かった。間に合った」
「真司さん?お仕事は?」
千晶の言葉に真司が笑う。
「仕事なんとか終わったよ。皆の顔が見たくて慌てて来た」
「お久しぶりです、真司さん」
「あぁ。久しぶり」
千晶は真司の乗った車に乗り込む。
「かなさん、千尋さん、また!」
千晶たちの車が遠ざかるのを加那太と千尋は見送ったのだった。
「俺達も帰るか」
「うん!」
「いやいや、そんな」
加那太の対面には千晶がいる。昼間、彼から加那太のスマートフォンに連絡が来たのだ。『今日仕事が終わったら会えるか?』と。
千尋も後から合流するからと千尋から連絡が来たので、加那太は了承した。千晶とは近くのファミリーレストランで待ち合わせをした。先に飲み物を頼むことにする。
加那太は簡単に今日起こった出来事を千晶に話した。千晶は驚いた様子で加那太の話を聞いていた。
「その…例の子はどうなるんですか?」
千晶が心配そうに尋ねてくる。駿太は病院に行った結果、そのまま入院することになった。
もちろんそういう噂は学校ですぐ広まる。加那太は千晶にどう言おうか考えた。だがやはり溜まっていた思いがつい先走ってしまう。
「多分これから加害者探しになる」
「やっぱり」
千晶にもそうなることが分かっていたのだ。だが聞かざるを得なかったのだろう。そうならなければいいと願うからこそだ。
「今井くんが話してくれた。特定の子達からからかわれたりしてたって」
「そう…なんですね。じゃあその子達が」
「多分ね。でも初めは隠そうとした。隠せなかったけど」
「いじめられるのは自分のせいだって思ってる子、いっぱいいますしね」
千晶の言う事に加那太は頷いた。自分がもし同じ立場だったら同じように隠しただろう。誰にも助けを求められない人たちを加那太は今まで人一倍見てきている。
「なんかごめん。暗い話になっちゃって」
「いえ!俺で良ければ話、聞きますよ」
千晶が笑ってこう言ってくれるのが有り難い。加那太は嬉しい気持ちと悔しい気持ちが混ざり合って、涙が溢れてくるのを止められなかった。
何故、人は他者を傷つけてしまうのだろう。そして、必ずそれを後悔する。もうそれは絶対に取り返せない。悔やんでも、してしまったことは取り消せないのにだ。
「か、かなさん!俺じゃやっぱり頼りないですか?」
千晶がオロオロし始める。どうやら加那太を泣かせてしまったと思っているらしい。
加那太は拳で涙を拭った。千晶に笑ってみせる。
「あきくんに話したらホッとした。僕、怖がりだから本当は怖かった。ありがとう」
「かなさん、大丈夫ですよ」
千晶が笑う。ふと見ると千尋が歩いてくる。
「待たせたな…ってまだ食ってなかったのか?」
「色々あったんだよ、千尋」
「そうか。また話してくれ」
「うん」
千尋の優しさに加那太は感謝した。
✣✣✣
「で、ですね」
料理を食べ終わり、一息ついていると、千晶がカバンから何冊か冊子を取り出した。
加那太に渡してくるのでそれらを受け取る。ページごとに色とりどりの付箋が貼られていた。
「千尋さんに聞かれたんですが、せっかくPCを買うならゲーム専用の方がいいんじゃないかなって。かなさんはブラウザゲームがやりたいんですよね?」
「あきくん、こんなに調べてくれたの?」
「俺、家電割と買うので」
「へええ」
「ゲーミングPCはスペックも高いし、技術も上がって、だんだん安くなってきています。
それに、PCを買うならゲーミングチェアとヘッドホンとか欲しくならないですか?」
「なる」
「あきはセールスが上手いなぁ」
千尋の言葉に千晶が笑いながら言う。
「あとはかなさんが買いたいって思うかどうか、なんですけど」
「うん、すごく憧れる。
でもそんな贅沢しちゃっていいの?」
「加那はもうすぐ誕生日だし、ゲーミングチェアとヘッドホンくらい買ってやる」
「ヒエッ!」
相変わらず千尋はスパダリだ。加那太は嬉しくなった。
「分かった。一回パンフレットしっかり読んでみる」
「はい。俺ももう少しリサーチしてみますね!またメールします」
「ありがとう、二人共」
三人が店を出ると、見計らったように車が停車した。窓が開く。
「千晶ー、良かった。間に合った」
「真司さん?お仕事は?」
千晶の言葉に真司が笑う。
「仕事なんとか終わったよ。皆の顔が見たくて慌てて来た」
「お久しぶりです、真司さん」
「あぁ。久しぶり」
千晶は真司の乗った車に乗り込む。
「かなさん、千尋さん、また!」
千晶たちの車が遠ざかるのを加那太と千尋は見送ったのだった。
「俺達も帰るか」
「うん!」
0
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
裏の顔は、甘い低音ボイスとセクシーな歌声の、人気歌い手「フユ」。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度だが、情が深く人をよく見ている。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる