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「うーん、それはねえー」
俺は昨日の事を聞いていた。ルネがのんびりそう言って、サンドイッチに齧り付く。シャキッと葉野菜が心地良い音を立てた。俺はルネが飲み込むのを辛抱強く待った。ルネがもきゅもきゅ噛んでごくん、と飲み込んでもう一口行きそうになったのをすんでのところで止めた。
「ルネ!!答えてから食べて!お願い!!」
「あ、ごめんごめん。ショーゴのその力は夢見だね。よく巫女様が持つ力だよ」
「巫女?って女の人だよね?」
ルネが首を横に振る。
「んーん。男の人も持ってる人はいるよ。その場合は神官かな?」
「しん…かん…」
どちらにせよ俺に全く関係ない職種だな。今の俺だって騎士とはいえフラフラしてるのは間違いないし、とてもじゃないけど胸を張れない。
「普通のヒトでも夢見が出来る人はいるよ」
「え?そうなの?」
ルネは笑ってまた一口サンドイッチに齧り付いた。よし、そっちがそのつもりなら俺だって食事を楽しんでやる!俺もサンドイッチにかぶりついた。
「え…美味っ」
「ね!美味しいの!」
これはルネが食べるのに夢中になるわけだ。俺たちはしばらく無言でサンドイッチを食べた。
サンドイッチに挟まっていたのは、シャキッとした葉野菜、鶏ハム、そしてなにかのソースだった。このソースがぴりっとしながらもすべてをまとめあげている。パンはふわふわでもっちりしていた。冷たいアイスカフェラテを一口飲むと程よい甘みと苦みが口の中に広がる。
「美味ーい!」
「アイスミルクも最強だよ」
ここはクロガネにある喫茶店だ。ルネは喫茶店というものにずっと憧れを抱いていたらしい。見つけた瞬間、入る!と言って他のことは聞き入れなかった。まあ俺もお腹が空いていたから断る理由もなかったんだけどね。
店に入ってメニュー表を見た瞬間、ルネはあああと机に突っ伏した。どうしたのか尋ねたら、メニューが全てオシャレすぎると言い出した。気持ちは分かるけど喫茶店ってそういうものだしな。
それでなんとか注文出来たのがこのサンドイッチとアイスミルクだった(俺はアイスカフェラテにした)。ルネが巨大なサンドイッチをもりもり食べているのは見ていて気持ちいい。
お腹の子にも栄養がいくしな。あ、でもルネはなんでも食べていいわけじゃないんだよな。子供に害のある食べ物って意外と多いらしいし。ルネは一度病院に行くと言っていた。もしかして龍の里?と聞いたら、「期待しないで」の一点張りだった。完全に俺がガッカリすること前提みたいだ。
龍の里なんて厨二心をくすぐりまくりな気がするんだけどなぁ。
「あー、美味しかったー」
「うん。本当に。で、話は戻るんだけど」
ルネがくすくす笑いながら言う。
「ショーゴが視たのは多分未来の世界だったんだろうね」
未来の世界の俺は「パパ」と呼ばれているのか。
「言っておくけどショーゴはとっくにパパなんだからね?」
そうでしたね。まだ実感湧かないな。でもルネのお腹は確実に膨らんできている。
「怖くない?」
俺がそう尋ねるとルネはお腹を撫でた。
「そりゃあ怖いよ。でも早くこの子を抱っこしたいなぁ」
「分かるよ」
俺だって早くそうしたい。二人で笑い合った。
さあ、朝飯も食べたし「ついなる神殿」に行ってみるか!
ここからそう離れていないとはいえ、ルネに無理させるわけにはいかないな。
そう思っていたら向こうから何かが走ってきた。え、まさか?
