特級・舞調理師カルマ！

三章・具材ゴロゴロミートソーススパゲティ

回想

「わぁー、今日も美味しい！！」

マモリさんが軽トラックに屋台を載せるのを手伝った後、僕たちは早めのお昼を食べている。広場の一角に自由に調理が出来るスペースを貸し出してくれるということもあり、ここにはひっきりなしにお客さんがやって来る。この国で料理をするのは当然のことだ。

今日、炎さんが作ってくれたのは、定番ののり弁当だった。白身魚のフライに始まり、ちくわの磯辺揚げ、コロッケが米の上に乗っかっているわんぱくなメニューだ。
海苔の下には鰹節がぎしっと敷き詰められている。美味くないはずがない。

初日、炎さんのためにチャーハンを作ったのもこのスペースだったりする。
今日は休憩ができるスペースを選んだ。
もちろん、今日も屋台で色々買ってきている。炎さんいわく、勝負中に僕のお腹が空いたら困るからとのことらしい。確かに僕はすぐにお腹が空くから、気持ちはよく分かる。

「たこ焼きってなんでこんなにマヨネーズが合うんだろう！！」

外側がカリッとしていて、中はトロッとしたたこ焼きは本当に美味しい。中からアツアツのタコ。美味い。

「カルマ、前歯に青のりついてるぞ」

炎さんに優しく指摘されて僕は照れてしまった。他にも巨大なフランクフルトや、イカ焼きまで食べてしまった。
さすがの僕でも満腹だ。

「マモリくん、最近店がうまく行ってないって言ってたな。早まったことをしなければいいが…」

炎さんの不安な気持ち、僕にもよく分かる。マモリさんが片付けをしながら寂しそうに言っていたことを僕も改めて思い出していた。

【可愛がっていたペットを最近亡くしてしまった】

そこから色々なことが上手く回らなくなってしまったということも。
マモリさんがどれ程の愛情をその子に捧げていたか分かる気がする。
本当に優しい人なんだなって僕は思った。
料理をする人は繊細な部分を持ち合わせている人が多いような気がする。豪快に見える炎さんでも味付けがうまく行かないと少し機嫌が悪くなるし。

「僕にもマモリさんに何か出来ないかな？」

「そうだな…」

二人で唸ってみたけど駄目だった。あ、とそこで僕は気が付いた。そして、やってみようと決意したんだ。炎さんは僕の提案に驚いていたけれど、僕にはもうコレしかないって思った。もし駄目でも誰も損しない。
だって料理は人を幸せにするためにすることなんだから。

もうすぐフードバトルが始まる。僕はもう勝ちに行く。強気でいかなきゃいけないのはこの二日間でよくわかったじゃないか。
負けられないんだ。なにより僕自身のために。今までの全てをぶつけよう。