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おまけ
写真
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「え、炎さん。そんなに見ちゃやだ」
「いいじゃないか、減るものではないんだし」
「本当に二人は仲良しね」
僕は今、炎さんと一緒に特級料理人になるための修行の旅に出ている。今日はたまたま、用事があって僕の実家に戻ってきていた。そこで炎さんが居間の棚から僕が子供だった頃のアルバムを見つけてしまった。
炎さんがページを捲ってはお母さんにどんな場面だったのかと尋ねている。お母さんもにこにこしながら答えていた。
退屈になった僕は大きな豆大福を手に取った。このお店の和菓子が僕は大好きだ。餡が甘ったるくなくてとても美味しいのだ。豆もごろごろ入っている。
一口齧りつくともちもちして柔らかい。幸せっていう感情を具現化したらこんな感じかな。美味しいな。夕飯はなんだろう。
炎さんとお母さんが僕の写真を見ながら楽しそうに話している。
僕の写真、そんなに面白いのかな?
「そうそう、これカルマが初めてカレーを作った時の写真よ」
お母さんが笑っている。僕が10歳になって、お父さんとお母さんから本格的な包丁をもらった時のものだ。僕は嬉しくて、包丁を使ってなんでも皮剥きした。
初めは上手くできなかったけど、だんだん出来るようになったんだっけ。
懐かしいな。
テレビから急に警報音が鳴って、僕たちは驚いた。最近、こうして警報が鳴るのが当たり前になってきてしまっている。
「何かしら…」
テレビを見つめると、そこはこの間フェスティバルが開かれていた広場だった。小さな鉄球の集まりが人の腕に絡みついて引っ張っている。
その人は悲鳴を上げて逃げ出す。
力はそんなに強くないみたいだな。よし。
「炎さん」
「カルマ、行くのか?」
「うん!」
僕たちは広場を目指した。広場には僕たち以外誰もいない。鉄球が僕目掛けて飛んでくる。そして僕の腕に絡み付いて引っ張った。
「どうしたの?」
「ギギ」
鉄球と鉄球が擦れて、まるで喋っているようだ。
僕は鉄球に引っ張られるがまま、歩いた。
そこは立入禁止区域で、低いけど柵が設置されている。
僕は用心して立入禁止区域に入った。花や芝生を傷付けないようにだ。
「ギギギ」
鉄球が下の方に僕を引っ張る。なにかあるんだとようやく分かった。
僕は茂みの下で蹲っていた犬を見つけた。
足に怪我をしている。
「大丈夫だよ、おいで」
「クウン」
僕が犬を抱き上げると、鼻先を擦り付けてきた。首輪もついてるし、迷子かも。
「カルマ!!大丈夫か?」
いつの間にか警察の人も来ている。あ、これは後で怒られるやつだぞ。
「ギギギ」
鉄球が僕の腕に絡み付いてくる。この子はここに犬がいるよって報せたかっただけなんだ。
「ギギくん、僕たちと一緒にくる?」
「ギギ!」
ギギくんが喜んでくれて、僕も嬉しい。
「カルマ、お前ってやつは」
ため息を吐いた炎さんに頭を撫でられた。ギギくんは早速炎さんの体の周りを飛び回って炎さんのことを探っているようだ。これだけ見ていると犬みたいだな。
警察の人に危ないからと軽く注意されて、僕たちは家に戻った。
「ギギギ!!!」
居間に入った瞬間、ギギくんが僕の写真の上に乗って騒いでいる。アルバムが開きっぱなしだったんだ。
「あらあら、すっかりカルマがお気に入りになっちゃったみたいね」
お母さんが呑気に笑っている。
「ギギ、お前にカルマはやらないからな」
「ギギギ?」
ギギくんにはよく分からなかったみたいだ。可愛いな。
まだまだ僕は前に進むよ。
おわり
「いいじゃないか、減るものではないんだし」
「本当に二人は仲良しね」
僕は今、炎さんと一緒に特級料理人になるための修行の旅に出ている。今日はたまたま、用事があって僕の実家に戻ってきていた。そこで炎さんが居間の棚から僕が子供だった頃のアルバムを見つけてしまった。
炎さんがページを捲ってはお母さんにどんな場面だったのかと尋ねている。お母さんもにこにこしながら答えていた。
退屈になった僕は大きな豆大福を手に取った。このお店の和菓子が僕は大好きだ。餡が甘ったるくなくてとても美味しいのだ。豆もごろごろ入っている。
一口齧りつくともちもちして柔らかい。幸せっていう感情を具現化したらこんな感じかな。美味しいな。夕飯はなんだろう。
炎さんとお母さんが僕の写真を見ながら楽しそうに話している。
僕の写真、そんなに面白いのかな?
「そうそう、これカルマが初めてカレーを作った時の写真よ」
お母さんが笑っている。僕が10歳になって、お父さんとお母さんから本格的な包丁をもらった時のものだ。僕は嬉しくて、包丁を使ってなんでも皮剥きした。
初めは上手くできなかったけど、だんだん出来るようになったんだっけ。
懐かしいな。
テレビから急に警報音が鳴って、僕たちは驚いた。最近、こうして警報が鳴るのが当たり前になってきてしまっている。
「何かしら…」
テレビを見つめると、そこはこの間フェスティバルが開かれていた広場だった。小さな鉄球の集まりが人の腕に絡みついて引っ張っている。
その人は悲鳴を上げて逃げ出す。
力はそんなに強くないみたいだな。よし。
「炎さん」
「カルマ、行くのか?」
「うん!」
僕たちは広場を目指した。広場には僕たち以外誰もいない。鉄球が僕目掛けて飛んでくる。そして僕の腕に絡み付いて引っ張った。
「どうしたの?」
「ギギ」
鉄球と鉄球が擦れて、まるで喋っているようだ。
僕は鉄球に引っ張られるがまま、歩いた。
そこは立入禁止区域で、低いけど柵が設置されている。
僕は用心して立入禁止区域に入った。花や芝生を傷付けないようにだ。
「ギギギ」
鉄球が下の方に僕を引っ張る。なにかあるんだとようやく分かった。
僕は茂みの下で蹲っていた犬を見つけた。
足に怪我をしている。
「大丈夫だよ、おいで」
「クウン」
僕が犬を抱き上げると、鼻先を擦り付けてきた。首輪もついてるし、迷子かも。
「カルマ!!大丈夫か?」
いつの間にか警察の人も来ている。あ、これは後で怒られるやつだぞ。
「ギギギ」
鉄球が僕の腕に絡み付いてくる。この子はここに犬がいるよって報せたかっただけなんだ。
「ギギくん、僕たちと一緒にくる?」
「ギギ!」
ギギくんが喜んでくれて、僕も嬉しい。
「カルマ、お前ってやつは」
ため息を吐いた炎さんに頭を撫でられた。ギギくんは早速炎さんの体の周りを飛び回って炎さんのことを探っているようだ。これだけ見ていると犬みたいだな。
警察の人に危ないからと軽く注意されて、僕たちは家に戻った。
「ギギギ!!!」
居間に入った瞬間、ギギくんが僕の写真の上に乗って騒いでいる。アルバムが開きっぱなしだったんだ。
「あらあら、すっかりカルマがお気に入りになっちゃったみたいね」
お母さんが呑気に笑っている。
「ギギ、お前にカルマはやらないからな」
「ギギギ?」
ギギくんにはよく分からなかったみたいだ。可愛いな。
まだまだ僕は前に進むよ。
おわり
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