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迷子
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「お帰り、ご苦労だったね」
泰に戻るころには、もう真っ暗だった。
クーも疲れて途中で寝てしまっている。
僕もくたびれていた。早くお風呂に入りたい。
「どうだった?」
「国の周りに防壁が張られていました。それを壊せるかはまだ」
トキの報告にお父さんは頷いた。
「やはり人為的なものと考えるほうが自然だろうね」
「俺もそう思います。でもなんでドラムに」
トキは困惑してるようだ。
「私にもわからないが、ドラムは人口が多い。人質とも考えられる」
「そんな」
それはあまりにもひどい。
「いつか、着いたのー?」
トキの背中に負ぶわれていたクーが目を覚ましたようだ。
「トキー、ありがとー」
「ん」
ぴょんとクーがトキの背中から着地する。
「いつか!トキ!明日も行くんでしょ?」
僕達は頷いた。
それからすぐ寝られるように支度をした。明日も朝早く出かける必要がある。
このままだと結婚式どころじゃない。
トキが、ノート型の端末を持って部屋にやって来る。
寝る前に作戦会議をするためだ。
「ドラムを周った時、防壁のデータを端末でとってみたんだ」
トキは本当に頼りになる。
端末を操作して現れたのはドラム全体の地図だった。
防壁がぐるりと国を囲んでいる。
今日、確認したところ、防壁がない部分はなかった。
入ることすらできないなんて。
「ここだ」
トキが端末の画面をアイコンで示す。
「ここだけ壁が薄い」
確かにトキの言うとおりだった。なんだか誘われているような感じがして気味が悪い。
「ここを壊して国内に入るしかない」
「クーの出番?」
クーがぶんぶん腕を回す。
「ああ、そうだ。頼むぞ。あと、向こうの罠かもしれないのは承知しておいてくれ」
「りょうかい!」
クーが鼻息荒く答える。
そうだ、罠だとしても僕達は中に入る必要がある。
それから明日の流れを確認した。
「二人とも、疲れたろ?もう寝よう」
トキが端末を閉じた。
「うん、おやすみなさい、トキ」
僕の言葉にトキは微笑んでくれた。
「おやすみ、逸花」
僕の額にキスをしてトキは部屋を出ていく。あっという間だった。
クーがにやにやしている。
「いつかもちゅーしてあげればいいのに」
「クーの意地悪」
「ふふ、いつかー」
クーが抱きついてくる。
僕達は電気を消してベッドに横になった。
「ねえいつか」
「ん?」
「これなあに?」
クーが指をさしたのはドラゴンにもらった笛だった。
「これはクーのお母さんから頂いたんだよ」
「やっぱり。ドラゴン村のお家で見たのと一緒だもん。どうやって使うのかなあ?」
クーの疑問はもっともだった。僕にも用途がわからない。ただ。
「困ったら吹いてって言ってたよ」
「ふーん」
クーはしばらく笛を弄んでいた。気になるのかな。
「クーに渡しておこうか?]
[いいの?」
手探りで笛を外してクーの首にかけてやる。
「ありがと、いつか」
「うん。もう寝よう」
「はーい」
目を覚ますと、すごく寒かった。おかしい、まだ初夏だ。寒いだなんて。
「いつか!大変!大変だよ!」
クーが飛びついてくる。
カーテンを開けて外を見ると一面が真っ白だった。
なんで?
