フツメン高校生から超絶美人なお姫様に転生して国を開拓する話

はやしかわともえ

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行政とカネ

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(めちゃくちゃ楽しかった)

夕華動物園、最高だった。
夕華からの帰りの電車の中で、僕は楽しさの余韻に浸っていた。
うさぎやモルモットと、これでもかと触れ合ったし、(毛並みが本当にもふもふだった)園内や動物たちの写真もそれぞれ100枚近く撮った。
端末の写真を確認して、インタビュー記事に使えそうなものをフォルダ分けする。

「逸花、楽しかったな!」

トキも僕と同じくらい楽しんでいた。
乗馬体験もやった。
高くて怖かったけど、僕も乗せてもらった。

「私ももっとラフな格好だったら!」

シズクが悔しそうに言う。
今度はちゃんとお休みの日にゆっくり来たいなぁ。

さっき、夕華の市長さんから電話が来た。(端末って電話もできるし本当に便利だ)
それは市内新聞で夕華動物園の紹介用の連載記事を書かないかというもので、(インタビューも中に含まれている)僕は二つ返事でOKしたのだった。記事を書くのが楽しみだなぁ。


「姫様たち、遅いですがお昼にしましょう」

腕時計はもう午後4時を指している。
僕はもう本当にお腹ペコペコだった。
そのお弁当は楕円形をしていて、まだ温かい
中は見えないけれどなにか美味しそうな匂いがしている。何が入ってるのかな?
ぱかり、と蓋を開けると焼飯の上に鶏の照り焼きがびっしり載っている。
なんというか豪快だ。

「うめえよ、これ」

トキはもう食べ始めていた。
僕も一口、鶏肉と焼飯を一緒に食べてみた。

「美味しい!」

鶏肉のコクのある甘辛さと焼飯の塩加減がちょうどいい。
温かいのも手伝ってパクパク食べられる。

「このお弁当がこのあたりでは一番人気らしいですよ」

シズクが僕たちにお茶を差し出しながら言う。
毎回情報が早い。

「さ、姫様。夕華動物園の連載も結構ですが、まずは春華ですよ!今日は殿下に報告をするんですよね?」

本当にその通りだ。
お弁当を食べながら考える。

おじいちゃんにも報告はするけど、多分何もしてくれないんだろうしな。

「お父様にすべてお話してみます」

シズクは頷いた。

「それがいいと思いますよ」


城に着いたのは夕方の六時過ぎだった。
夕飯の時間だな、なんて思いながら城に入る。
城に入るにはいつも裏口からだ。
表にある入り口はお客様が使う用で僕は滅多に使わない。

「逸花ちゃん!おかえり。動物園は行けたの?」

「おかえりなさい、逸花」

食堂に入るとおばあちゃんたちが声をかけてくれた。
相変わらずおじいちゃんはいない。

「ただいま、うん。動物園に行けたよ」 

「よかったじゃないの!
あ、逸花、先にお風呂に入ってきたら?ヨウさんが支度してくれてたわよ」

「うん、そうする」

トキはいつのまにか食卓にいる。
お父さんとなにか話しているようだった。
トキの居場所がここにできたらいいな。

僕は部屋に戻って着替えを用意した。
いつものピンクのネグリジェと下着とタオルを持つ。

お風呂場に入ると浴槽から湯気が立ち込めていた。このお風呂は外にあるかまどでお湯を沸かしている。ヨウさんが全部やってくれている。

「あつっ!」

試しにお湯に触ってみたらあつあつだった。
とにかく体を洗ってしまおう。

髪の毛を洗い終えた僕はそれをゴムで束ねた。
ふう、くたびれた。
浴槽に浸かるとお湯がちょうどよくなっている。

しばらく温まっていたらのぼせそうになったので慌てて上がった。

脱衣所で体を拭いて服を着ていると、扉がノックされる。
誰かな?

