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「あらあら」
「フィーナ、この子も頼んだぞ」
「はい、おねえ様」
ピンフィーネさんと共に俺たちは簡易ギルドに戻ってきている。もちろんふぎゃふぎゃ泣いていたあの赤ん坊も一緒だ。ブロリアによれば赤ん坊は健康体らしい。だが、この子の母親はアジトの部屋の中ですでに事切れていた。どうやら彼女が出産してすぐに俺たちは奴らのアジトに乗り込んでしまったらしい。それで処置が遅れ、母親は出血が多く亡くなってしまったようだった。遺体を見たけれど、まだ少女というべき年齢に見えた。俺はピンフィーネさんと共に彼女を王城の裏手にある墓地に埋葬した。
フィーナさんが赤ん坊に早速、母乳代わりのミルクを飲ませている。お腹が空いているようだ。それもそうだろうな。出産は赤ん坊も頑張らなきゃいけないんだから。
「何があったの?」
ルネが問い詰めてくるのは無理もない。俺は事の詳細を詳しく話した。
「あんまりだ」
「龍姫様…」
ピンフィーネさんがルネを見つめる。その視線の先でルネはぎゅっと目を閉じて泣くのを堪えていた。ルネにも事情はよく分かっている。これは誰のせいでもない。
「お腹が空いてるんですね。大丈夫、ゆっくり飲んでくださいね」
フィーナさんが赤ん坊を優しくあやしている。それに周囲の緊張が少し緩んだ気がする。
「っはぁ…僕が泣いていても解決しないよね」
ルネはぐい、と手の平で涙を拭った。そうなんだよな。俺たちはどんなに苦しくても、前を向いて進まなきゃいけない。
「おいおい、何かと思えば賑やかだな」
エンオウさんがやってきた。ピンフィーネさんが呼んだんだろう。俺たちはそれぞれ頭を下げた。
「エンオウ殿に赤子の名付けをお頼みしたいのです」
「吾輩は姓名判断師ではないんだが…」
困惑気味のエンオウさんに、ぶふ、とルネが噴き出す。俺もそれにつられそうになる。エンオウさんは、大きくため息を吐いた。
「全く…他人事だと思って。赤子はどちらだ?」
「は、女の子です」
「ではチサトと名付けよう。赤子が元気なのはいいことだ」
エンオウさんが朗らかに笑ってどっかりと椅子に腰を下ろした。
「ああ、そういえば街がほぼ完成したぞ」
はい?俺は耳を疑った。エンオウさん、今なんつった?俺がエンオウさんを見つめるとエンオウさんが豪快に笑う。
「ショーゴ、龍姫と共に街の見回りをしてこい」
「はぁ…」
エンオウさんは俺とルネを気遣ってくれたのだ。
「わあぁ」
簡易ギルドは王城の直ぐ傍にある。いわゆる城の裏側だ。城の表へ回ってそこから橋を渡ると穏やかでのんびりした城下町が広がっている…はずだった。
「知らない街に来ちゃった!!」
「一度引き返そうか!!」
あまりの変化に俺たちはパニックを起こしかけた。これ、どうなってるの?水瓶を持った女神のいる噴水広場を中心に広々とした校庭のある学校や厳しい警察署、そして大きな病院まである。俺たちは普段、簡易ギルドがある裏口からフィールドへ出ていたから、この変化に全く気が付いていなかったのだ。
「あ、ショーゴ殿!龍姫様も!お久しぶりです」
向こうから駆けてきたのはヴァンだった。
「え、えーと、ヴァン?ここどこ?」
「え…王城都市モアグリアですが…」
そんなの知らんがな!!と叫びそうになったのはきっと俺だけじゃないはずだ。
「あ、もしかしてここに来られたの初めて…だったりしますか?」
ヴァンがおずおずと尋ねてきたので、俺たちは勢いよく頷いたのだった。王城都市の案内をヴァンがしてくれると言ってくれたのでお願いすることにする。俺は歩きながらヴァンにペンダントのことを話した。
「エンオウ様の従兄弟様が持っていらしたのですか?!それはなんとも運命的な…」
ヴァンが言うにはエンオウさんの家はかなりの名家らしく、貴族であるはずのヴァンの家から見ても雲の上の人という存在らしい。そりゃあお金に困っているはずがないよな。
「カイエンさんって人らしいよ…」
そうヴァンに告げると、ヴァンは目をキラキラさせた。え?大丈夫?ヴァンに両手をがっしり掴まれて間近で言われる。
「ショーゴ殿ならば必ずやカイエン様も認めてくださるでしょう!!」
