1 / 2
三人だけの秘密へと変わった日
しおりを挟む
木の匂いに包まれた、とある一室。
ふかふかのベッドに身を沈め、上半身を起こしながら、今日も老人・オリビアは孫・エマとの他愛もない会話を楽しんでいた。
「ねえ、おばあちゃん!これなに?」
エマがなにかを手にオリビアの元へ走る。
その手の中にあったのは一枚の写真。
その中では、美しいブロンドの髪をゆるくウェーブさせた女性が花畑とみられる場所を背景に微笑んでいる。
「この人だれ~?」
オリビアの膝の上に頭を乗せ、上目で尋ねる。
「あら、そんなものどこで見つけたの?その中に映っている人なら、それは私よ。」
オリビアは驚き口を大きく開けながらも、両手を口に当て、エマの質問に答える。
「え!これ、おばあちゃんなの!?」
そう突然大きな声を出したエマに笑いを堪えられなくなり、肩を揺らす。
「ええ、若い頃の私。綺麗でしょう?」
戯けたようにそう言うオリビアにエマは何度も首を縦に振る。
「うん、とっても綺麗……!これを撮ったのは、おじいちゃん?」
エマは大きな瞳を更に輝かせ、オリビアの隣へ急いで移動し、まだ短いその足をバタつかせながら聞くが、「埃がたってしまうわ」と制される。
「ふふ、違う。」
まろい頬を紅潮させ、何かを期待するような眼差しで自身を見る孫に、思わず笑みを溢すオリビア。
「違うのー?誰?」
横から顔を覗かせるように尋ねるエマに、一瞬躊躇う素振りを見せながらも、こう言った。
「……このことを他の誰にも言わないと約束してくれるのなら、教えるわ。」
そう言うオリビアに、エマは即答した。
「約束する!!」
「では誓いを立てなきゃね。はい、小指を出して。」
エマは突然のことに若干困惑しながらも、オリビアの見よう見まねで小指を立てる。そうして二人は小指を絡める。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った。」
「……へ!?嫌だよ!そんな怖いの!」
「ただの比喩よっ。それくらい大切なことだから破らないでねってこと。」
それを聞き安堵したエマは肩から力を抜き、まだ大きく波打っている自身の心臓を落ち着かせるように胸を撫でる。
「びっくりさせちゃったみたいね。ごめんなさい。」
何かを懐かしむかのように目を細めながらそう言うオリビアに、内心呆れながらも急かすように尋ねるエマ。
「もう!それでそれで、一体誰なの?」
「私の初恋の人よ。」
静かに答えたオリビアに、強請るように言う。
「ええー!おじいちゃんはー?」
「おじいちゃんのことも勿論好きよ?でも、彼は特別ね。」
そう堂々と答える姿に、エマはつい前のめりになって、聞きたいことが次々と頭に浮かんでくる。
「そんなに……?どんな人なの?かっこいい?どうやって出会ったの?その恋は叶わなかったの?」
一度にいくつもの質問を投げかけてくるエマを落ち着かせるように、優しく頭を撫でる。可愛い孫の様子に口角が緩むオリビア。
「ふふ、気になる?それを全て話し終わった頃には、きっと日が暮れちゃってるわよ?でも、とっても素敵なお話。」
「いい!どれだけ時間がかかってもいいから聞きたい……!」
「いいわ、聞かせてあげる。私たち二人だけの秘密のお話よ。」
唇に人差し指を当て、目尻を下げながらそう言うオリビア。
「二人だけ?」
「……いえ、私たち三人だけの秘密、ね。」
ある人物の存在を思い出し、そう言い換えた。
そうしてオリビアは、すぐ横にあるガラス窓の外に目をやり、話し始める。その青い瞳には、同じく青い空に広がる真っ白な雲が映っていた。
(二人だけの秘密だと誓ったけれど、今それを破ってしまうわ。この小さな女の子にだけは、あなたと私の短い恋物語を話してしまうことを、どうか許して。本当に針を千本飲まされるのは、勘弁よ。)
ふかふかのベッドに身を沈め、上半身を起こしながら、今日も老人・オリビアは孫・エマとの他愛もない会話を楽しんでいた。
「ねえ、おばあちゃん!これなに?」
エマがなにかを手にオリビアの元へ走る。
