ドラゴンのおんなのこは強くて可愛くなくちゃつとまりません!

はやしかわともえ

文字の大きさ
9 / 29
第一話

神殿にて

しおりを挟む
神殿の場所は本当にすぐ近くだった。
ここラキタではラキタ教というものが、厚く信仰されているらしい。
泰にもいくつか宗教があるから、宗教がどういうものか、わかっているつもりでいた。

神殿の周りには信者と思しき人が数人祈っている。
僕は神殿を遠くから観察した。
こんなに暑いのに、神殿の氷は溶けそうにない。こんな物理の法則を無視したことができる術者は、僕の周りではいつかしかいなかった。

(ということはだよ)

僕は考えた。

(いつかは自分とアクアさんをわざと氷漬けにしたんだ)

それをさせる何かがいつかにはあった。
僕はそれを探らなきゃいけない。
でも、それをどうやって探ればいいんだろう。

ああ、わからない。

頭がパンクしそうだ。

「神々のお怒りを買ってしまった!
ラキタは終わりだ!!」

突然男の人が喚き始めた。
それにつられるように、みんなが騒ぎ出す。
異様な光景だった。

僕はそろりとその輪から抜け出した。
あさみさんに気を付けるように言われているし、そろそろ戻ろう。

「おい、ガキ」

突然服を引っ張られて僕は路地裏に連れ込まれていた。
眼の前にいるのは釣り目の若い男だ。怖すぎる。彼にぐいと胸ぐらを掴まれた。

「お前、騒がないんだな」

「ぼ、僕は信者じゃないもん」

「そうだろうな。どこから来た?名前は?」

僕はだんだん腹が立ってきた。いきなりなんなのさ。

「まず自分から名乗ったらどうなの!」

男はきょとん、として笑い始めた。

「わりぃ、そうだよな。
俺はアレクサンドル。
アレクって呼んでくれ」

「ぼ、僕はクー。アレクはここで何してるの?」

「ん?あさみの手伝いだよ。街の見回りだ。
クーもあさみと契約結んだんだろ?」

「なんで知ってるの?」

「俺は耳がいいんでね。
で、クーはこんなところに何しに来た?
やじ馬ならやめた方がいい」

「違うもん!あの神殿の中にお母さんがいるの!」

「は?二人共20代って聞いてるけど?」

「いつかは僕のことを育ててくれたんだもん!本当だよ!」

アレクに頭を撫でられる。

「クー、話はわかった。
お前はお母さんを助けたい、そうだよな?」

「うん」

「なんでお母さんは氷漬けになってる?」

「わからないけど、いつかが自分でやったんだと思う」

「つまり、自分の立場が危うくなったんだ」

「いつかは世界統一をやめさせようとしていた?」

「クー、なかなか冴えてるな。
世界統一したところで世界が平和になるなんて思えない。
統一ってことは、民族の思想や教えを真っ向から否定することになるんだぞ。
他国の反感しか買わないだろう」

「それって」

嫌な予感が走る。

「反対してくる国に戦争をけしかけようって寸法さ。
お前の母さんもなかなか切れてるよ。
神殿が凍れば、信者たちは怖がる。
政府の言うことも簡単には聞かなくなる」

「じゃあ僕はどうすれば?」

アレクは笑った。

「もっとあちこちでみんなが混乱するように動けばいい。世界統一なんてバカな考えだって知らしめるのさ」

「なるほど。アレクすごーい!」

「まぁこのくらい」

僕はそっと神殿の様子を伺った。
信者の人もさっきよりは少ない。
中になんとか入りたい。
僕は龍星を握りしめた。

「クー?なにするんだ?」

アレクは僕の銃に驚いた様だ。

「中に入る!
二人の無事を確認したいから」

「それでどうやって?」

龍星には特殊な弾がこめられる。
僕が今回こめたのは、火焔を纏った弾だ。
いつかの氷すらも融かすことができる唯一の弾。

照準を合わせる。
そして弾を放った。
入り口の部分だけ氷が融けていく。


「これで入れる!」

僕は神殿の中に滑り込んだ。
そこには氷漬けにされたいつかとアクアがいた。
様子を見たら二人共怪我はしていないようだ。
少し安心した。

「クー!お前すごいな!」

「アレク、二人を運ぶよ。救急車も呼んで」

「おう」

あの火焔弾は希少すぎて一発しか在庫がなかった。
あの弾はドラゴンの青い炎が原料だ。
僕にはその青い炎を出す力がない。
それができるドラゴンは、今のところクロおじいちゃんしかいない。

(ごめんね、二人共。必ず氷から出してあげる)

サイレンが近付いてくる。

(さて、どうしようか。アレクの言うとおり世界統一をやめさせなければこれは解決しない。
そうだ)

僕は一つ思いついていた。
迷宮社に潜り込んでみよう!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...