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二章・本格派スパイスカリー

二日目の戦い

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僕とアリナムさんはステージの中央に立っている。審査委員の皆がそれぞれのカレーの試食を始めていた。この結果を待つ間がドキドキする。

「ん、スパイシーだな!美味い!」

「具材がゴロゴロしていて食べごたえがある!」

審査委員の人は本当にランダムで選ばれた人たちだから、嘘はつかない、と思いたい。

「では、いよいよ結果発表です!」

ドラムロールが流れ出す。そして審査委員が一斉に札を挙げた。

「おおっと!!鉄人三票!挑戦者三票!
あと一票は一体どうしたのかー!」

審査委員の一人が頭を抱えている。札を挙げていない人、それは白髪のおじいさんだ。

「申し訳ないが、どちらも美味かった。私には判定できない」

「えーと、この場合はドローとなります!なんと二日目も挑戦者は鉄人に食らいつきました!」

会場から歓声が湧く。アリナムさんと引き分けるなんてすごい。
僕が自分を一番疑ってしまう。

「カルマ選手、見事でした。今後の意気込みをどうぞ!」

「その、えーと、が…頑張ります」

僕にはそれしか出来ないからね。

そしてフェスティバル二日目が無事に終わった。
僕はすっかり炎さんの家の子になってしまっている。炎さんのお家は片付いていて綺麗だし、広くて大好きだ。炎さんは家事も完璧にこなしてしまうんだからすごい。僕もお手伝いできることはしたいな。

「カルマ、すごいじゃないか」

炎さんが作った料理を食卓に並べながら褒めてくれた。今日もいい匂いがするし、見るからに美味しそうだ。

「僕、明日も戦うの?」

「あぁ。嫌か?」

「嫌だよ。緊張するし」

「カルマ、お前なら大丈夫だよ」

炎さんがそう言ってくれるならそうなのかな。炎さんが作ってくれたのはビーフシチューだった。お肉が分厚くてなんとも美味しそうだ。

「わ、いただきます!!」

「落ち着いて食べろ」

「はーい」

明日の料理はなんだろう。僕のレパートリーはまだ少ない。もっともっと勉強して一人前の料理人になりたい。

お風呂から出て頭を拭いていたら、本棚に気になるタイトルのものを見つけた。
僕は近寄ってそれを引っ張りだす。
古びたノートだった。

タイトル欄には鉄人対策とマジックで書かれている。僕はそれを捲った。
ありとあらゆるレシピがそこに記されている。もしかしてこれって。

「カルマ、面白いか?」

ずっと集中して読んでいたら後ろからやってきた気配に全く気が付かなかった。
後ろから炎さんに抱き締められる。

「あ、ごめんなさっ…っあ!!」

謝ろうとしたら炎さんに耳を噛まれた。ぞわっと鳥肌が立つ。気持ちいい。

「カルマ、プロの料理人のレシピを勝手に漁るなんて困ったやつだな」

「ふ…ぁ」

耳元で囁かれて、なんだか体がおかしい。炎さんの声は低くて心地いい。
心臓が爆発しそうなほどバクバクしているし、顔がものすごくあっつい。
炎さんの大きな手が僕の下腹部を撫でるからもうたまらない。

「ゃ…!ァァ!!」

昨日の炎さんとは全然違う。昨日はあんなに優しかったのに、今日は僕を食べようとしてるライオンみたいだ。怖い。耳を甘噛みされてぺろっと味わうように舐められる。炎さんの手が僕の下着を下ろす。

「っひ!!!」

「カルマ、愛してる」

炎さんの手が僕の性器を緩く握って優しく擦る。

「ぁ…炎さ…ん…ンン!!」

達したあと、はー、って大きく息をついたら優しく横抱きにされた。いつもの優しい炎さんに戻っていてホッとする。さっきまで猛獣みたいだった。

「大丈夫か?カルマ?」

「炎さんのばかぁ!!怖かった!!」

泣きながら言ったら、ぎゅって抱き締められた。

「すまん、カルマ。お前が可愛くてつい」

「僕、可愛いの?」

炎さんの胸に頭を乗せたら優しく頭を撫でられた。

「可愛いよ」

「ねぇ、炎さん」

「ん?」

「レシピもらっちゃだめ?」

僕の言葉に炎さんが考えている。やっぱり無理かな。どのレシピも、炎さんの魂が籠もったものだ。

「レシピによるな。お前がちゃんと自分用に改良するならやろう」

「本当?やった!」

僕は嬉しくて炎さんに抱き着いていた。

「これからキッチン借りていい?僕、色々試したくて」

「あぁ、もちろんだ」

その前に着替えた方がいいな。いつの間にか僕はワクワクしている。やっぱり、料理って楽しいんだ。
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