「ハク!来てくれたのー?」
「ブルル」
ルネに自分を撫でろと言わんばかりの態度に俺は笑ってしまった。ハクはずっと俺たちを心配してくれていたのだ。優しいなぁ。
俺たちがどこに行ったのかすぐ分かるあたり、やっぱりハクはただの馬じゃない。ハクは俺にも鼻先を擦り付けてきた。
「寂しい思いさせちゃったな」
ハクは大丈夫だとばかりに鼻を鳴らす。なんて頼りになるんだ。ルネをハクの背中に乗せて、俺たちは「ついなる神殿」に向かって歩き出した。
朝のクロガネは結構な賑わいだった。それをスルーしてフィールドに出ると急に静かになる。
「誰もいないね」
「うん。歩きなのはもしかしたら俺たちだけなのかも」
「そうだよね。神殿に用事ないかぁ」
「なにかお参りのために巡ったりしないの?」
「あるけど、今はほとんどやらないみたい」
まあそうだよなー。神殿は地下に向かって口を広げている。ハクに見送られて、俺たちは中に入った。やっぱりぼんやり明るいんだな。
「姫様!ショーゴさん!お待ちしておりました!」
「ショーゴさん!こっち来て!」
ニッケルに呼ばれていくと、腕を掴まれて引っ張られる。ルネはそれを静観することにしたらしい。
「これ、あげる!!」
なんだろう?
ニッケルが手渡してきたのは小瓶だった。中に青い光と赤い光がそれぞれ10本ずつ入っている。
「あたいが趣味で作ったんだ。投げると爆発するよ」
爆発物だったか。
「姫様もこちらへ!」
ルネがやって来た。やっぱりここにも御神体はある。ペンダントを翳すと、また一つ光が消えた。
「ニッケル、チタン、僕はショーゴを渡すつもりはないんだからね!」
「絶対じゃないでしょう?」
「ショーゴさんは皆のものです!」
なんだか知らないけれど喧嘩が始まりそうだな。
「えーと、ここでお暇させて頂きます!」
俺はルネを抱き上げて神殿から出た。
こうゆう時は逃げるが勝ちだからなぁ。やれやれ。
俺は昨日の事を聞いていた。ルネがのんびりそう言って、サンドイッチに齧り付く。シャキッと葉野菜が心地良い音を立てた。俺はルネが飲み込むのを辛抱強く待った。ルネがもきゅもきゅ噛んでごくん、と飲み込んでもう一口行きそうになったのをすんでのところで止めた。
「ルネ!!答えてから食べて!お願い!!」
「あ、ごめんごめん。ショーゴのその力は夢見だね。よく巫女様が持つ力だよ」
「巫女?って女の人だよね?」
ルネが首を横に振る。
「んーん。男の人も持ってる人はいるよ。その場合は神官かな?」
「しん…かん…」
どちらにせよ俺に全く関係ない職種だな。今の俺だって騎士とはいえフラフラしてるのは間違いないし、とてもじゃないけど胸を張れない。
「普通のヒトでも夢見が出来る人はいるよ」
「え?そうなの?」
ルネは笑ってまた一口サンドイッチに齧り付いた。よし、そっちがそのつもりなら俺だって食事を楽しんでやる!俺もサンドイッチにかぶりついた。
「え…美味っ」
「ね!美味しいの!」
これはルネが食べるのに夢中になるわけだ。俺たちはしばらく無言でサンドイッチを食べた。
サンドイッチに挟まっていたのは、シャキッとした葉野菜、鶏ハム、そしてなにかのソースだった。このソースがぴりっとしながらもすべてをまとめあげている。パンはふわふわでもっちりしていた。冷たいアイスカフェラテを一口飲むと程よい甘みと苦みが口の中に広がる。
「美味ーい!」
「アイスミルクも最強だよ」
ここはクロガネにある喫茶店だ。ルネは喫茶店というものにずっと憧れを抱いていたらしい。見つけた瞬間、入る!と言って他のことは聞き入れなかった。まあ俺もお腹が空いていたから断る理由もなかったんだけどね。