「トキが急いで支度してって」
「わかった」
朝ごはんをかきこむように食べて僕達は出発した。
「逸花、これを」
バイクに乗る前に、トキがジャンパーを僕にかけてくれた。
クーも着込んでいてもこもこになっている。
バイクの上は寒い。
それでも飛ばした。
ドラムは大丈夫だろうか。
「ドラムだー!」
ドラムにも雪が降ったようだった。
昨日確認した防壁の薄い部分を目指す。
「ここだ、間違いない。クー頼む」
「行くよお」
クーが大きな翼を広げて浮かび上がる。
クーはもう、ドラゴンの状態に完全には戻らず、人間の姿のまま力を操れる。
クーは口から大量の炎を噴出させた。防壁にひびがはいる。
「もう少しだ!クー!」
もう一度。
ようやく防壁はばりんと割れた。
トキがバイクを中に滑り込ませる。
クーも中へ飛び込んできた。
よかった、中に入れた。
防壁があっという間にもとに戻る。
「修復が早いな」
トキが呟いた。
防壁を張っている術者がそばにいるんだろうか。油断は禁物だ。
あたりを見回すと、ドラムの中は祠だらけだった。でも魔物はいないようだ。
同じくらい人もいなかった。
「みんなどこに行ったの?」
クーの言葉にトキは首を振る。
「わからない、みんな無事だといいけど。
逸花、頼む。ダンジョンを壊してくれ」
「わかった」
僕は端末からスキルを呼び出して、片っ端からダンジョンを破壊した。
ふと気が付く。
なにか聞こえる。
例の歌だった。
【ふふ、みいつけた】
頭の中で声がしたかと思ったら、僕はバイクから落下していた。
なんで?
「逸花!」
トキに向かって手を伸ばしたけど間に合わない。
それから意識がふっと途切れた。
気が付くと僕はベッドに寝ていた。
ここはどこ?
なんだか体が重たい。
(眠たいのか)
眠りたいけど、眠っている場合じゃない。そんな気持ちが僕をせかした。
そうだ、学校に行かなくちゃ。
(学校?なんで?)
僕は逸花に転生したはずなのに。
慌てて飛び起きて鏡で自分を見てみる。
僕は逸也だった。
(そんな、あんまりだ)
鏡を何度見返しても変わらなかった。
「逸也、早く起きなさい」
ガチャリとドアが開いて女性が言う。
僕のお母さんだった。
「どうしたの?具合悪いの?」
お母さんが僕の額に手を当てる。
「熱はないみたいだけど」
「大丈夫」
僕は慌てて笑った。心配はかけたくない。
「早く支度しなさい」
「うん」
なんとかトキやクーのところに戻りたい。そのためには手掛かりを探さなくちゃ。
(僕ってこんな前向きだっけ?)
「逸也!」
「はーい」
僕は慌てて制服を着始めた。待ってて、二人とも。
泰に戻るころには、もう真っ暗だった。
クーも疲れて途中で寝てしまっている。
僕もくたびれていた。早くお風呂に入りたい。
「どうだった?」
「国の周りに防壁が張られていました。それを壊せるかはまだ」
トキの報告にお父さんは頷いた。
「やはり人為的なものと考えるほうが自然だろうね」
「俺もそう思います。でもなんでドラムに」
トキは困惑してるようだ。
「私にもわからないが、ドラムは人口が多い。人質とも考えられる」
「そんな」
それはあまりにもひどい。
「いつか、着いたのー?」
トキの背中に負ぶわれていたクーが目を覚ましたようだ。
「トキー、ありがとー」
「ん」
ぴょんとクーがトキの背中から着地する。
「いつか!トキ!明日も行くんでしょ?」
僕達は頷いた。
それからすぐ寝られるように支度をした。明日も朝早く出かける必要がある。
このままだと結婚式どころじゃない。
トキが、ノート型の端末を持って部屋にやって来る。
寝る前に作戦会議をするためだ。
「ドラムを周った時、防壁のデータを端末でとってみたんだ」
トキは本当に頼りになる。
端末を操作して現れたのはドラム全体の地図だった。
防壁がぐるりと国を囲んでいる。
今日、確認したところ、防壁がない部分はなかった。
入ることすらできないなんて。
「ここだ」
トキが端末の画面をアイコンで示す。
「ここだけ壁が薄い」
確かにトキの言うとおりだった。なんだか誘われているような感じがして気味が悪い。
「ここを壊して国内に入るしかない」
「クーの出番?」
クーがぶんぶん腕を回す。
「ああ、そうだ。頼むぞ。あと、向こうの罠かもしれないのは承知しておいてくれ」
「りょうかい!」
クーが鼻息荒く答える。
そうだ、罠だとしても僕達は中に入る必要がある。
それから明日の流れを確認した。
「二人とも、疲れたろ?もう寝よう」
トキが端末を閉じた。
「うん、おやすみなさい、トキ」
僕の言葉にトキは微笑んでくれた。
「おやすみ、逸花」
僕の額にキスをしてトキは部屋を出ていく。あっという間だった。
クーがにやにやしている。
「いつかもちゅーしてあげればいいのに」
「クーの意地悪」
「ふふ、いつかー」
クーが抱きついてくる。
僕達は電気を消してベッドに横になった。
「ねえいつか」
「ん?」
「これなあに?」
クーが指をさしたのはドラゴンにもらった笛だった。
「これはクーのお母さんから頂いたんだよ」
「やっぱり。ドラゴン村のお家で見たのと一緒だもん。どうやって使うのかなあ?」
クーの疑問はもっともだった。僕にも用途がわからない。ただ。
「困ったら吹いてって言ってたよ」
「ふーん」
クーはしばらく笛を弄んでいた。気になるのかな。
「クーに渡しておこうか?]
