北海道6000km

おっちゃん

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第二章 広さに圧倒

サロベツ原野

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 幌延を出ると、ほどなく「サロベツ原野」の看板が目に入った。もう残っていないかも知れないが、「エゾカンゾウ」が見たくて、サロベツ原野に寄ることにした。私たちの道はほぼ宗谷本線に沿って走っていたので、サロベツ原野に行くにはかなり道をそれて海に向かって走ることになる。サロベツ原野に向かう道の途中で女子大生らしい二人連れがこちらの方に向かって歩いていた。この辺りの宿にでも泊まってサロベツ原野を見に行ったのだろうかと思った。
そこから5分位でサロベツ原野に着くと、まだエゾカンゾウが咲いていた。「あの黄色い花がエゾカンゾウだよ」と紫野に教えた。「ニッコウキスゲの小さい番見たいですね」という。「ニッコウキスゲを良くしつてたね」というと「先生、小学校の修学旅行は行ったって教えたでしょ!」と返された。なるほど、その時に誰かに教わったのかと思った。
 満足した私は国道に戻るべく、来た道を引き返した。するとなんとさっきの子たちがまだ歩いていた。まさか、駅まで歩く気かと思い、思わず車を止めて「君達どこまで歩くの?」と聞いてみた。すると「駅までです」と言った。「え、駅までまだ5キロはあるよ。良かったら乗りなよ」といって載せてあげた。紫野と同じくらいの年頃に見えた。「娘さんですか?」と聞かれて「はい」と紫野が答えた。「この辺の方ですか?」と聞かれたので、「えー、すぐ近くの幌延です」と答えておいた。紫野は笑いをこらえているようだった。「あなた達はどちらからおいでになったんですか」と聞き返すと、「私たちは名古屋から来ました。」と言った。残念ながら名古屋の知識が全く無かったので、話題を変えた。「このあと、どちらへ行かれるのですか?」と聞くと「稚内です」という。マズい、稚内で会ってしまうかも知れないと思った。そこでそれならと「私たちも稚内に行くところでした。奇遇ですね」良かったら一緒に行きませんか」と誘ってみた。すると「いいんですか」と言うので、稚内まで共に旅することになった。彼女たちの荷物は駅のロッカーに預けてあったので、一旦豊富駅まで行ってからまた国道40号線に入った。「稚内にはどんな御用なんですか」と聞かれて、困ったが親戚に用があって行くところでした。それでなんとなくサロベツ原野の花が見たくなって寄ったわけですよ。そしたら、あなた達が歩いていた。この辺りには宿はないから、駅まで歩く積もりだなとすぐにわかりましたよ」「本当に助かりました。バスがもう無いことがわかって歩くしかないと歩いていたんです。」この辺りのバスは本数が少ないから注意したほうがいいですよ。」などといかにも地元の人間のようなことを言った」この時も紫野が笑いをこらえていた。
 1時間程で稚内に入った。まだ明るかったので、「稚内公園にでも行きませんか」などとまるでこの辺りの地理に詳しいかのような言い方をして誘い、稚内公園に来た。ここにも紫野の苦手な展望タワー(正しくは稚内開基百年記念塔というらしい)があった。上では樺太(サハリン)がよく見えた。あんなに近くにロシアが見えるのかと思った。
「今夜はどちらにお泊まりですか?」ときくと、ユースホステルだというので、そこまで送ってあげて別れた。
 別れたあとの車内は笑いの渦となった。それはそうと、私たちの宿を探さなくてはならない。観光案内所で聞いた見ると今日は土曜日なので、空いている宿無いと言われてしまった。
 仕方なく、車中泊を覚悟した。ともかく、明るいうちに安全な駐車場を探してから夕食を済ますことにした。結局稚内市街にはいいところが見つからなかったので、宗谷岬の駐車場で寝ることにした。稚内駅の近くに戻って夕食をとり、トイレを済ませてから駐車場に向かった。
 空はもう薄暗くなっていた。進行方向の空に光るものがある。どうやら雷のようだ。「先生、あれ雷ですか?」というので「雷嫌いだっけ?」ときくと「はい、怖いです」というので「空が高そうだから、大丈夫だよ」といって安心させたが、内心降られるなと思った。駐車場に着いて車を安全な場所に止めてカーステレオから流れる音楽を聞きながら、今日の旅を振り返りながら話をした。ところがやはり雷は私たちの近くにやってきてしまった。雨が強くなり、稲光も窓から入り込んで来る。雷鳴も聞こえる。「先生、怖い!」といって紫野がしがみついて来た。「大丈夫だよ」30分位で終わるよ。それに雷にはクルマが一番安全なんだよ」というと「なんでクルマが安全なんですか?」というので、「クルマのボディーは金属でできているから、雷に撃たれても中の人には全く被害は無いのさ」と説明した。すると安心したのかしがみつくのをやめた。「説明しないほうが良かったかな?」というと、紫野が私の手を握って来た。予想通り稲妻は30分程続いたが、私たちは寝袋に身を包みクルマのシートを倒して眠った。
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