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4・活動開始!
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「というわけで、5月のコミケに向けて、ここにいる皆で動こうと思っているの!」
今、漫研内では今後の活動方針についての話し合いが行われている。どうやら早速イベント参加をする目論見らしい。心海は大学生ってすごいなーとドキドキしながら話を聞いていた。イベントに参加する、ということはサークルとして同人誌を出したり、コスプレをするということも含まれている。心海には当然、そんな経験はない。だが、同人誌を創るという言葉にいつの間にか惹かれていた。
「というわけで、コスプレか同人誌作成のどちらか、または両方に参加して欲しいの。皆、今から決めてくれる?」
心海は覚悟を決めることにした。コスプレのような周りから目立つ行動が自分に向いていないのは重々承知している。そろり、と同人誌の班に入った。
「君、ここちゃん、だっけ?」
「は、はい」
先輩の一人に声を掛けられて、心海はカチコチになりながら返事をした。
「絵を描くって言ってたよね?漫画は描いたことある?」
「あ…えーと、ほぼないです。四コマなら少しあります」
「お、いいね」
「え!本当に落書きくらいしか描けませんよ!」
慌てて言ったが、それで構わないと答えられて心海はびっくりした。
「同人誌は楽しんで創るものだから」
「ここちゃん、僕も君の漫画読んでみたいな」
「瑛太くんまで?!」
いつの間にか瑛太にここちゃんと呼ばれて、心海は思わず後ずさった。こんなイケメンに、と一人でドキドキしているとぎゅっと両手を握られて顔を覗き込まれている。瑛太の顔立ちは華やかだ。
(さすが王子様は違うしBLだったらご褒美展開)
「とりあえず描いてみて。君の一番好きな作品は何?なんでもいいからね」
「は、はい」
心海はペンケースから鉛筆を取り出して、好きなキャラクターを描き始めた。
毎日のように描いているので、手が覚えている。
「あー、絆されのアイちゃんかー」
「わ、分かりますか?」
「うん、上手だよ。練習すれば本格的な漫画が描けそうだね」
「え…」
正直な話、心海は自分で描いた絵を他人に見せたことがなかった。時々、律に見られて慌てて隠したりということは何度かあったが。
「あの…漫画の描き方教えてもらえますか?」
「うん、構わないよ。あ、確かそういう資料あったはず」
彼が持ってきたのは漫画の描き方という本だった。キャラクターのデッサンに始まり、パースの取り方やコマの割り方まで簡単な説明で書かれている。
「すっごーい。こんな本あるんだ」
「あげるよ。もう新しい資料買うから」
「え、良いんですか?」
「いいよ。それで、絵は普段から鉛筆で描いてるの?」
「はい。デジタルは難しいのかなあって」
「練習は必要かもしれないけど、無料で使えるアプリもあるしやってみたら?」
「え!無料?!」
先程から、自分は驚いてばかりいるなと他人事のように思いながら心海はアプリのインストールの仕方を教わった。スマートフォンは高校生の頃から持っていたが、プランの関係上、自由に使わせてもらえなかったのだ。大学生になり自分で料金を支払うと申し出たところ、新しい、容量の大きな機種に変更させてもらえた。
(すごい、これならいっぱい絵が描ける)
「ここちゃん、原稿のことなんだけど…」
「は、はい」
心海はメモを取りながら先輩の指示を聞いた。
「瑛太くん、絵うっま。すぐプロになれそう」
どっと向こうが騒がしい。心海がそちらへ近寄ると部員たちが場所を空けてくれる。お礼を言いながら前に出ると瑛太が小さなスケッチブックを掲げていた。そこにはディフォルメされたキャラクターが描かれている。
「わあ、瑛太くんすっごーい」
「ここちゃんもこれくらいすぐ描けるようになるよ」
「ええー。じゃあ練習する」
「ふふ、付き合うよ」
瑛太の言葉に心海はドキッとした。
(王子が優しすぎる)
ふと律の顔を思い出す。彼は今日から練習が入っていると言っていた。おそらく遅くなるだろうが夕食は準備したい。
「あのね瑛太くん、俺、幼馴染と同居してて夕食は作ってあげたいんだ。だけど少し付き合ってくれる?」
「もちろんいいよ。幼馴染って女の子?」
「え!男だよ!」
「好きなんだ?」
「え」
瑛太に何故そこまで見抜かれたのだろうと心海は焦った。
「そ、そりゃあ好きだよ。親友だし」
「じゃあ、僕も親友にしてくれない?」
「え、えーと」
親友と言う言葉では律への好意を完全に表現できないことに今更気が付く。
(俺はりっくんのこと本当に好きなんだ)
「ここちゃん、一緒に資料見よ」
「あ、うん」
瑛太の隣に座ると彼の爽やかスマイルがアップで迫って来る。
(ああ…りっくんに告白出来たらなあ)