何?その自信?困るなぁ。それからヴァンと商店街を見て、駄菓子を買った。詰所もそろそろ使えるようになるのではとのことだ。俺たちがぼったくり行商グループについて調べている間に、議員さんたちはせっせと決めることを決めていたらしい。コロニーから帰ってきているヒトもどんどん増えているから連邦国家として新しく国が立ち上がるそうだ。すごい。この街を作るスピードからしても新しい国が立ち上がるのもすぐなんだろうな。ヴァンとは簡易ギルドの前で別れた。中に入ると赤ちゃん三人が泣いている。フィーナさんはてんてこまいだ。
俺たちももちろんお世話に参戦した。
✢✢✢
夜になっている。この日は珍しくエンオウさんと一緒に食事をした。
「ショーゴ!!出来たよ!」
食後のお茶を飲んでいると、ディアが駆け寄ってきた。俺は嬉しくなって立ち上がった。俺の新しい装備が出来たんだ。残っていたドラゴナグルの素材から作ったらしい。ドラゴナグルの素材は本当に繊細で、強力な装備にしようとすればするほど扱いが難しくなるとエンオウさんが説明してくれた。ディアはそれを実行してくれたのだ。明らかに、今着けている装備より強力であることが分かる。俺は新しい装備を着けてみた。軽い。それに遥かに動きやすい。片手剣も新調してくれたらしい。
ドラゴナグルの吐く、焔の文様が入ったかっこいいものだ。
「ありがとう、ディア」
「ショーゴ、また新しい素材が手に入ったら持ってきてね!」
「分かった」
ディアもすっかりいつものチャラい感じに戻ったな。エンオウさんが立ち上がる。俺も彼の方を見つめた。
「エンオウさん…いいえ、師匠。俺に稽古をつけてください!」
頭を下げると肩をぽんと叩かれる。
「ショーゴ、いいだろう。龍姫のペンダントを彼奴から取り上げねばな」
カイエンさんのことを言っているのだろう。俺は頭を上げて頷いた。エンオウさんはペンダントのことをカイエンさんに話してくれたらしい。でも返してもらえなかったのだという。俺に実力が伴っていたら返すと彼は断言したそうだ。カイエンさんに認めてもらえるように頑張ろう。
「フィーナ、この子も頼んだぞ」
「はい、おねえ様」
ピンフィーネさんと共に俺たちは簡易ギルドに戻ってきている。もちろんふぎゃふぎゃ泣いていたあの赤ん坊も一緒だ。ブロリアによれば赤ん坊は健康体らしい。だが、この子の母親はアジトの部屋の中ですでに事切れていた。どうやら彼女が出産してすぐに俺たちは奴らのアジトに乗り込んでしまったらしい。それで処置が遅れ、母親は出血が多く亡くなってしまったようだった。遺体を見たけれど、まだ少女というべき年齢に見えた。俺はピンフィーネさんと共に彼女を王城の裏手にある墓地に埋葬した。
フィーナさんが赤ん坊に早速、母乳代わりのミルクを飲ませている。お腹が空いているようだ。それもそうだろうな。出産は赤ん坊も頑張らなきゃいけないんだから。
「何があったの?」
ルネが問い詰めてくるのは無理もない。俺は事の詳細を詳しく話した。
「あんまりだ」
「龍姫様…」
ピンフィーネさんがルネを見つめる。その視線の先でルネはぎゅっと目を閉じて泣くのを堪えていた。ルネにも事情はよく分かっている。これは誰のせいでもない。
「お腹が空いてるんですね。大丈夫、ゆっくり飲んでくださいね」
フィーナさんが赤ん坊を優しくあやしている。それに周囲の緊張が少し緩んだ気がする。
「っはぁ…僕が泣いていても解決しないよね」
ルネはぐい、と手の平で涙を拭った。そうなんだよな。俺たちはどんなに苦しくても、前を向いて進まなきゃいけない。
「おいおい、何かと思えば賑やかだな」
エンオウさんがやってきた。ピンフィーネさんが呼んだんだろう。俺たちはそれぞれ頭を下げた。
「エンオウ殿に赤子の名付けをお頼みしたいのです」
「吾輩は姓名判断師ではないんだが…」
困惑気味のエンオウさんに、ぶふ、とルネが噴き出す。俺もそれにつられそうになる。エンオウさんは、大きくため息を吐いた。
「全く…他人事だと思って。赤子はどちらだ?」
「は、女の子です」
「ではチサトと名付けよう。赤子が元気なのはいいことだ」
エンオウさんが朗らかに笑ってどっかりと椅子に腰を下ろした。
「ああ、そういえば街がほぼ完成したぞ」
はい?俺は耳を疑った。エンオウさん、今なんつった?俺がエンオウさんを見つめるとエンオウさんが豪快に笑う。
「ショーゴ、龍姫と共に街の見回りをしてこい」
「はぁ…」
エンオウさんは俺とルネを気遣ってくれたのだ。
「わあぁ」
簡易ギルドは王城の直ぐ傍にある。いわゆる城の裏側だ。城の表へ回ってそこから橋を渡ると穏やかでのんびりした城下町が広がっている…はずだった。
「知らない街に来ちゃった!!」
「一度引き返そうか!!」
あまりの変化に俺たちはパニックを起こしかけた。これ、どうなってるの?水瓶を持った女神のいる噴水広場を中心に広々とした校庭のある学校や厳しい警察署、そして大きな病院まである。俺たちは普段、簡易ギルドがある裏口からフィールドへ出ていたから、この変化に全く気が付いていなかったのだ。
「あ、ショーゴ殿!龍姫様も!お久しぶりです」
向こうから駆けてきたのはヴァンだった。
「え、えーと、ヴァン?ここどこ?」
「え…王城都市モアグリアですが…」
そんなの知らんがな!!と叫びそうになったのはきっと俺だけじゃないはずだ。
「あ、もしかしてここに来られたの初めて…だったりしますか?」
ヴァンがおずおずと尋ねてきたので、俺たちは勢いよく頷いたのだった。王城都市の案内をヴァンがしてくれると言ってくれたのでお願いすることにする。俺は歩きながらヴァンにペンダントのことを話した。
「エンオウ様の従兄弟様が持っていらしたのですか?!それはなんとも運命的な…」
ヴァンが言うにはエンオウさんの家はかなりの名家らしく、貴族であるはずのヴァンの家から見ても雲の上の人という存在らしい。そりゃあお金に困っているはずがないよな。
「カイエンさんって人らしいよ…」
そうヴァンに告げると、ヴァンは目をキラキラさせた。え?大丈夫?ヴァンに両手をがっしり掴まれて間近で言われる。
「ショーゴ殿ならば必ずやカイエン様も認めてくださるでしょう!!」
何?その自信?困るなぁ。それからヴァンと商店街を見て、駄菓子を買った。詰所もそろそろ使えるようになるのではとのことだ。俺たちがぼったくり行商グループについて調べている間に、議員さんたちはせっせと決めることを決めていたらしい。コロニーから帰ってきているヒトもどんどん増えているから連邦国家として新しく国が立ち上がるそうだ。すごい。この街を作るスピードからしても新しい国が立ち上がるのもすぐなんだろうな。ヴァンとは簡易ギルドの前で別れた。中に入ると赤ちゃん三人が泣いている。フィーナさんはてんてこまいだ。
俺たちももちろんお世話に参戦した。
✢✢✢
夜になっている。この日は珍しくエンオウさんと一緒に食事をした。
「ショーゴ!!出来たよ!」
食後のお茶を飲んでいると、ディアが駆け寄ってきた。俺は嬉しくなって立ち上がった。俺の新しい装備が出来たんだ。残っていたドラゴナグルの素材から作ったらしい。ドラゴナグルの素材は本当に繊細で、強力な装備にしようとすればするほど扱いが難しくなるとエンオウさんが説明してくれた。ディアはそれを実行してくれたのだ。明らかに、今着けている装備より強力であることが分かる。俺は新しい装備を着けてみた。軽い。それに遥かに動きやすい。片手剣も新調してくれたらしい。
ドラゴナグルの吐く、焔の文様が入ったかっこいいものだ。
「ありがとう、ディア」
「ショーゴ、また新しい素材が手に入ったら持ってきてね!」
「分かった」
ディアもすっかりいつものチャラい感じに戻ったな。エンオウさんが立ち上がる。俺も彼の方を見つめた。
「エンオウさん…いいえ、師匠。俺に稽古をつけてください!」
頭を下げると肩をぽんと叩かれる。
「ショーゴ、いいだろう。龍姫のペンダントを彼奴から取り上げねばな」
カイエンさんのことを言っているのだろう。俺は頭を上げて頷いた。エンオウさんはペンダントのことをカイエンさんに話してくれたらしい。でも返してもらえなかったのだという。俺に実力が伴っていたら返すと彼は断言したそうだ。カイエンさんに認めてもらえるように頑張ろう。
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