ムキムキ獣人様(攻)の女子力が高すぎる!

はやしかわともえ

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ベビィドラゴン

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レヴェルたちがたまごを抱えてキリ村に戻ると、村の皆から驚かれた。当然だろう。この村でドラゴンは災害の種とされているのだから。
「ふーむ、幼いドラゴンなら手懐けられるという話も聞いたことはあるが…」
村長が腕を組んで唸っている。
「村長さん!俺たち、女神様と約束したの!ちゃんと育てるって!」
「女神様がそう言ったのなら仕方ないな」
最終的に村長は折れてくれた。村人たちがたまごを見にかわるがわるやってくる。撫でていく者もいた。
「ドラゴンの赤ちゃんなんて想像つかないわね」
「きっと可愛いよ!」
レヴェルは必死に言ったがどうかしらねと周りは半信半疑だ。
「レヴィ、とりあえず休もう。今日は疲れたし」
ライダの言うことも最もだ。ライダとレヴェルはレヴェルの自宅に戻った。
「ここにたまごを置くといい」
ライダが取り出したのは少し大きめの籠だ。クッションが敷いてある。どちらもライダの手作りである。
「ありがとう、ライダ」
レヴェルはそっとたまごをそこに置いた。
「レヴィ、心配だからたまごが孵るまで俺もここにいていいか?」
ライダの言葉にレヴェルはホッとした。一人では不安だなと思っていたのだ。そうと決まればとレヴェルは収納棚からマットとタオルケットを取り出して床に敷いた。自分用である。
「ライダはベッドで寝てね」
「いつも悪いな」
「ううん、いいの」
いつも1人で暮らしているレヴェルにとって、家に誰かがいるというのはなんだか心強い。
「ライダと一緒に暮らせたらきっと楽しいよね」
何気なく言った言葉だったが、ライダも頷いてくれた。
「そうだな、レヴィとなら安心だ。腹が減ったろ?飯を作るよ」
「俺も手伝う!」
レヴェルの家のキッチンは手狭だが、ライダには関係ないらしい。ササッとレヴェルの家にあった材料でご飯を作ってくれた。
「グラタンだ!すごいね、ライダ!」
ライダは笑う。
「時短で出来るなんちゃってグラタンだ」
「なんちゃってなのー?」
あぁとライダが頷く。
「レヴィ、食べてみてくれ」
「いただきまーす」
レヴェルはふうふうしながら食べ始めた。
「わぁ、ベーコンが美味しいね」
「レヴィ、食料庫がほとんど空じゃないか。普段からしっかり食べないと」
「だって料理って難しいんだもの」
「なら俺の家に食べに来い」
「うん!」
レヴェルが夢中になって食べているのをライダが優しい表情で見守っていた。

「たまご、大丈夫かな?」
寝る直前になって、レヴェルは心配になってきた。こつこつ、と軽く叩いてみる。たまごは変わらず温かかった。
「レヴィ、大丈夫だ。そろそろ眠ろう」
「うん」
2人は灯りを消して横になった。窓から月がよく見える。
「ねぇ、ライダ?俺たちが結婚したら何か変わる?」
「そうだな。さっきも言ったけれど、レヴィが良ければ一緒に暮らそう」
「え!本当?本気?」
がばりと起き上がってしまったレヴェルである。
「レヴィ、落ち着け。まずは婚姻の儀が先だ」
「婚姻の儀って女神様に祝福してもらうんだよね?」
「あぁ、2人で花輪を作って女神様に捧げるんだ」
「そうだったね」
「レヴィ、とりあえず眠ろう。まずはドラゴンだ」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
レヴェルは目を閉じた。

