男の娘、愛doll始めました!

はやしかわともえ

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キス

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翡翠はまた境の家に来ている。この間の生配信はとても評判が良かった。
そのため二回目もやることが決まったのだ。今日は真綾も一緒に境の家に来ている。
始めからこうすればよかったと黒咲に嘆息混じりに言われ、翡翠はそれに笑ってしまった。
社長である黒咲も完璧ではないのだなと安心した瞬間だった。

「わ、このカフェオレ美味しいー!」

こきゅ、と小さな口でカフェオレを飲んだ真綾が叫ぶ。それは今、境がハマっているブレンドの豆から抽出したものらしい。翡翠も一口飲んでみたが確かに美味い。カフェオレを飲むたびにカラカラと氷が鳴る。

「さすが真綾ちゃん。味が分かるんだね!」

「真綾、味覚には自信ある」

真綾がぐっとグラスを持ってない方の手で拳を握る。

「真綾ちゃんってさあ、全然食いしん坊には見えないけど本当なの?」

境の言葉に真綾は真っ赤になった。

「え・・・境さん、あたしたちの配信結構見てる?」

境が悪戯っぽく笑う。

「うん。面白いじゃん、愛doll」

真綾はグラスを持ったまま翡翠の後ろにそっと隠れた。それでもカフェオレを飲むのをやめないので、よほど美味しいらしい。

「ひーくん、なんで平気なの?」

「なにが?」

真綾が頬を膨らませる。
そして小声で耳打ちしてきた。


「境さん、かっこいいのにひーくん、なんで平気なの?」

「もう慣れた」

「ふぎゅ」

翡翠の返答に真綾がつぶれたカエルのような声をあげる。

「二人でなにこそこそ話してるの?」

境が困ったように声を掛けて来る。
翡翠はグラスをテーブルに置いてコントローラを握った。
真綾もスタンバイしている。

「今日もよろしくお願いします」

「うん、今度は前回より上位に食い込めるといいね」

三人はモニタの前に並んで座った。境は本当にゲームが好きらしい。
モニタにもこだわっているのだと言っていた。
確かに画質も良く見やすい。
ゲームが始まり、翡翠は確実に銃を拾う。

「お、レアなやつじゃん」

境が嬉しそうに言う。

「はい、これで先制を仕掛けます」

「頼んだよ」

翡翠はここのところ、個人的にみっちりこのゲームの練習をしていた。
何回かチャンピオンになれたこともある。

「真綾、いい防具持ってる」

「いいね、真綾ちゃん」

三人は敵がいると思われるところに隠れて様子を窺った。
もちろん迎撃狙いである。向こうから何も知らない敵が走ってくる。
翡翠は躊躇なく銃を撃った。
一発で敵が倒れる。弱点の頭に当たったらしい。

「いいよ、翡翠くん」

「今ので場所がばれました。移動します」

「了解」

翡翠はどちらかと言えば遠くから敵をスナイプするのが得意だ。遠目から敵を狙い撃つ。
ぱきゅっと弾を撃つと相手が倒れる。

「いいね!」

「ひーくんがめちゃくちゃ上手くなってる」

真綾が驚いているので翡翠は笑った。

「まーちゃんが得意な近接攻撃、期待してるよ」

「りょ!」

「いやあ、二人がいると頼もしいなあ」

境との練習は今日も楽しかった。


***

「じゃあ、真綾帰るねえ」

夕方になり、真綾が帰る時間が来た。真綾は都内に住んでいるとはいえ、実家暮らしらしい。
門限が厳しいのだと言っていた。真綾と話していて分かったことだが、彼女の家は相当金持ちらしい。それに頼らないのが真綾らしいと翡翠は思っている。
 

翡翠は今日、境の家に泊まるつもりでここに来ていた。

「気を付けてね、まーちゃん」

「ひーくんもね」

翡翠は自分が何に気を付ければいいのか分からなかった。

「真綾ちゃん、次の配信、よろしくね」

「はい!こちらこそ。じゃ、さよなら」

真綾が手を振って帰って行った。
真綾がいないと、部屋がとたんに静かになる。

「翡翠くんは本当に真綾ちゃんと仲良しなんだね」

玄関で境に朗らかに言われて翡翠は頷いた。

「はい。まーちゃんいい子なんで」

「翡翠くんもいい子だと思うよ」

それに思わず顔が熱くなった翡翠である。真綾の手前平気なふりをしたが、実際は境が好きで仕方がなくなってきている。

「さ、境さんが優しいのでそう見えてるだけです」

ふいと彼から視線を外しながら翡翠は言った。
本当は直視できないくらいドキドキしてしまっている。

「翡翠くん、とりあえず座ろうか」

軽く手を握られて引っ張られる。この人はいつも自然に自分を導いてくれる。
そこがまたいいなと思う点である。

「ね、翡翠くん。俺のこと、まだ好きでいてくれてる?」

ソファに座った瞬間抱き寄せられた。

「はい」

これ以上嘘を吐いたら自分は後悔すると翡翠は思った。

「じゃあ、俺とキスしてくれる?」

境の真剣な表情に翡翠はドキリとした。
やはり境はかっこいい。すっとした鼻梁に切れ長の瞳。
境の顔が近づいて来る。
翡翠はそれ以上目を開けていられなかった。
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