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元の自分に戻りたいですか
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「うーん……戻れるなら戻ってみたいというか。けど、正直いろいろ分からないです。戻るべきなのかどうか。戻るにしてもその術が分かりません。戻ったら戻ったでその先に何が待ち受けているのかも予想できなくて」
「そうですよね」
「大人になるにつれて自然にこの機能が衰えたとか、消えたとかだったら別に無理して戻そうとしなくてもいいかなって思うんです。でも僕の場合、きっかけがあって使えなくなったみたいなんで、それだとちょっとひっかかるというか」
タカが黙ったまま相槌を打つ。
「いまの状況を変えられるのであれば、そのために自分にできることがあるのなら、何かしてもいいかなって思ってます。それでも何も変わらなかったら、うん、まあ諦めて自然の流れに身を任せます」
「身を任せる?」
「……はい。任せる、です」
ハルはコーヒーを一口飲み、窓の外を見た。
「ハルさんは……苦しむ必要がない人間ですよ。あなたはそんな存在じゃない」
タカが小さな声で言った。
「え?」
「ハルさん、僕、手伝いますよ」
「え……あ、ありがとうございます。でもこういうの、どうすればいいんですかね。心理学的な何か技術が必要なんでしょうかね」
「僕も分からないんですけど、僕の視えてるものとか共有できないのかな。なんか刺激されそうじゃないですか」
「え、タカさん過去にも何かこういうことしたんですか?誰かの……視える力を取り戻す的な」
「いや、全くないですし何も分かりません。けど……これは完全に僕の勘なんですけど、ハルさんの場合は守りに入って閉ざしてる感じがするんですよね。もしかしたら何か刺激を与えれば開くんじゃないかな、とか。それは記憶を刺激したり、あとは物理的に刺激したり」
「刺激……でもどうやって?」
タカは黙ったまま窓の外を見て、そしてハルの目を見た。
「僕は視えるタイプだから、ちょっと試してみませんか」
「え……」
「手、いいですか?」
タカは、自分の手をハルに差し出した。
ハルは一瞬ドキッとした。手を差し出した瞬間のタカの目つきが、さっきと少し変わったからだ。
「えっあ、はい」
ハルは自分の右手を差し出し、タカの手のひらの上に重ねる。
タカの手は、とても冷たかった。
「タカさん、手がめちゃくちゃ冷たいです。大丈夫ですか?」
血は通っているのかと心配になるほどにタカの手は冷たかった。
タカは何も答えずハルの目をじっと見つめる。そして両手でハルの手をぎゅっとつかむ。
「あの……」
ハルの心臓の鼓動が早くなる。
「ちょっと待ってくださいね」
「あ、はい……」
20秒ほど経って、ハルは今度は目の奥がひんやりするのを感じた。
その不思議な感覚に驚き、一瞬顔がガクッと動く。
タカはじっとハルの目を見つめたまま、囁くような小さな声で聞く。
「ハルさん、何か感じますか?」
「え、あの……冷たいです。目が。目っていうかここ、奥のほうが」
ハルは左手で自分の頭を指差す。
「冷たい……氷みたいですか」
「はい……そんな感じです」
「そうですか。共有まではいかないけど、繋がることはできるみたいですね。刺激になるかも」
タカの声が普段通りに戻った。
「え、あ、はい……でも何がなんだか」
「そうですよね」
「不思議な感覚すぎて」
「僕もです。初めてこんなことしてます。手じゃなくて目のほうが冷たくなったということですよね?」
「はい。最初はタカさんのその……手の冷たさを感じただけだったんですけど、そのあとに目の奥がこう、ひんやりと」
「そうですか。何か視えたりとかは」
「いえ、それは何も」
「わかりました。あ、すみません。また僕の目怖かったですよね。すみません」
「いやそれは全然。大丈夫です」
ハルは、タカに手を握られ見つめられ、初めて聞く囁く声に、ものすごくドキドキしてしまっていた。心臓の鼓動が手を伝ってタカに知られていないか不安になり、目線を窓の外に向けた。
そしてタカは、ハルの手から自分の手をすっと離す。
タカの手が離れても、ハルの心臓の鼓動は鎮まらなかった。
「僕の冷たい手、たぶん末端冷え性ってやつです。昔からこうで」
「え、あ、そう……ですか」
「たまに手が悴んでしまってみかんの皮が剥きにくくなるんですよね。なんて」
あははっと笑うタカ。
「みかんって……」
ハルは、何だか恥ずかしくなってしまいタカの目を見れずにいた。そして窓の外を見たまま聞く。
「タカさんすみません。僕いろんな意味でいま心臓が耐えられなくて。あの、前にも聞きましたけど絶対に透視はできませんよね?その言葉信じてますからね?」
