北海道6000km

おっちゃん

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第四章 このままいられたら!

永遠の思い出

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 クルマはようやく国道から一関で高速道路に入った。高速に乗った頃にはもう空は真っ暗になっていた。北海道内に12日もいたので、今日はもうお盆に入っていた。この辺はまだクルマは多くないが、やはり反対側の下り車線の方には時折ライトが光る。私たちの走る登り車線にはまったくクルマは走っていない。こんなところで事故や故障があったら誰に助けてもらえばいいのだろうと不安になるくらいだ。しかも、高速道路にはインターチェンジやトンネルでなければ道路を照らすランプがなく、かなり長い距離をクルマのヘッドライトだけで走らなければならない。先行車や対向車があれば、少しは安心するのだが、それが全くないとどこに向かって走っているのかまで不安になるくらいだ。なにしろ、道路から見える範囲に明かりが何も無いのだ。
 仙台が近づいて来てようやくあちこちに明かりが見られるようになったてきた。紫野が「ところで先生、今夜はとこまで行くんですか?」と聞いた。確かに、この闇の中をひたすら走っているのだから、不安になるだろう。私は「明日のことを考えると、栃木あたりまでは行っておきたいんだ。」と言った。「あとどれくらいでつくの?」「そうだな。あと2時間くらいかな?」「先生、休まなくて大丈夫?」「そうだね!次のサービスエリアで一度休もうか。」
 気がつくと紫野は静かになっていた。眠っている。そうだろう、もうすぐ日付が変わろうとする時間になっている。長時間の運転に慣れている私でもそろそろ休憩をとりたくなってきた。すると「那須高原SA」の看板が出てきた。ようやくクルマを駐車スペースに入れて休もうとしたとき、紫野が目を覚ました。「先生、ここどこですか?」「那須だよ」というと「栃木まで来たんですか?速い!」とはしゃいでいる。しかしそれだけでは済まなかった。「先生、モーテル行きましょ。」と言い出した。「なんで?」と聞くと「その方がしっかり寝られるでしょ!」と言う。「まあ、そうかな。」ということで西那須野ICで下りてモーテルを探した。モーテルはすぐに見つかったが、空きが無い。何軒かあたってようやく一軒見つけてそこに入った。モーテルなんて何十年振りに入ったことか。「先生、私モーテル泊まるの初めてです!」「そう!」って言うか当たり前でょ。君の彼は君が十代の頃から私なんだから。シャワーを浴びて寝ようとすると紫野が「先生、これなあに?」と次々といろんなスイッチを触ってはしゃいでいる。「はいはい、もうおしまいにして寝ましょう。」とベッドに入ろうとしたとき、二人はふと顔を見合わせた。何故ならWベッドで寝るのは初めてだからだ。
 今まで、何度も旅行に行ったが、布団は必ず2つ敷いてもらっていた。
 紫野が「先生、一緒に寝て下さい。でも何もしたらダメですよ!」などと言う。「しないよ!」と言って二人は同じベッドに入った。
ドキドキして寝るどころでは無い。だって、この世で一番好きな子と一つの布団に入っているのだ。紫野も同じだった。「先生、寝られない!」「そうだね!」と言って私は紫野の方に身体を向けた。紫野もこっちを向いた。「でも、明日のために寝よう」と言って、私は紫野をそっと抱き寄せたまま眠りに就いた。
 私たちは心から愛し合っている。それはお互いに疑う余地がない。だから、私は紫野を大切にしている。紫野にはこれから紫野だけの未来がある。私にはそれを見届ける時間が残されていない。そして、私が紫野を幸せにすることは不可能なことだ。私は紫野の心の中に永遠に生き続けたい。だから、心の繋がりを信じたいのだ。
 翌朝、私たちは爽やかな朝を迎えた。モーテルを出たのが7時頃だったので、正味4時間くらいしか寝てはいなかったが、私たちには永遠に忘れられない夜となった。
 木立を切り裂いて射し込んでくる朝日がとても眩しかったが、それ以上に今日も隣にいる紫野が眩しかった。
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