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少し、良い方向に動きだしたんじゃないかな
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「タカさんって、カフェはよく来るんですか?」
「行きますよ。コーヒーが好きなんで」
「へえ」
「それで、今日はありがとうございますハルさん。また会ってくれて」
「あ、いえ。こちらこそ誘ってくれて、ありがとうございます」
「お母さんと話したんですよね」
「はい……一応言った方がいいかなって思って、言ってみました。電話で話した通りなんですが、びっくりはしてました。それで……家に来るってなって直接話しました」
「そうなんですね。お母さん、もしかしたら肩の荷が降りたのかもしれませんね。隠し事って抱えるの相当辛いですからね」
「あ……はい、そうですね。帰り際の母の表情、少しほっとしているような感じしました」
「お母さんとお話しして、何か知れましたか?」
「ああ、はい。僕の子供の頃の変な行動とか」
「変な行動?」
「何か視えてたり。あとは人が来るのを予想したりとか。タカさんが言っていたとおり僕は昔、いろいろ……感じていたようです。どれも全く覚えていないけど」
「そうなんですね」
「それで……母も、僕が一言も発さなくなったことも分かってて。父のことも話してくれました。けど具体的に父が何て言ったのかは親として言えない、言いたくないって。まあそこは無理して聞く必要ないかと思って、聞きませんでしたけど」
「そうですか」
「あ、コーヒー美味しいですね」
ハルは注文したコーヒーを美味しそうに飲んでいた。
「ですね」
ハルは店内のインテリアを見まわした。アンティーク調の雑貨が飾られ、テーブルも椅子もすべてが少し古びていて同じものは一つもなかった。
「そういえばタカさん、どうして今日誘ってくれたんですか?」
「えっ、ああ。お友達としてカフェでお茶する感じ、かな」
ニコっと笑うタカ。
「そうなんですね。心配させていたら申し訳ないというか。気をつかってくれているのかなと思って。アフターケアみたいな」
「アフターケアって!笑」
タカは思わずプハッと吹き出して笑った。
「ハルさん言葉のチョイスがちょっと面白かったです。あはは」
ハルは少し照れくさそうな笑み浮かべた。
「いやあ、なんか。あはは」
「たしかに心配ではありましたし今も気にかけてます。大切な友達の弟ですし。それに僕はかなり傷つけることを話しましたので。でもケア……なのかなぁ。わかりません」
「ケアとは違うか、あはは。変なこと言ってすみません」
「いやいや。あの、大袈裟な言い方ですけど、少し何かが動き出した感じしませんか?ほんの少し。それが良い方向か悪い方向かは分かりませんけど、良い方向なんじゃないかなって僕はハルさんの話聞いてて勝手に思っています」
「ああ……そうですね。うーん、そんな気はしています。そうであってほしいという思いもあります。ただ、もしかしたら辛いことから目を逸らせる事ができているからそう感じているのかも……なんて思ったりもしてます。僕の過去のことや機能のこと」
「その可能性も確かにありますね」
「まだ今は分からないことばかりですけど。けど確かなことは1つあって。タカさんと会うまでと後では、後の方が……気分がいいです。あっ別に変な意味じゃないですよ」
ハルがふふっと笑いながら言う。
それにつられてタカも笑顔になるが、ハルはタカの笑顔にほんの少し寂しさがまざっているような気がした。
「ハルさんにそう言っていただけて、僕も達成感を味わえて気分がいいです。お兄さんはいま何を思ってくれているかな」
「兄からその後、何か見せられたりしてないんですか」
「いえ、何も。ただあの海の前の場所で話している最中はありましたよ。呼吸が荒れた時に」
「ああ、そっか。あの時は少し焦りました。自分の機能を使うとタカさんは呼吸器系にくるんですよね、たしか」
「そうなんです。けどあそこまでくるのは久しぶりでした。やっぱり歳かな」
ふふっとタカが笑う。
「あの……母から聞いたんですけど、兄って散骨だったんですね」
「え……あ、はい」
タカが一瞬驚いた表情になった。
「え、知ってましたよね?」
「あ、はい。もちろん。それも聞いたんですね」
「はい。お墓参り行きたいと話したら母がそう言っていたので」
タカは何も答えなかった。
「兄らしいな、と」
「お兄さんらしいですか?」
「はい」
ハルは、タカが質問してくるのかと思ったが、タカは黙ったままだった。
「タカさんはその時いたんですか。その……散骨のとき」
「いえ、僕は行きませんでした。サエちゃんも行ってないです」
急にタカの表情が暗くなった。ハルは、タカの目がまた一瞬真っ黒に変わったように見えた。
少しの沈黙が続いた。
「サエさんとは、最近は会っているんですか?」
「たまーに、ですね。年に1回とか……かな」
「そうですか……」
「なんかしんみりムードにさせてしまってすみません。サエちゃんにも機会があれば会ってみますか?」
「あ、はい。是非お会いしたいです。確か甘いものに目がないんですよね」
「そうそう!サエちゃんは大のスイーツ好きです」
タカに笑顔が戻った。
「サエさんから見た兄の印象も聞いてみたいなって」
「そうですよね。サエちゃんはお兄さんの彼女だから、僕の知らないお兄さんの一面をたくさん知っていると思います」
「あ、でも兄からしたら、あまり聞かれたくないですかね」
「あー……それもあるかもしれないけど……でもちょっと僕も聞いてみたいかも」
タカはクスクスと笑ってコーヒーを一口飲み、
そして真面目な顔をして質問をした。