心海は瑛太といる間、もやもやとずっと考えていた。
今、漫研内では今後の活動方針についての話し合いが行われている。どうやら早速イベント参加をする目論見らしい。心海は大学生ってすごいなーとドキドキしながら話を聞いていた。イベントに参加する、ということはサークルとして同人誌を出したり、コスプレをするということも含まれている。心海には当然、そんな経験はない。だが、同人誌を創るという言葉にいつの間にか惹かれていた。
「というわけで、コスプレか同人誌作成のどちらか、または両方に参加して欲しいの。皆、今から決めてくれる?」
心海は覚悟を決めることにした。コスプレのような周りから目立つ行動が自分に向いていないのは重々承知している。そろり、と同人誌の班に入った。
「君、ここちゃん、だっけ?」
「は、はい」
先輩の一人に声を掛けられて、心海はカチコチになりながら返事をした。
「絵を描くって言ってたよね?漫画は描いたことある?」
「あ…えーと、ほぼないです。四コマなら少しあります」
「お、いいね」
「え!本当に落書きくらいしか描けませんよ!」
慌てて言ったが、それで構わないと答えられて心海はびっくりした。
「同人誌は楽しんで創るものだから」
「ここちゃん、僕も君の漫画読んでみたいな」
「瑛太くんまで?!」
いつの間にか瑛太にここちゃんと呼ばれて、心海は思わず後ずさった。こんなイケメンに、と一人でドキドキしているとぎゅっと両手を握られて顔を覗き込まれている。瑛太の顔立ちは華やかだ。
(さすが王子様は違うしBLだったらご褒美展開)
「とりあえず描いてみて。君の一番好きな作品は何?なんでもいいからね」
「は、はい」
心海はペンケースから鉛筆を取り出して、好きなキャラクターを描き始めた。
毎日のように描いているので、手が覚えている。
「あー、絆されのアイちゃんかー」
「わ、分かりますか?」
「うん、上手だよ。練習すれば本格的な漫画が描けそうだね」
「え…」
正直な話、心海は自分で描いた絵を他人に見せたことがなかった。時々、律に見られて慌てて隠したりということは何度かあったが。
「あの…漫画の描き方教えてもらえますか?」
「うん、構わないよ。あ、確かそういう資料あったはず」
彼が持ってきたのは漫画の描き方という本だった。キャラクターのデッサンに始まり、パースの取り方やコマの割り方まで簡単な説明で書かれている。
「すっごーい。こんな本あるんだ」
「あげるよ。もう新しい資料買うから」
「え、良いんですか?」
「いいよ。それで、絵は普段から鉛筆で描いてるの?」
「はい。デジタルは難しいのかなあって」
「練習は必要かもしれないけど、無料で使えるアプリもあるしやってみたら?」
「え!無料?!」
先程から、自分は驚いてばかりいるなと他人事のように思いながら心海はアプリのインストールの仕方を教わった。スマートフォンは高校生の頃から持っていたが、プランの関係上、自由に使わせてもらえなかったのだ。大学生になり自分で料金を支払うと申し出たところ、新しい、容量の大きな機種に変更させてもらえた。
(すごい、これならいっぱい絵が描ける)
「ここちゃん、原稿のことなんだけど…」
「は、はい」
心海はメモを取りながら先輩の指示を聞いた。
「瑛太くん、絵うっま。すぐプロになれそう」
どっと向こうが騒がしい。心海がそちらへ近寄ると部員たちが場所を空けてくれる。お礼を言いながら前に出ると瑛太が小さなスケッチブックを掲げていた。そこにはディフォルメされたキャラクターが描かれている。
「わあ、瑛太くんすっごーい」
「ここちゃんもこれくらいすぐ描けるようになるよ」
「ええー。じゃあ練習する」
「ふふ、付き合うよ」
瑛太の言葉に心海はドキッとした。
(王子が優しすぎる)
ふと律の顔を思い出す。彼は今日から練習が入っていると言っていた。おそらく遅くなるだろうが夕食は準備したい。
「あのね瑛太くん、俺、幼馴染と同居してて夕食は作ってあげたいんだ。だけど少し付き合ってくれる?」
「もちろんいいよ。幼馴染って女の子?」
「え!男だよ!」
「好きなんだ?」
「え」
瑛太に何故そこまで見抜かれたのだろうと心海は焦った。
「そ、そりゃあ好きだよ。親友だし」
「じゃあ、僕も親友にしてくれない?」
「え、えーと」
親友と言う言葉では律への好意を完全に表現できないことに今更気が付く。
(俺はりっくんのこと本当に好きなんだ)
「ここちゃん、一緒に資料見よ」
「あ、うん」
瑛太の隣に座ると彼の爽やかスマイルがアップで迫って来る。
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心海は瑛太といる間、もやもやとずっと考えていた。
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