[いいの?」
手探りで笛を外してクーの首にかけてやる。
「ありがと、いつか」
「うん。もう寝よう」
「はーい」
目を覚ますと、すごく寒かった。おかしい、まだ初夏だ。寒いだなんて。
「いつか!大変!大変だよ!」
クーが飛びついてくる。
カーテンを開けて外を見ると一面が真っ白だった。
なんで?
「トキが急いで支度してって」
「わかった」
朝ごはんをかきこむように食べて僕達は出発した。
「逸花、これを」
バイクに乗る前に、トキがジャンパーを僕にかけてくれた。
クーも着込んでいてもこもこになっている。
バイクの上は寒い。
それでも飛ばした。
ドラムは大丈夫だろうか。
「ドラムだー!」
ドラムにも雪が降ったようだった。
昨日確認した防壁の薄い部分を目指す。
「ここだ、間違いない。クー頼む」
「行くよお」
クーが大きな翼を広げて浮かび上がる。
クーはもう、ドラゴンの状態に完全には戻らず、人間の姿のまま力を操れる。
クーは口から大量の炎を噴出させた。防壁にひびがはいる。
「もう少しだ!クー!」
もう一度。
ようやく防壁はばりんと割れた。
トキがバイクを中に滑り込ませる。
クーも中へ飛び込んできた。
よかった、中に入れた。
防壁があっという間にもとに戻る。
「修復が早いな」
トキが呟いた。
防壁を張っている術者がそばにいるんだろうか。油断は禁物だ。
あたりを見回すと、ドラムの中は祠だらけだった。でも魔物はいないようだ。
同じくらい人もいなかった。
「みんなどこに行ったの?」
クーの言葉にトキは首を振る。
「わからない、みんな無事だといいけど。
逸花、頼む。ダンジョンを壊してくれ」
「わかった」
僕は端末からスキルを呼び出して、片っ端からダンジョンを破壊した。
ふと気が付く。
なにか聞こえる。
例の歌だった。
【ふふ、みいつけた】
頭の中で声がしたかと思ったら、僕はバイクから落下していた。
なんで?
「逸花!」
トキに向かって手を伸ばしたけど間に合わない。
それから意識がふっと途切れた。
気が付くと僕はベッドに寝ていた。
ここはどこ?
なんだか体が重たい。
(眠たいのか)
眠りたいけど、眠っている場合じゃない。そんな気持ちが僕をせかした。
そうだ、学校に行かなくちゃ。
(学校?なんで?)
僕は逸花に転生したはずなのに。
慌てて飛び起きて鏡で自分を見てみる。
僕は逸也だった。
(そんな、あんまりだ)
鏡を何度見返しても変わらなかった。
「逸也、早く起きなさい」
ガチャリとドアが開いて女性が言う。
僕のお母さんだった。
「どうしたの?具合悪いの?」
お母さんが僕の額に手を当てる。
「熱はないみたいだけど」
「大丈夫」
僕は慌てて笑った。心配はかけたくない。
「早く支度しなさい」
「うん」
なんとかトキやクーのところに戻りたい。そのためには手掛かりを探さなくちゃ。
(僕ってこんな前向きだっけ?)
「逸也!」
「はーい」
僕は慌てて制服を着始めた。待ってて、二人とも。
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