パキパキと何かが割れるような音がしている。レヴェルは何事かと目を開けた。ふとそちらに目をやると、たまごがぐらぐらと揺れているのに気が付く。レヴェルは起き上がり灯りを点けた。すぐにたまごの傍に向かう。たまごの殻がかたいのか、なかなか中から出てこない。ライダも気が付いたのかやって来た。
「生まれるな」
ピシピシとたまごの表面に大きなひびが入る。パカリととうとうたまごが割れた。
「キュイ」
たまごから現れたのは緑色のベビィドラゴンだ。あまりの可愛さにレヴェルとライダはただベビィドラゴンを見つめていた。
「キュウ」
ライダがハッとする。
「レヴィ、ちょっとこいつを見ておいてくれ!」
「う、うん」
ライダは自身の家に向かったようだった。
「キュ?」
ベビィドラゴンはレヴェルを見て、可愛らしく首を傾げている。レヴェルは恐る恐るベビィドラゴンを抱き上げた。見た目の割にずっしりと重い。
「キュウ!」
きゅるるとベビィドラゴンの腹から音が鳴る。レヴェルはベビィドラゴンが空腹であることに今更気が付いた。
「待たせた!」
ライダがやってくる。もちろんあのリュックも一緒だ。
「食料を持ってきたんだ。ドラゴンは生肉を食べるんだろう?」
そう言って早速生肉を食べさせている。ベビィドラゴンははぐはぐとよく食べた。
「レヴィ、こいつに名前をつけてやらないか?これから一緒に暮らすんだしな」
ライダの言う通りだとレヴェルも思った。
「そうだなぁ。緑のドラゴンだからエメラルドは?」
「あぁ、鱗が宝石みたいだもんな」
「エメラルド、お前の名前だよ」
「キュウ!」
エメラルドは嬉しそうに鳴いている。腹いっぱい生肉を食べたエメラルドは籠の中で丸くなって眠り始めた。
「こんなに小さいのにあんなに大きくなるんだね」
「本当だな。ちゃんと面倒をみてやらないとな」
「うん」
2人はもう一眠りしようと灯りを消した。

「ドラゴンが生まれた?」
レヴェルとライダは朝一番で村長の家に報告に向かった。エメラルドはまだぐっすり眠っていた。レヴェルがエメラルドの入った籠を見せると、村長は後ろに後ずさった。だが、当然何も起こらない。
「エメラルドと名付けました。これからは俺たちが責任を持って育てます」
「あぁ。この子のために最善を尽くしてやってくれ」
村長はそっとエメラルドの体を撫でた。
「ふむ、ドラゴンの赤子はこんなに小さいのか」
レヴェルとライダも同じことを思っていたので笑った。

「レヴィ、今日の予定は?」
「うん、害獣用の罠の納品日が迫ってきてるんだった。早く作らないと。ライダは?」
「あぁ、俺も納品する分がある」
2人はそれぞれ自分の作業に打ち込み始めた。
「キュウー」
エメラルドが切なげに泣き出す。レヴェルは慌てた。
「どうしたの?エメラルド!」
「腹が減ったんじゃないか?それか用を足したいのかも」
「え?用ってまさか、うんち?」
「生き物だからな」
ライダの言うことはもっともである。レヴェルはエメラルドを抱き上げた。
「キュイー」
「濡れてる…おしっこだったみたい」
「大丈夫だ。洗ってやろう」
「エメラルド、気が付かなくてごめんね」
レヴェルはエメラルドを連れて浴室に向かった。エメラルドは何かを察知したらしい。鳴きながらレヴェルにしがみついてきた。
「エメラルド、大丈夫。落ち着いて」
「キュイ、キュウー」
エメラルドは小さな手足をジタバタさせている。
「エメラルド、大丈夫だ」
「キュウ?」
ライダがエメラルドの頭を撫でると、少しだが大人しくなった。レヴェルは今のうちだと浴室の扉を閉めた。キリ村のシャワーは水の勢いが弱めだ。水温もなかなか温かくならない。だが、それが良かったらしい。エメラルドはだんだんシャワーに慣れてきたらしく機嫌が良くなった。気持ちかったのだろう。
「エメラルド、タオルで拭くよ」
「キュイ」
柔らかなタオルもエメラルドは気に入ったらしかった。子育ては大変だとレヴェルはここで思い知ったのだ。
「良かったな、エメラルド」
「キュイ」
レヴェルがエメラルドを抱えて戻ると、ライダがクッションを洗っていた。
「ライダ、ごめんね。せっかく作ってくれたのに」
しょんぼりしながらレヴェルが言うと大丈夫だと返ってくる。
「クッションなら沢山作ったから大丈夫だ。レヴィ用もあるぞ」
「え?本当?」
ライダが頷く。
「キュウ!」
「ほら、エメラルド。お前のだ」
籠に新しいクッションを敷いてくれた。レヴェルもそっとそれに乗せる。
「エメラルド、おトイレを作るからしたくなったらそこでするんだよ?」
「キュウ」
ドラゴンの知能は高い。人間の言葉も容易に理解できる。レヴェルは使わないボックスにおがくずを入れておいた。
「エメラルド、これがおトイレだよ」
「キュイ」
どうやら理解したらしい。レヴェルはホッとした。



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