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第二話
妹
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地下から地上に戻ってきたら、もう真夜中を過ぎて明け方だった。
窓から見える空が明るくなってきている。
すごく眠たいし、喉もすごく乾いている。
「夕夏ちゃんには冷たいりんごジュースをあげようね」
「わぁ!嬉しい」
「私もそれがいいな」
ウル様が言う。
「心得た」
結局全員りんごジュースを飲んだ。
甘くて冷たくてとても美味しい。ようやく生きた心地がした。自分がさっきのことでどれほど怖かったか、ようやく分かる。
ああ、ナミネ姫の怪我が治せて本当によかった。
「ウル、ひとまず夕夏ちゃんは借りるからな。
先程の礼がしたい」
「わかったよ」
「ウル様、おやすみなさい」
「おやすみ、夕夏」
ウル様に手を振るとウル様も振り返してくれた。
「夕夏ちゃん、おいで」
ナミネ姫が優しく手を握ってくれる。
私はナミネ姫の部屋に入った。
中には鎧が沢山飾られている。
わぁ、なんだか博物館みたい。
ナミネ姫が私の両肩を掴んだ。真面目な顔で言われる。
「夕夏ちゃん、君には感謝してもしきれない」
「そんなこと・・・」
私は実際何もしていない。
助けてくれたのはアリッサ姫の力だ。
ナミネ姫が私を抱きしめる。
ふわっといい香りが私を包む。
「夕夏ちゃん、私には妹がいたんだ」
ナミネ姫の妹さん?
私は彼女の背中に手を置いた。ナミネ姫の肌はすべすべだなあ。
「彼女は赤ん坊の時、熱を出してね」
私にはなんとなくその話の続きがわかる気がした。
「あっけなかった。あんなに大勢、大人がいたのに誰も彼女を救えなかった」
ナミネ姫の声が震えている。もしかして泣いているの?彼女は私をぎゅっと抱きしめる。
「君を見たとき、驚いた。
妹が戻ってきてくれたのだと思ってしまった」
「このネグリジェはもしかして?」
私はウル様の言葉を思い出していた。
「ナミネの服にしては」という言葉。
ナミネ姫が笑う。
「あぁ、そうだよ。どうしてもシヅカに着てほしくなってしまって買ったんだ。そんなこと、もう不可能なのにね。でも夕夏ちゃん、君がここに来てくれた」
「ナミネ姫、本当に妹さんが大好きなんだね」
「うん、大好きだよ。君みたいに可愛らしい子だった」
「私もナミネ姫が大好き。だって、本当のお姉さんみたいだもの」
「夕夏ちゃん」
私はナミネ姫の顔をようやく見上げられた。
ナミネ姫の瞳から涙がぼろぼろ流れる。
本当に悲しい出来事だ。でもナミネ姫はちゃんと前を向いて進んでいる。
その雫は私の腕にぽたりと落ちた。
突然リボンが私達を包む。
「夕夏姫!アルバムを!」
クシマキがぽん、と現れてアルバムを開く。
またアルバムの汚れが薄くなった。
窓から見える空が明るくなってきている。
すごく眠たいし、喉もすごく乾いている。
「夕夏ちゃんには冷たいりんごジュースをあげようね」
「わぁ!嬉しい」
「私もそれがいいな」
ウル様が言う。
「心得た」
結局全員りんごジュースを飲んだ。
甘くて冷たくてとても美味しい。ようやく生きた心地がした。自分がさっきのことでどれほど怖かったか、ようやく分かる。
ああ、ナミネ姫の怪我が治せて本当によかった。
「ウル、ひとまず夕夏ちゃんは借りるからな。
先程の礼がしたい」
「わかったよ」
「ウル様、おやすみなさい」
「おやすみ、夕夏」
ウル様に手を振るとウル様も振り返してくれた。
「夕夏ちゃん、おいで」
ナミネ姫が優しく手を握ってくれる。
私はナミネ姫の部屋に入った。
中には鎧が沢山飾られている。
わぁ、なんだか博物館みたい。
ナミネ姫が私の両肩を掴んだ。真面目な顔で言われる。
「夕夏ちゃん、君には感謝してもしきれない」
「そんなこと・・・」
私は実際何もしていない。
助けてくれたのはアリッサ姫の力だ。
ナミネ姫が私を抱きしめる。
ふわっといい香りが私を包む。
「夕夏ちゃん、私には妹がいたんだ」
ナミネ姫の妹さん?
私は彼女の背中に手を置いた。ナミネ姫の肌はすべすべだなあ。
「彼女は赤ん坊の時、熱を出してね」
私にはなんとなくその話の続きがわかる気がした。
「あっけなかった。あんなに大勢、大人がいたのに誰も彼女を救えなかった」
ナミネ姫の声が震えている。もしかして泣いているの?彼女は私をぎゅっと抱きしめる。
「君を見たとき、驚いた。
妹が戻ってきてくれたのだと思ってしまった」
「このネグリジェはもしかして?」
私はウル様の言葉を思い出していた。
「ナミネの服にしては」という言葉。
ナミネ姫が笑う。
「あぁ、そうだよ。どうしてもシヅカに着てほしくなってしまって買ったんだ。そんなこと、もう不可能なのにね。でも夕夏ちゃん、君がここに来てくれた」
「ナミネ姫、本当に妹さんが大好きなんだね」
「うん、大好きだよ。君みたいに可愛らしい子だった」
「私もナミネ姫が大好き。だって、本当のお姉さんみたいだもの」
「夕夏ちゃん」
私はナミネ姫の顔をようやく見上げられた。
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本当に悲しい出来事だ。でもナミネ姫はちゃんと前を向いて進んでいる。
その雫は私の腕にぽたりと落ちた。
突然リボンが私達を包む。
「夕夏姫!アルバムを!」
クシマキがぽん、と現れてアルバムを開く。
またアルバムの汚れが薄くなった。
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