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14・合コンプランニング

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「んー、ねむっ…」

日曜日になっている。慧はぼーっとしながら起き上がった。基本的に慧は早起きだ。モデルの仕事で現場が遠い日などもあるのでいつの間にかこうなっていた。ふと、枕元のスマートフォンを見ると、沢山コメントが来ていることに気がつく。

「皆、夜ふかしは良くないぜ」

ふ、と慧は鼻で笑って階下に向かった。

「あら、おはよう、慧。今日、日曜日よ?」

「分かってるけど起きたんだよ。目玉焼き食べたいから焼いていい?」

あらあらと母親が笑う。

「皆の分も作ってもらっていい?ベーコンあるけど」

「全部使っていいの?」

「もちろん」

慧は鼻歌を歌いながら冷蔵庫を漁った。祖父、祖母、父、母、姉、慧の六人家族である。
慧はベーコンと卵を七つ取り出して調理を始めた。慧は目玉焼きが大好きだ。二つ食べる、と勝手に決めている。フライパンに油を入れて熱する。そこにベーコンを入れてたまごを割り入れた。ジュワアアアアといい香りがする。蓋をして火が通るのを待った。慧の家族は半熟が好きだ。
慧はそろそろか、と火を止めてそれぞれの皿に盛り付ける。

「あら、美味しそう」

「一つ黄身潰れた。それは俺が食べる。ねえ先に米と味噌汁盛っていい?腹減った」

「いいわよ、おじいちゃんもそろそろ畑から戻って来るし」

「え、じーちゃんもう畑に行ってるの?」

慧が一緒に行きたかったのにと悔しがると母親が笑う。

「今度は連れてってもらえるようにお願いしとくわね」

「うん!」

ぱああと慧が顔を輝かせると母親が笑った。

「慧、今日保くんの家に行くの?」

「うん、行くよ」

「これ、野菜採れたからお裾分けなんだけど持っていってもらえる?」

「おう」

慧は目玉焼きを米の上に載せて食べ始めた。今日は他にウインナーソーセージや納豆、具がたっぷり入った味噌汁がある。煮物ももりもり食べた。

「慧、おはよう」

「じーちゃん!!なんで俺に黙って畑に行くんだよ!!」

慧ががたり、と立ち上がると、祖父は困ったように対面に座った。

「いや、その…すまん」

普段無口な祖父からの謝罪に慧も座ることしか出来ない。

「そ、そんなに怒ってないよ?じーちゃんの手伝いがしたいっていう俺のわがままなんだ」

「慧、今度は一緒に行こう。保くんも」

「え、ほんと?保も一緒に?」

「あぁ。俺は慧に畑を継いでほしいって思ってる。その…仲良しなんだろう?保くんとは」

家族には言っていなかったがやはり伝わるらしい。慧は照れながらも頷いた。

「う、うん。大好きなんだ」

「慧がすごく幸せそうでじーちゃんは嬉しい」

祖父が喜んでくれて慧も嬉しくなった。

「じーちゃんは俺が女の子のカッコしても怒らなかったよね、なんで?」

「可愛かったからなぁ」

祖父がしみじみ言う。肝心の恋人は一言もそのワードを言ってくれないが、今は気にならなかった。それだけ嬉しかったからだ。

「じーちゃんのご飯持ってくるな!ばーちゃんもそろそろ起きてくるよな!」

慧はバタバタと台所に向かった。

✢✢✢
昼下がり、慧は保に会いに来ている。

「お邪魔します。保のお母さん、これウチで採れた野菜なんだけど」

「まあいつもありがとう。保なら部屋にいるわよ。慧ちゃんが来るから色々準備するって」

準備ってなんだろう?と思ったが、慧は保の部屋へ向かった。扉は締め切られている。ノックすると保が現れた。

「慧、来てくれて良かった。迎えに行こうかと思っていたんだ」

いつも穏やかな保にしては珍しく興奮しているようだ。

「保?大丈夫か?」

慧が心配すると、保はベッドに座り込んだ。慧もその隣に腰掛けた。今日の慧は青いワンピースを着ている。前に付いているボタンで留めるタイプだ。腰元にリボンが付いている。

「俺、合コンの幹事なんて初めてで色々シミュレーションしてみたんだよね」

さすが真面目な保である。

「はじめくんに恋人が出来るのは一番なんだけど、無理しないようにとか、俺たちが上手くサポートしないと、とか」

慧は笑ってしまった。

「保、合コンは楽しいもんだって巧が言ってたぞ。俺たちは賑やかしなんだろ?
お金の計算とか、場所の確保を先にしないと」

「そう、その場所なの!」

ん?と慧が首を傾げると保がスマートフォンの画面を見せてくる。そこは今流行っているというレトロ感満載の喫茶店だ。

「わ、なんだここ。エモいな!」

「だよね?メロンソーダ、はじめ君が好きみたいだしどうかなって」

「予約取れるのか?人気店なんだろ?」

「一応仮で予約入れてみた。慧がスケジュール送ってくれてたからね」

「そうか!ありがとう!じゃああとは何をするんだ?」

慧が首を傾げると保が待っててと階下に向かった。戻ってくるとグラスを二つ持って現れる。

「レモネードだって。慧の家からもらったレモンで母さんが作ったみたい」

「おお、さすが保ママ」

保の母親は家政婦として働いている。慧がストローでレモネードを飲むとしゅわりと酸味と甘味が爽やかに抜ける。

「美味っ!」

「うん、これ、飲みやすすぎて困る」

保はそう言うが彼は締まった体つきをしている。

「ただ話すのも楽しいと思うんだけど、そうすると話しやすい人だけ話すことになると思うんだよね」

「確かに」

「だから最初の30分くらいはゲームをしようかなって」

「ゲームか!」

「あーでも何も思いつかなくて参ってる」

どうやらこれで保は興奮していたらしい。慧はまた笑った。

「大丈夫だよ、保。スマートフォンでググってみようぜ」

「なんて調べればいいの?」

あ、と慧はスマートフォンをそのままにしていたのを思い出した。

「昨日のオンスターにコメントいっぱい来てたんだ」

「あぁ、先に読む?」

二人でスマートフォンの画面を覗き込む。コメントには「チュロス美味しそう」から始まって、「飯テロ!」という少し笑えるものまで様々だった。

「慧は有名人なんだなって思い知らされる」

「俺は俺だぞ?そういうの関係ないんだからな!」

慧が保の顔を見上げて言うと抱き寄せられてキスされた。

「今は独り占め出来るからする」

保が深く口付けてくる。あまりの気持ちよさにクラっときてしまう。

「ん…ふ…」

「好きだよ、慧」

「お…俺も」

二人は同時にハッとなった。

「ゲーム探さないと!」
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