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第一話
神殿にて
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神殿の場所は本当にすぐ近くだった。
ここラキタではラキタ教というものが、厚く信仰されているらしい。
泰にもいくつか宗教があるから、宗教がどういうものか、わかっているつもりでいた。
神殿の周りには信者と思しき人が数人祈っている。
僕は神殿を遠くから観察した。
こんなに暑いのに、神殿の氷は溶けそうにない。こんな物理の法則を無視したことができる術者は、僕の周りではいつかしかいなかった。
(ということはだよ)
僕は考えた。
(いつかは自分とアクアさんをわざと氷漬けにしたんだ)
それをさせる何かがいつかにはあった。
僕はそれを探らなきゃいけない。
でも、それをどうやって探ればいいんだろう。
ああ、わからない。
頭がパンクしそうだ。
「神々のお怒りを買ってしまった!
ラキタは終わりだ!!」
突然男の人が喚き始めた。
それにつられるように、みんなが騒ぎ出す。
異様な光景だった。
僕はそろりとその輪から抜け出した。
あさみさんに気を付けるように言われているし、そろそろ戻ろう。
「おい、ガキ」
突然服を引っ張られて僕は路地裏に連れ込まれていた。
眼の前にいるのは釣り目の若い男だ。怖すぎる。彼にぐいと胸ぐらを掴まれた。
「お前、騒がないんだな」
「ぼ、僕は信者じゃないもん」
「そうだろうな。どこから来た?名前は?」
僕はだんだん腹が立ってきた。いきなりなんなのさ。
「まず自分から名乗ったらどうなの!」
男はきょとん、として笑い始めた。
「わりぃ、そうだよな。
俺はアレクサンドル。
アレクって呼んでくれ」
「ぼ、僕はクー。アレクはここで何してるの?」
「ん?あさみの手伝いだよ。街の見回りだ。
クーもあさみと契約結んだんだろ?」
「なんで知ってるの?」
「俺は耳がいいんでね。
で、クーはこんなところに何しに来た?
やじ馬ならやめた方がいい」
「違うもん!あの神殿の中にお母さんがいるの!」
「は?二人共20代って聞いてるけど?」
「いつかは僕のことを育ててくれたんだもん!本当だよ!」
アレクに頭を撫でられる。
「クー、話はわかった。
お前はお母さんを助けたい、そうだよな?」
「うん」
「なんでお母さんは氷漬けになってる?」
「わからないけど、いつかが自分でやったんだと思う」
「つまり、自分の立場が危うくなったんだ」
「いつかは世界統一をやめさせようとしていた?」
「クー、なかなか冴えてるな。
世界統一したところで世界が平和になるなんて思えない。
統一ってことは、民族の思想や教えを真っ向から否定することになるんだぞ。
他国の反感しか買わないだろう」
「それって」
嫌な予感が走る。
「反対してくる国に戦争をけしかけようって寸法さ。
お前の母さんもなかなか切れてるよ。
神殿が凍れば、信者たちは怖がる。
政府の言うことも簡単には聞かなくなる」
「じゃあ僕はどうすれば?」
アレクは笑った。
「もっとあちこちでみんなが混乱するように動けばいい。世界統一なんてバカな考えだって知らしめるのさ」
「なるほど。アレクすごーい!」
「まぁこのくらい」
僕はそっと神殿の様子を伺った。
信者の人もさっきよりは少ない。
中になんとか入りたい。
僕は龍星を握りしめた。
「クー?なにするんだ?」
アレクは僕の銃に驚いた様だ。
「中に入る!
二人の無事を確認したいから」
「それでどうやって?」
龍星には特殊な弾がこめられる。
僕が今回こめたのは、火焔を纏った弾だ。
いつかの氷すらも融かすことができる唯一の弾。
照準を合わせる。
そして弾を放った。
入り口の部分だけ氷が融けていく。
「これで入れる!」
僕は神殿の中に滑り込んだ。
そこには氷漬けにされたいつかとアクアがいた。
様子を見たら二人共怪我はしていないようだ。
少し安心した。
「クー!お前すごいな!」
「アレク、二人を運ぶよ。救急車も呼んで」
「おう」
あの火焔弾は希少すぎて一発しか在庫がなかった。
あの弾はドラゴンの青い炎が原料だ。
僕にはその青い炎を出す力がない。
それができるドラゴンは、今のところクロおじいちゃんしかいない。
(ごめんね、二人共。必ず氷から出してあげる)
サイレンが近付いてくる。
(さて、どうしようか。アレクの言うとおり世界統一をやめさせなければこれは解決しない。
そうだ)
僕は一つ思いついていた。
迷宮社に潜り込んでみよう!