「実は、今日誘ったのは他にも理由があるんです。ハルさんに聞きたいことがあって」
「えっ、なんですか」
「ハルさんは、もしかして元の自分に戻りたいと思っていますか?」
「行きますよ。コーヒーが好きなんで」
「へえ」
「それで、今日はありがとうございますハルさん。また会ってくれて」
「あ、いえ。こちらこそ誘ってくれて、ありがとうございます」
「お母さんと話したんですよね」
「はい……一応言った方がいいかなって思って、言ってみました。電話で話した通りなんですが、びっくりはしてました。それで……家に来るってなって直接話しました」
「そうなんですね。お母さん、もしかしたら肩の荷が降りたのかもしれませんね。隠し事って抱えるの相当辛いですからね」
「あ……はい、そうですね。帰り際の母の表情、少しほっとしているような感じしました」
「お母さんとお話しして、何か知れましたか?」
「ああ、はい。僕の子供の頃の変な行動とか」
「変な行動?」
「何か視えてたり。あとは人が来るのを予想したりとか。タカさんが言っていたとおり僕は昔、いろいろ……感じていたようです。どれも全く覚えていないけど」
「そうなんですね」
「それで……母も、僕が一言も発さなくなったことも分かってて。父のことも話してくれました。けど具体的に父が何て言ったのかは親として言えない、言いたくないって。まあそこは無理して聞く必要ないかと思って、聞きませんでしたけど」
「そうですか」
「あ、コーヒー美味しいですね」
ハルは注文したコーヒーを美味しそうに飲んでいた。
「ですね」
ハルは店内のインテリアを見まわした。アンティーク調の雑貨が飾られ、テーブルも椅子もすべてが少し古びていて同じものは一つもなかった。
「そういえばタカさん、どうして今日誘ってくれたんですか?」
「えっ、ああ。お友達としてカフェでお茶する感じ、かな」
ニコっと笑うタカ。
「そうなんですね。心配させていたら申し訳ないというか。気をつかってくれているのかなと思って。アフターケアみたいな」
「アフターケアって!笑」
タカは思わずプハッと吹き出して笑った。
「ハルさん言葉のチョイスがちょっと面白かったです。あはは」
ハルは少し照れくさそうな笑み浮かべた。
「いやあ、なんか。あはは」
「たしかに心配ではありましたし今も気にかけてます。大切な友達の弟ですし。それに僕はかなり傷つけることを話しましたので。でもケア……なのかなぁ。わかりません」
「ケアとは違うか、あはは。変なこと言ってすみません」
「いやいや。あの、大袈裟な言い方ですけど、少し何かが動き出した感じしませんか?ほんの少し。それが良い方向か悪い方向かは分かりませんけど、良い方向なんじゃないかなって僕はハルさんの話聞いてて勝手に思っています」
「ああ……そうですね。うーん、そんな気はしています。そうであってほしいという思いもあります。ただ、もしかしたら辛いことから目を逸らせる事ができているからそう感じているのかも……なんて思ったりもしてます。僕の過去のことや機能のこと」
「その可能性も確かにありますね」
「まだ今は分からないことばかりですけど。けど確かなことは1つあって。タカさんと会うまでと後では、後の方が……気分がいいです。あっ別に変な意味じゃないですよ」
ハルがふふっと笑いながら言う。
それにつられてタカも笑顔になるが、ハルはタカの笑顔にほんの少し寂しさがまざっているような気がした。
「ハルさんにそう言っていただけて、僕も達成感を味わえて気分がいいです。お兄さんはいま何を思ってくれているかな」
「兄からその後、何か見せられたりしてないんですか」
「いえ、何も。ただあの海の前の場所で話している最中はありましたよ。呼吸が荒れた時に」
「ああ、そっか。あの時は少し焦りました。自分の機能を使うとタカさんは呼吸器系にくるんですよね、たしか」
「そうなんです。けどあそこまでくるのは久しぶりでした。やっぱり歳かな」
ふふっとタカが笑う。
「あの……母から聞いたんですけど、兄って散骨だったんですね」
「え……あ、はい」
タカが一瞬驚いた表情になった。
「え、知ってましたよね?」
「あ、はい。もちろん。それも聞いたんですね」
「はい。お墓参り行きたいと話したら母がそう言っていたので」
タカは何も答えなかった。
「兄らしいな、と」
「お兄さんらしいですか?」
「はい」
ハルは、タカが質問してくるのかと思ったが、タカは黙ったままだった。
「タカさんはその時いたんですか。その……散骨のとき」
「いえ、僕は行きませんでした。サエちゃんも行ってないです」
急にタカの表情が暗くなった。ハルは、タカの目がまた一瞬真っ黒に変わったように見えた。
少しの沈黙が続いた。
「サエさんとは、最近は会っているんですか?」
「たまーに、ですね。年に1回とか……かな」
「そうですか……」
「なんかしんみりムードにさせてしまってすみません。サエちゃんにも機会があれば会ってみますか?」
「あ、はい。是非お会いしたいです。確か甘いものに目がないんですよね」
「そうそう!サエちゃんは大のスイーツ好きです」
タカに笑顔が戻った。
「サエさんから見た兄の印象も聞いてみたいなって」
「そうですよね。サエちゃんはお兄さんの彼女だから、僕の知らないお兄さんの一面をたくさん知っていると思います」
「あ、でも兄からしたら、あまり聞かれたくないですかね」
「あー……それもあるかもしれないけど……でもちょっと僕も聞いてみたいかも」
タカはクスクスと笑ってコーヒーを一口飲み、
そして真面目な顔をして質問をした。
「実は、今日誘ったのは他にも理由があるんです。ハルさんに聞きたいことがあって」
「えっ、なんですか」
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