「だからできませんって笑 本当ですよ。信じてください」
タカはニコッと笑いながら、そう答えた。
「そうですよね」
「大人になるにつれて自然にこの機能が衰えたとか、消えたとかだったら別に無理して戻そうとしなくてもいいかなって思うんです。でも僕の場合、きっかけがあって使えなくなったみたいなんで、それだとちょっとひっかかるというか」
タカが黙ったまま相槌を打つ。
「いまの状況を変えられるのであれば、そのために自分にできることがあるのなら、何かしてもいいかなって思ってます。それでも何も変わらなかったら、うん、まあ諦めて自然の流れに身を任せます」
「身を任せる?」
「……はい。任せる、です」
ハルはコーヒーを一口飲み、窓の外を見た。
「ハルさんは……苦しむ必要がない人間ですよ。あなたはそんな存在じゃない」
タカが小さな声で言った。
「え?」
「ハルさん、僕、手伝いますよ」
「え……あ、ありがとうございます。でもこういうの、どうすればいいんですかね。心理学的な何か技術が必要なんでしょうかね」
「僕も分からないんですけど、僕の視えてるものとか共有できないのかな。なんか刺激されそうじゃないですか」
「え、タカさん過去にも何かこういうことしたんですか?誰かの……視える力を取り戻す的な」
「いや、全くないですし何も分かりません。けど……これは完全に僕の勘なんですけど、ハルさんの場合は守りに入って閉ざしてる感じがするんですよね。もしかしたら何か刺激を与えれば開くんじゃないかな、とか。それは記憶を刺激したり、あとは物理的に刺激したり」
「刺激……でもどうやって?」
タカは黙ったまま窓の外を見て、そしてハルの目を見た。
「僕は視えるタイプだから、ちょっと試してみませんか」
「え……」
「手、いいですか?」
タカは、自分の手をハルに差し出した。
ハルは一瞬ドキッとした。手を差し出した瞬間のタカの目つきが、さっきと少し変わったからだ。
「えっあ、はい」
ハルは自分の右手を差し出し、タカの手のひらの上に重ねる。
タカの手は、とても冷たかった。
「タカさん、手がめちゃくちゃ冷たいです。大丈夫ですか?」
血は通っているのかと心配になるほどにタカの手は冷たかった。
タカは何も答えずハルの目をじっと見つめる。そして両手でハルの手をぎゅっとつかむ。
「あの……」
ハルの心臓の鼓動が早くなる。
「ちょっと待ってくださいね」
「あ、はい……」
20秒ほど経って、ハルは今度は目の奥がひんやりするのを感じた。
その不思議な感覚に驚き、一瞬顔がガクッと動く。
タカはじっとハルの目を見つめたまま、囁くような小さな声で聞く。
「ハルさん、何か感じますか?」
「え、あの……冷たいです。目が。目っていうかここ、奥のほうが」
ハルは左手で自分の頭を指差す。
「冷たい……氷みたいですか」
「はい……そんな感じです」
「そうですか。共有まではいかないけど、繋がることはできるみたいですね。刺激になるかも」
タカの声が普段通りに戻った。
「え、あ、はい……でも何がなんだか」
「そうですよね」
「不思議な感覚すぎて」
「僕もです。初めてこんなことしてます。手じゃなくて目のほうが冷たくなったということですよね?」
「はい。最初はタカさんのその……手の冷たさを感じただけだったんですけど、そのあとに目の奥がこう、ひんやりと」
「そうですか。何か視えたりとかは」
「いえ、それは何も」
「わかりました。あ、すみません。また僕の目怖かったですよね。すみません」
「いやそれは全然。大丈夫です」
ハルは、タカに手を握られ見つめられ、初めて聞く囁く声に、ものすごくドキドキしてしまっていた。心臓の鼓動が手を伝ってタカに知られていないか不安になり、目線を窓の外に向けた。
そしてタカは、ハルの手から自分の手をすっと離す。
タカの手が離れても、ハルの心臓の鼓動は鎮まらなかった。
「僕の冷たい手、たぶん末端冷え性ってやつです。昔からこうで」
「え、あ、そう……ですか」
「たまに手が悴んでしまってみかんの皮が剥きにくくなるんですよね。なんて」
あははっと笑うタカ。
「みかんって……」
ハルは、何だか恥ずかしくなってしまいタカの目を見れずにいた。そして窓の外を見たまま聞く。
「タカさんすみません。僕いろんな意味でいま心臓が耐えられなくて。あの、前にも聞きましたけど絶対に透視はできませんよね?その言葉信じてますからね?」
「だからできませんって笑 本当ですよ。信じてください」
タカはニコッと笑いながら、そう答えた。
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