ここラキタではラキタ教というものが、厚く信仰されているらしい。
泰にもいくつか宗教があるから、宗教がどういうものか、わかっているつもりでいた。
神殿の周りには信者と思しき人が数人祈っている。
僕は神殿を遠くから観察した。
こんなに暑いのに、神殿の氷は溶けそうにない。こんな物理の法則を無視したことができる術者は、僕の周りではいつかしかいなかった。
(ということはだよ)
僕は考えた。
(いつかは自分とアクアさんをわざと氷漬けにしたんだ)
それをさせる何かがいつかにはあった。
僕はそれを探らなきゃいけない。
でも、それをどうやって探ればいいんだろう。
ああ、わからない。
頭がパンクしそうだ。
「神々のお怒りを買ってしまった!
ラキタは終わりだ!!」
突然男の人が喚き始めた。
それにつられるように、みんなが騒ぎ出す。
異様な光景だった。
僕はそろりとその輪から抜け出した。
あさみさんに気を付けるように言われているし、そろそろ戻ろう。
「おい、ガキ」
突然服を引っ張られて僕は路地裏に連れ込まれていた。
眼の前にいるのは釣り目の若い男だ。怖すぎる。彼にぐいと胸ぐらを掴まれた。
「お前、騒がないんだな」
「ぼ、僕は信者じゃないもん」
「そうだろうな。どこから来た?名前は?」
僕はだんだん腹が立ってきた。いきなりなんなのさ。
「まず自分から名乗ったらどうなの!」
男はきょとん、として笑い始めた。
「わりぃ、そうだよな。
俺はアレクサンドル。
アレクって呼んでくれ」
「ぼ、僕はクー。アレクはここで何してるの?」
「ん?あさみの手伝いだよ。街の見回りだ。
クーもあさみと契約結んだんだろ?」
「なんで知ってるの?」
「俺は耳がいいんでね。
で、クーはこんなところに何しに来た?
やじ馬ならやめた方がいい」
「違うもん!あの神殿の中にお母さんがいるの!」
「は?二人共20代って聞いてるけど?」
「いつかは僕のことを育ててくれたんだもん!本当だよ!」
アレクに頭を撫でられる。
「クー、話はわかった。
お前はお母さんを助けたい、そうだよな?」
「うん」
「なんでお母さんは氷漬けになってる?」
「わからないけど、いつかが自分でやったんだと思う」
「つまり、自分の立場が危うくなったんだ」
「いつかは世界統一をやめさせようとしていた?」
「クー、なかなか冴えてるな。
世界統一したところで世界が平和になるなんて思えない。
統一ってことは、民族の思想や教えを真っ向から否定することになるんだぞ。
他国の反感しか買わないだろう」
「それって」
嫌な予感が走る。
「反対してくる国に戦争をけしかけようって寸法さ。
お前の母さんもなかなか切れてるよ。
神殿が凍れば、信者たちは怖がる。
政府の言うことも簡単には聞かなくなる」
「じゃあ僕はどうすれば?」
アレクは笑った。
「もっとあちこちでみんなが混乱するように動けばいい。世界統一なんてバカな考えだって知らしめるのさ」
「なるほど。アレクすごーい!」
「まぁこのくらい」
僕はそっと神殿の様子を伺った。
信者の人もさっきよりは少ない。
中になんとか入りたい。
僕は龍星を握りしめた。
「クー?なにするんだ?」
アレクは僕の銃に驚いた様だ。
「中に入る!
二人の無事を確認したいから」
「それでどうやって?」
龍星には特殊な弾がこめられる。
僕が今回こめたのは、火焔を纏った弾だ。
いつかの氷すらも融かすことができる唯一の弾。
照準を合わせる。
そして弾を放った。
入り口の部分だけ氷が融けていく。
「これで入れる!」
僕は神殿の中に滑り込んだ。
そこには氷漬けにされたいつかとアクアがいた。
様子を見たら二人共怪我はしていないようだ。
少し安心した。
「クー!お前すごいな!」
「アレク、二人を運ぶよ。救急車も呼んで」
「おう」
あの火焔弾は希少すぎて一発しか在庫がなかった。
あの弾はドラゴンの青い炎が原料だ。
僕にはその青い炎を出す力がない。
それができるドラゴンは、今のところクロおじいちゃんしかいない。
(ごめんね、二人共。必ず氷から出してあげる)
サイレンが近付いてくる。
(さて、どうしようか。アレクの言うとおり世界統一をやめさせなければこれは解決しない。
そうだ)
僕は一つ思いついていた。
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