「逸花、入っていいか?」

トキだった。

「どうぞ」

ガララと引き戸が開いてトキが入ってくる。

「逸花、あのさ」

トキの顔は真っ赤だった。
ちょっと涙目にもなっている。

「トキ様?」

ぎゅう、とトキに抱きしめられた。
力強いけど優しい。トキの体温を感じる。
なんだか脈が早い。

「逸花、俺のこと好きか?」 

「うん」

「だったら俺と結婚してくれるか?」

「うん、え?!」

反射的に頷いちゃったけど、びっくりした。
結婚って早すぎない?
トキが僕の顔をじっと見つめる。

「もちろん、今じゃないぞ。
大人になったらだ」

トキが大人になったらすごくかっこいいんだろうなぁ。
僕は将来どうなってるんだろう。

「でも、トキ様は私でいいの?」

不安になってそう尋ねると、トキは僕を抱き上げた。
いわゆるお姫様だっこだ。トキの青い目に射抜かれそうになる。

「逸花は俺だけ見てればいい。
一生大事にする」

「トキ様」

はっきり言う、きゅんときた。
僕はトキに抱きついた。
これって婚約になるんだろうか?

「トキ様、結婚のこと、約束してくれますか?」

「当たり前だろ」

まだ僕たちは子供だ。でもすごく嬉しかった。




「逸花、これから報告だろ?」

夕飯を食べ終えてお茶を飲んでいたら、トキが尋ねてきた。

「うん。緊張してきたよ」

「大丈夫だよ、逸花なら」

トキはいつも僕を支えてくれる。
僕は立ち上がった。

「じゃ、行ってきます」

「おう!」

そして僕はお父さんの書斎を訪ねたのだった。


「お父様?入ります」

カチリ、とノブを回して押す。
この部屋だけはお父さんの唯一の領地だ。
壁一面に世界中の細かな地図がびっしり貼られている。
奥にある天井につきそうな高い棚には書物がぎっしり詰め込まれていた。

勉強家で真面目なお父さんにふさわしい部屋だと言える。

お父さんはなにか書き物をしていたらしかった。

「逸花、来たね」

僕はそばにあった丸椅子を引き寄せて座った。
報告内容を頭の中で確認する。
ここ1週間ほどの間に、いろいろな人に会って話をした。

「お父様、簡潔に報告致します」

僕は視察の結果や改善するべき点、これからの課題について話した。

「ふむ」

僕が報告を終えると、お父さんはそう声を漏らした。

「地方にお金が足りていないのは確認しているよ。水道もないし、乗用車の普及もできていないところもある。うちはないないづくしだ」


「予算をもう少し地方に向けて組み直すことは可能ですか?」


「厳しいね。人がいないから年々税収も減っているし、今は気軽に海外に住める。だから税率を上げればますます人が離れる」

「そんな」

負の連鎖じゃないか。

「でも、逸花は今回、土地を調査してくれたよね?」

「はい」

お父さんの瞳がきらり、と光った。

「僕は泰の今の現状を変えたいと思っている。今ののどかで平和な泰のまま、もっと暮らしやすい国に」

「どうすれば?」

お父さんは困ったように笑った。

「まぁ理想だから100%は無理だ。
でもいよいよ国を上げて土地開発に乗り出すときが来たのかなって思っているよ。
逸花が採ってきてくれたサンプルからそれを検討しようと思う」

それで、とお父さんは続けた。

「春華で行うライブのステージのあてについて、話してくれるかな?」

「王都の駅の裏側にある広場を使いたいんです」

その広場はもともと、路面電車の停留駅に使われていた場所だ。
そこは広さも十分だし、ステージの設置も容易だと思われる。

「うん、なるほどね。物の搬入も楽そうだし、駅も近い。僕の方で広場を押さえとくよ」

「ありがとうございます!」

よかった、ようやくライブが出来そうだ。
これで春華の固いイメージが払拭できればいいな。
みんなに楽しんでもらえれば嬉しい。

「逸花、春華まで残り僅かだ。最後まで気を抜かないようにね。まだ土地調査も残っているのだし」

「はい。頑張ります」

僕は書斎を後にした。
次は南に向かう。
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