特級・舞調理師カルマ!

はやしかわともえ

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二章・本格派スパイスカリー

勝負開始!

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フェスティバルの会場は今日も沢山の人で賑わっている。僕は炎さんと一緒に、舞台の袖口にいる。
やっぱりドキドキしている。でもここまで来たらやりきるだけだ。

「では、紹介致します!!本日の鉄人はー!アリナム・ゾロー!!二つ名はスパイスの申し子!今日は一体どんなスパイスで魅せてくれるのかー!!」

わぁぁと歓声が起きる。特に目立つのは若い女性の声だろうか。やっぱりアリナムさんはイケメンだから、女性のファンが多いんだろうな。

「さぁ!今日の挑戦者!春川カルマー!
昨日唯一鉄人に勝った若き新星だー!!今日も奇跡を起こしてくれー!!」

僕はなかなかステージに出られなかった。足が竦んでしまったからだ。

「カルマ、大丈夫だ」

とん、と炎さんが僕の背中を押してくれた。
そうだ、頑張るって決めたばかりじゃないか。
僕は歩き出した。ステージに出ると、歓声が上がる。

いよいよアリナムさんと勝負するんだ。

「今日の料理のお題は鉄人に有利なカレー!
ではこれより調理を始めていただきます!お二人とも、用意はよろしいですか??」

僕たちはほぼ同時に頷いていた。司会者さんが手を振り上げる。

「フードバトル!!スタート!!」

僕は中央の棚から材料の野菜たちをカゴに集めた。アリナ厶さんに敵うわけがないのは最初から分かりきっている。でも僕は一人の料理人として、日本食大国の家庭料理の一つであるカレーライスを作るんだ。肉はゴロッとした塊の豚肉。
母さんはいつも最初にフライパンで野菜と一緒に炒めていた。旨味を閉じ込めるためだと聞いたことがある。
鍋に油を注ぐ。温まってきたら切っておいた材料を鍋に放り込む。
じゅわ、と音が弾けた。
よし、このまま行くぞ!僕たちの手元はカメラでしっかり撮影されている。手際の良さや衛生面はもちろん審査で重視される。
僕は就職試験の時、細かなミスが多かった。きっと自分に自信がなかっただけなんだよな。
自分を信じてやれば出来ていたことだ。今までの僕は何も分かっていなかった。

ちらっと舞台袖を見つめると炎さんが見ていてくれている。嬉しいな。
僕はきっと、まだまだ頑張れる。ううん、頑張ろう。

「カルマ選手!具材を炒め始めたー!一方でアリナム選手はスパイスを数種類使うようです。まさに業の見せ所ー!!」

確かに風に乗ってスパイスの香りが漂ってくる。僕のカレーは野菜に火が通るまで煮込む必要がある。灰汁を取りながら丁寧に作る。具材がごろっと入ったカレーは日本食大国ならではのカレーだ。
辛味もあまりないし、ご飯と合わせるのが一番美味しい。
生卵を乗せて食べたり、納豆と一緒に食べる人もいるようだ。
アリナムさんは野菜が溶け込んだスープをベースにするらしい。カレーって奥が深いなぁ。

「だんだんいい匂いがしてきましたね!!さあ、勝負も佳境に入りました!では今回の戦いのハイライトを見ていきましょう」

僕もアリナムさんも煮込み作業に入ってしまったから、正直灰汁を取ることしか出来ない。
その間のつなぎということだろう。

「カルマ、なかなかやるね」

アリナムさんに言われるとすごく嬉しい。

「僕、頑張ります」

そう返したら彼は笑って頷いてくれた。
料理って楽しい。色々な人と繋がりが持てるんだ。

「おっと、カルマ選手に動きがありました。 カルマ選手!今は何をされているんですか?」

「はい、市販のカレールゥを入れています。今日の僕のテーマは家庭料理のカレーです」

「何ということだー!これは鉄人有利かー?」

確かにその通りだ。アリナムさんは自分で調合したスパイスを使ってカレーを作っている。
でもルウを使ったカレーだってみんな大好きだ。僕はルウを割って溶かし入れた。
ルウを入れる時は火を止めておくのが基本である。
それから少し様子を見ながらかき混ぜる。
美味しいカレーになりますように。

「おっと、アリナム選手も完成間近のようです!!」

いい匂いがこちらまで香ってくる。お腹空いたなぁ。これが終わったら何か食べよう。
さあ、審査の時間だ。
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