その手の中にあったのは一枚の写真。
その中では、美しいブロンドの髪をゆるくウェーブさせた女性が花畑とみられる場所を背景に微笑んでいる。
「この人だれ~?」
オリビアの膝の上に頭を乗せ、上目で尋ねる。
「あら、そんなものどこで見つけたの?その中に映っている人なら、それは私よ。」
オリビアは驚き口を大きく開けながらも、両手を口に当て、エマの質問に答える。
「え!これ、おばあちゃんなの!?」
そう突然大きな声を出したエマに笑いを堪えられなくなり、肩を揺らす。
「ええ、若い頃の私。綺麗でしょう?」
戯けたようにそう言うオリビアにエマは何度も首を縦に振る。
「うん、とっても綺麗……!これを撮ったのは、おじいちゃん?」
エマは大きな瞳を更に輝かせ、オリビアの隣へ急いで移動し、まだ短いその足をバタつかせながら聞くが、「埃がたってしまうわ」と制される。
「ふふ、違う。」
まろい頬を紅潮させ、何かを期待するような眼差しで自身を見る孫に、思わず笑みを溢すオリビア。
「違うのー?誰?」
横から顔を覗かせるように尋ねるエマに、一瞬躊躇う素振りを見せながらも、こう言った。
「……このことを他の誰にも言わないと約束してくれるのなら、教えるわ。」
そう言うオリビアに、エマは即答した。
「約束する!!」
「では誓いを立てなきゃね。はい、小指を出して。」
エマは突然のことに若干困惑しながらも、オリビアの見よう見まねで小指を立てる。そうして二人は小指を絡める。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った。」
「……へ!?嫌だよ!そんな怖いの!」
「ただの比喩よっ。それくらい大切なことだから破らないでねってこと。」
それを聞き安堵したエマは肩から力を抜き、まだ大きく波打っている自身の心臓を落ち着かせるように胸を撫でる。
「びっくりさせちゃったみたいね。ごめんなさい。」
何かを懐かしむかのように目を細めながらそう言うオリビアに、内心呆れながらも急かすように尋ねるエマ。
「もう!それでそれで、一体誰なの?」
「私の初恋の人よ。」
静かに答えたオリビアに、強請るように言う。
「ええー!おじいちゃんはー?」
「おじいちゃんのことも勿論好きよ?でも、彼は特別ね。」
そう堂々と答える姿に、エマはつい前のめりになって、聞きたいことが次々と頭に浮かんでくる。
「そんなに……?どんな人なの?かっこいい?どうやって出会ったの?その恋は叶わなかったの?」
一度にいくつもの質問を投げかけてくるエマを落ち着かせるように、優しく頭を撫でる。可愛い孫の様子に口角が緩むオリビア。
「ふふ、気になる?それを全て話し終わった頃には、きっと日が暮れちゃってるわよ?でも、とっても素敵なお話。」
「いい!どれだけ時間がかかってもいいから聞きたい……!」
「いいわ、聞かせてあげる。私たち二人だけの秘密のお話よ。」
唇に人差し指を当て、目尻を下げながらそう言うオリビア。
「二人だけ?」
「……いえ、私たち三人だけの秘密、ね。」
ある人物の存在を思い出し、そう言い換えた。
そうしてオリビアは、すぐ横にあるガラス窓の外に目をやり、話し始める。その青い瞳には、同じく青い空に広がる真っ白な雲が映っていた。
(二人だけの秘密だと誓ったけれど、今それを破ってしまうわ。この小さな女の子にだけは、あなたと私の短い恋物語を話してしまうことを、どうか許して。本当に針を千本飲まされるのは、勘弁よ。)
0
あなたにおすすめの小説
雪とともに消えた記憶~冬に起きた奇跡~
梅雨の人
恋愛
記憶が戻らないままだったら…そうつぶやく私にあなたは
「忘れるだけ忘れてしまったままでいい。君は私の指のごつごつした指の感触だけは思い出してくれた。それがすべてだ。」
そういって抱きしめてくれた暖かなあなたのぬくもりが好きよ。
雪と共に、私の夫だった人の記憶も、全て溶けて消えてしまった私はあなたと共に生きていく。
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる