僕の死亡日記

はやしかわともえ

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十九話・祭り開始

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「またここで人間から奪えば良い」

鵺は嗤った。ここははるか空高く。人間には絶対に見つからない場所だ。最近、事が思うようにいかない。全てあの忌々しい獅子王のせいである。
だが、獅子王は結界を張るのがあまり上手くないらしい。それを鵺は好機と捉えた。日が沈む中で人間の匂いがある一点から充満している。なにをしているのか、鵺には一切興味がなかった。人間を殺すのは楽しい。中には反撃してくる者もいる。それを圧倒的な力を持って殺すのがなによりの快感だった。

「私はこの世でたった一人の人間になる!この世界で選ばれたものは私だけなのだから!!」

鵺は両腕を広げながら叫んだ。

「さあ、行こうか」

鵺はぐんぐん下降し目的地に向かう。


✢✢✢

「おーい」

兄さんと僕が夏祭りの行われる高校の校庭に行くと、空が走ってきた。薄紫の浴衣を着ている。まだ日は完全に落ちていない。鵺もまだ来ていないはずだ。来ていたら獅子王が気が付く。

「空、よかった。浴衣、似合うね」

「ばあちゃんが作ってくれたんだ」

空が兄さんにお辞儀する。

「俺、詩史の友達の大畑空おおはたそらっていいます。詩史からお兄さんの話聞いてすげーって!」

「や、そんないいものでは…」

兄さんが慌てている。なんだか僕はおかしくて笑ってしまった。小さくなった獅子王が僕の肩にのぼって言う。

「なあ空、鏡は持ってきたか?」

「うん、前にもらったよね」

空が鏡の破片を取り出す。獅子王がピョン、と僕の肩から降りて普段の姿に戻った。僕たちに近寄るように手招きする。

「今日の作戦はこうだ。俺は結界をこの辺りにはわざと張っていない。やつが降りてきた瞬間を狙って結界を張る。結界は術者のいる中からじゃ簡単には破れない。やつはきっと嫌がるだろう、それを狙う」

「そのタイミングで鏡を皆に出してもらおうか?」

「ああ、それはいいな!」

あとは僕がやつを仕留めるだけ。兄さんは祭りの運営に協力すると自ら言ったらしい。運営の係がいるテントに向かった。

「詩史の兄ちゃん、すっげーな!きっとモテるんだろうなー」

そういえば兄さんの色恋沙汰は聞いたことがないな。バレンタインにやたらチョコをもらってくるのは知っているけど。

「空のお兄さんだってしっかり者じゃん」

「そう、今日はバイトなんだってさー。祭り一緒に来たかったのに」

空の話を聞いていると、お兄さんが大好きなんだなって伝わってくる。キインっとマイクがハウリングする音がする。あ、これはいよいよ祭りが始まるな。思っていた通り、町長さんの挨拶が始まった。日はどんどん沈んでいく。そろそろか。
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