店に入ってメニュー表を見た瞬間、ルネはあああと机に突っ伏した。どうしたのか尋ねたら、メニューが全てオシャレすぎると言い出した。気持ちは分かるけど喫茶店ってそういうものだしな。
それでなんとか注文出来たのがこのサンドイッチとアイスミルクだった(俺はアイスカフェラテにした)。ルネが巨大なサンドイッチをもりもり食べているのは見ていて気持ちいい。
お腹の子にも栄養がいくしな。あ、でもルネはなんでも食べていいわけじゃないんだよな。子供に害のある食べ物って意外と多いらしいし。ルネは一度病院に行くと言っていた。もしかして龍の里?と聞いたら、「期待しないで」の一点張りだった。完全に俺がガッカリすること前提みたいだ。
龍の里なんて厨二心をくすぐりまくりな気がするんだけどなぁ。
「あー、美味しかったー」
「うん。本当に。で、話は戻るんだけど」
ルネがくすくす笑いながら言う。
「ショーゴが視たのは多分未来の世界だったんだろうね」
未来の世界の俺は「パパ」と呼ばれているのか。
「言っておくけどショーゴはとっくにパパなんだからね?」
そうでしたね。まだ実感湧かないな。でもルネのお腹は確実に膨らんできている。
「怖くない?」
俺がそう尋ねるとルネはお腹を撫でた。
「そりゃあ怖いよ。でも早くこの子を抱っこしたいなぁ」
「分かるよ」
俺だって早くそうしたい。二人で笑い合った。
さあ、朝飯も食べたし「ついなる神殿」に行ってみるか!
ここからそう離れていないとはいえ、ルネに無理させるわけにはいかないな。
そう思っていたら向こうから何かが走ってきた。え、まさか?
「ハク!来てくれたのー?」
「ブルル」
ルネに自分を撫でろと言わんばかりの態度に俺は笑ってしまった。ハクはずっと俺たちを心配してくれていたのだ。優しいなぁ。
俺たちがどこに行ったのかすぐ分かるあたり、やっぱりハクはただの馬じゃない。ハクは俺にも鼻先を擦り付けてきた。
「寂しい思いさせちゃったな」
ハクは大丈夫だとばかりに鼻を鳴らす。なんて頼りになるんだ。ルネをハクの背中に乗せて、俺たちは「ついなる神殿」に向かって歩き出した。
朝のクロガネは結構な賑わいだった。それをスルーしてフィールドに出ると急に静かになる。
「誰もいないね」
「うん。歩きなのはもしかしたら俺たちだけなのかも」
「そうだよね。神殿に用事ないかぁ」
「なにかお参りのために巡ったりしないの?」
「あるけど、今はほとんどやらないみたい」
まあそうだよなー。神殿は地下に向かって口を広げている。ハクに見送られて、俺たちは中に入った。やっぱりぼんやり明るいんだな。
「姫様!ショーゴさん!お待ちしておりました!」
「ショーゴさん!こっち来て!」
ニッケルに呼ばれていくと、腕を掴まれて引っ張られる。ルネはそれを静観することにしたらしい。
「これ、あげる!!」
なんだろう?
ニッケルが手渡してきたのは小瓶だった。中に青い光と赤い光がそれぞれ10本ずつ入っている。
「あたいが趣味で作ったんだ。投げると爆発するよ」
爆発物だったか。
「姫様もこちらへ!」
ルネがやって来た。やっぱりここにも御神体はある。ペンダントを翳すと、また一つ光が消えた。
「ニッケル、チタン、僕はショーゴを渡すつもりはないんだからね!」
「絶対じゃないでしょう?」
「ショーゴさんは皆のものです!」
なんだか知らないけれど喧嘩が始まりそうだな。
「えーと、ここでお暇させて頂きます!」
俺はルネを抱き上げて神殿から出た。
こうゆう時は逃げるが勝ちだからなぁ。やれやれ。
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