愛を知った二人は運命に逆らわない

佐藤モモンガ

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三人だけの秘密へと変わった日

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 木の匂いに包まれた、とある一室。
 ふかふかのベッドに身を沈め、上半身を起こしながら、今日も老人・オリビアは孫・エマとの他愛もない会話を楽しんでいた。

 「ねえ、おばあちゃん!これなに?」

 エマがなにかを手にオリビアの元へ走る。
 その手の中にあったのは一枚の写真。
 その中では、美しいブロンドの髪をゆるくウェーブさせた女性が花畑とみられる場所を背景に微笑んでいる。

 「この人だれ~?」

 オリビアの膝の上に頭を乗せ、上目で尋ねる。

 「あら、そんなものどこで見つけたの?その中に映っている人なら、それは私よ。」

 オリビアは驚き口を大きく開けながらも、両手を口に当て、エマの質問に答える。

 「え!これ、おばあちゃんなの!?」

 そう突然大きな声を出したエマに笑いを堪えられなくなり、肩を揺らす。

 「ええ、若い頃の私。綺麗でしょう?」

 戯けたようにそう言うオリビアにエマは何度も首を縦に振る。

 「うん、とっても綺麗……!これを撮ったのは、おじいちゃん?」

 エマは大きな瞳を更に輝かせ、オリビアの隣へ急いで移動し、まだ短いその足をバタつかせながら聞くが、「埃がたってしまうわ」と制される。

 「ふふ、違う。」

 まろい頬を紅潮させ、何かを期待するような眼差しで自身を見る孫に、思わず笑みを溢すオリビア。

 「違うのー?誰?」

 横から顔を覗かせるように尋ねるエマに、一瞬躊躇う素振りを見せながらも、こう言った。

 「……このことを他の誰にも言わないと約束してくれるのなら、教えるわ。」

 そう言うオリビアに、エマは即答した。

 「約束する!!」

 「では誓いを立てなきゃね。はい、小指を出して。」

 エマは突然のことに若干困惑しながらも、オリビアの見よう見まねで小指を立てる。そうして二人は小指を絡める。

 「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った。」
 
 「……へ!?嫌だよ!そんな怖いの!」

 「ただの比喩よっ。それくらい大切なことだから破らないでねってこと。」

 それを聞き安堵したエマは肩から力を抜き、まだ大きく波打っている自身の心臓を落ち着かせるように胸を撫でる。

 「びっくりさせちゃったみたいね。ごめんなさい。」

何かを懐かしむかのように目を細めながらそう言うオリビアに、内心呆れながらも急かすように尋ねるエマ。

 「もう!それでそれで、一体誰なの?」

 「私の初恋の人よ。」

 静かに答えたオリビアに、強請るように言う。

 「ええー!おじいちゃんはー?」

 「おじいちゃんのことも勿論好きよ?でも、彼は特別ね。」

 そう堂々と答える姿に、エマはつい前のめりになって、聞きたいことが次々と頭に浮かんでくる。

 「そんなに……?どんな人なの?かっこいい?どうやって出会ったの?その恋は叶わなかったの?」

 一度にいくつもの質問を投げかけてくるエマを落ち着かせるように、優しく頭を撫でる。可愛い孫の様子に口角が緩むオリビア。

 「ふふ、気になる?それを全て話し終わった頃には、きっと日が暮れちゃってるわよ?でも、とっても素敵なお話。」

 「いい!どれだけ時間がかかってもいいから聞きたい……!」

 「いいわ、聞かせてあげる。私たち二人だけの秘密のお話よ。」

 唇に人差し指を当て、目尻を下げながらそう言うオリビア。

 「二人だけ?」

 「……いえ、私たち三人だけの秘密、ね。」

 ある人物の存在を思い出し、そう言い換えた。

 そうしてオリビアは、すぐ横にあるガラス窓の外に目をやり、話し始める。その青い瞳には、同じく青い空に広がる真っ白な雲が映っていた。

 (二人だけの秘密だと誓ったけれど、今それを破ってしまうわ。この小さな女の子にだけは、あなたと私の短い恋物語を話してしまうことを、どうか許して。本当に針を千本飲まされるのは、勘弁よ。)
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