18 / 22
十八話・振り返り
しおりを挟む
どうやら、鵺は人が沢山いるところにやってくるらしい。そうだ、鵺は人間になりたいんだったな。自分の体を人間に寄せて、人間のように振る舞う。それが快感なのだ。でもやつは自分の狂気を隠せない。妖怪としての狂気を。元々残忍なやつだ。人を、自分以外のものを傷付けるのを厭わない。
でも自分は人間になりたいと言う。勝手な言い分だと僕は思う。それを許してはいけないと思う。
兄さんの協力もあって、地域の夏祭りのチラシには鏡の持参を呼びかける文章が追加された。高校の先生にも文化祭で使えるクーポンが配られれば、それだけお客さんが来てくれるのではないかと兄さんは上手に打診したらしい。さすが、兄さんだ。最近の文化祭の入客数が落ち込んでいたのも決め手だったそうだ。兄さん、まだ高校一年生なのに文化祭の実行委員長になるだけのことはある。
そしてついに今日、地域の夏祭りが行なわれる。
時間は夕方の四時から。本当にささやかなお祭りだけど、この辺りに昔から住む人は周りに住む人に挨拶をしにこの祭りにやってくる。僕の場合は、生まれた時からここに住んでいるので、兄さんと一緒にお母さんかお父さんが連れてきてくれていた。金魚すくいは飼えないから絶対に駄目だと言われていた幼い僕は、スーパーボールすくいをよくやったものだ。小さい僕にスーパーボールすくいはなかなか難しかった。結局一個も取れない僕に、店主さんが沢山ボールの入った袋を手渡してくれたっけ。あの時のスーパーボールは今も宝物だ。小学生の時まではそれを思い出しては取り出して眺めていた。ふと考える。僕はいつまで子供でいられるんだろう。どうしても大人にならなきゃいけないんだろうか。でも子どもで居続けるなんて不可能だ。それくらい僕にもよく分かっている。
「主人、考えてるのか?」
最近、獅子王の定位置になった僕の膝の上で彼に心配そうに尋ねられた。僕は答える代わりに彼の頭を撫でた。今日、鵺を仕留める。僕は、いや、僕たちはそう決めている。もしかしたら返り討ちにあうかもしれない。そう思うと恐怖で体が震える。でもこれが出来るのは僕だけだから、やるしかない。名刀獅子王に選ばれた僕だから。
「獅子王は、鵺を倒したらどうするの?」
僕の声は自分で思っていたより冷静だった。
「詩史と一緒にじっちゃんたちの墓参りに行きたい」
僕を主人じゃなくて名前で呼んでくれる獅子王が可愛くて、僕は笑った。そうか、戦いが終わっても一緒にいられるんだね。
僕は獅子王の頭を再び撫でた。
もう時間だ。行かなくちゃ。
でも自分は人間になりたいと言う。勝手な言い分だと僕は思う。それを許してはいけないと思う。
兄さんの協力もあって、地域の夏祭りのチラシには鏡の持参を呼びかける文章が追加された。高校の先生にも文化祭で使えるクーポンが配られれば、それだけお客さんが来てくれるのではないかと兄さんは上手に打診したらしい。さすが、兄さんだ。最近の文化祭の入客数が落ち込んでいたのも決め手だったそうだ。兄さん、まだ高校一年生なのに文化祭の実行委員長になるだけのことはある。
そしてついに今日、地域の夏祭りが行なわれる。
時間は夕方の四時から。本当にささやかなお祭りだけど、この辺りに昔から住む人は周りに住む人に挨拶をしにこの祭りにやってくる。僕の場合は、生まれた時からここに住んでいるので、兄さんと一緒にお母さんかお父さんが連れてきてくれていた。金魚すくいは飼えないから絶対に駄目だと言われていた幼い僕は、スーパーボールすくいをよくやったものだ。小さい僕にスーパーボールすくいはなかなか難しかった。結局一個も取れない僕に、店主さんが沢山ボールの入った袋を手渡してくれたっけ。あの時のスーパーボールは今も宝物だ。小学生の時まではそれを思い出しては取り出して眺めていた。ふと考える。僕はいつまで子供でいられるんだろう。どうしても大人にならなきゃいけないんだろうか。でも子どもで居続けるなんて不可能だ。それくらい僕にもよく分かっている。
「主人、考えてるのか?」
最近、獅子王の定位置になった僕の膝の上で彼に心配そうに尋ねられた。僕は答える代わりに彼の頭を撫でた。今日、鵺を仕留める。僕は、いや、僕たちはそう決めている。もしかしたら返り討ちにあうかもしれない。そう思うと恐怖で体が震える。でもこれが出来るのは僕だけだから、やるしかない。名刀獅子王に選ばれた僕だから。
「獅子王は、鵺を倒したらどうするの?」
僕の声は自分で思っていたより冷静だった。
「詩史と一緒にじっちゃんたちの墓参りに行きたい」
僕を主人じゃなくて名前で呼んでくれる獅子王が可愛くて、僕は笑った。そうか、戦いが終わっても一緒にいられるんだね。
僕は獅子王の頭を再び撫でた。
もう時間だ。行かなくちゃ。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【完結】ホラー短編集「隣の怪異」
シマセイ
ホラー
それは、あなたの『隣』にも潜んでいるのかもしれない。
日常風景が歪む瞬間、すぐそばに現れる異様な気配。
襖の隙間、スマートフォンの画面、アパートの天井裏、曰く付きの達磨…。
身近な場所を舞台にした怪異譚が、これから続々と語られていきます。
じわりと心を侵食する恐怖の記録、短編集『隣の怪異』。
今宵もまた、新たな怪異の扉が開かれる──。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる