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想いと葛藤
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何の変哲もない朝がやってきた。
実際は何も平和ではないのに、どこまでも平和で綺麗だと思わせる朝日が空に昇った。
レンはそんな中一人屋根の上に登り、朝日を眺めていた。
何とも言えない思い詰めた表情で、ただ一人変わることのない空を見つめていた。
カイの言っていた、大切な人たちへの挨拶。レンには話をしておきたい人が思い付かなかった。レンの両親はレンが本当に幼い時に死んでいて、その分国民の、レンの住んでいる地域の人たちとは関わりが深かった。レンは昔から他人への愛想は良く、街の人には好かれている。レンは街の人たちに助けられて育ってきたのだ。
でもそれは、レンにとって感謝して挨拶をしておきたいような、大切な人にはなりえなかった。むしろ憎んでもいた。そんな理由が、レンにはあったのだ。
感謝はしている。でも、挨拶の必要はない。そう思っていた。
「はぁ…」
レンは重いため息をつく。理由は悩んでいたことがあったからだった。
カイの誕生日は明日。つまり、国の外に出るのも、明日だ。
レンにはこんなギリギリになるまで悩み、未だ結論を出せていないことがあった。
それは、カイの彼女である、レナのこと___
レンはカイとレナが付き合いだす前からレナに好意を抱いていた。しかしあの二人が想い合っているのは明白で、今までずっと想いを明かさずにいた。
レナが先日カイのところに訪れたのは知っていた。悩みながらレナの家の近くを訪れた時に家を出る彼女を見かけたからだ。表情で、カイのところへ行くんだと察した。それからしばらくして泣きそうになりながら家に戻る彼女の姿も、レンは見かけていた。
レンにその時彼女に話しかける勇気は持ち合わせていなかった。
そして今も、話しに行く勇気も出せないまま、悩んでる自分がいる。
理由はいくつかあって、一番は二人の関係を邪魔したくなかったからだ。レナに想いを伝えれば、少なからずレナは気にかけてくれるだろう。それに明日死ぬかもしれないのに想いを伝えて、戻ってこられなかったら?
彼女の心に、多少なりとも傷を残してしまうかもしれない。そう思った。
それにカイと話をしたということは、自分たちが国の外に出ることを知っている。今彼女はカイを失うかもしれない不安に襲われているはず。そんな中自分が話しに行って、余計に悲しませてしまったら?と思うと彼女のもとに行く勇気なんてものは、根こそぎ奪われていってしまう。
でも諦めきれなくてこうやって朝早くから外に出ているのだから自分も往生際が悪いと、レンは失笑した。
日の出前からこうして屋根の上に座り続けていたが、もうすっかり日が昇ってきてしまって、国民たちの生活音や声が聞こえてくる。
レンは重い腰を上げた。長い間座り続けて屋根と自分がくっついたんじゃないかと思うほど、立ち上がるのが苦しかった。せめて、僕も行ってくるよと伝えたいと思ったのだ。自分の想いは伝えなくていい。そういう結論をレンは出した。
最小限のことを伝えて、すぐに帰ればいい。そう自分を納得させて、レンは屋根の上を走り、レナの住む家のほうへ向かい始めた。
そして今、レンはレナの家の向かいの家の屋根で動けずにいる。
いざレナの前に立ち、どう切り出したらいいのか、どう切り上げればいいのか、レンには何も思いつかなかった。頭の中が真っ白で、どうすればいいのかわからない。そんな自分に嫌気がさして、余計に自分の体を動かなくさせた。
もう帰ってしまおうかと、弱気になって後ろを向こうとした時、レナがタイミングよく外に出てきてしまう。
「…やばっ…」
そう思った時にはもう遅く、レナと目が合ってしまった。
レナは動けなくなっていたレンを見ると、一瞬、悲痛な顔をしたのがわかった。
「レン…?こんなところでどうかした?私に用?」
わざと普通に接してくれようとしてるのがわかる。罪悪感に襲われ、静かにうなずいてしまった。
「…入っていいよ。今日は予定もないし…それに、私も…。なんでもない!早く入って!私お茶入れるから」
どうすればいいのかとグルグル考えていたレンは彼女の話が一切耳に入らず、彼女の表情でさえ目に入らず、彼女の家へと足を踏み入れた。
実際は何も平和ではないのに、どこまでも平和で綺麗だと思わせる朝日が空に昇った。
レンはそんな中一人屋根の上に登り、朝日を眺めていた。
何とも言えない思い詰めた表情で、ただ一人変わることのない空を見つめていた。
カイの言っていた、大切な人たちへの挨拶。レンには話をしておきたい人が思い付かなかった。レンの両親はレンが本当に幼い時に死んでいて、その分国民の、レンの住んでいる地域の人たちとは関わりが深かった。レンは昔から他人への愛想は良く、街の人には好かれている。レンは街の人たちに助けられて育ってきたのだ。
でもそれは、レンにとって感謝して挨拶をしておきたいような、大切な人にはなりえなかった。むしろ憎んでもいた。そんな理由が、レンにはあったのだ。
感謝はしている。でも、挨拶の必要はない。そう思っていた。
「はぁ…」
レンは重いため息をつく。理由は悩んでいたことがあったからだった。
カイの誕生日は明日。つまり、国の外に出るのも、明日だ。
レンにはこんなギリギリになるまで悩み、未だ結論を出せていないことがあった。
それは、カイの彼女である、レナのこと___
レンはカイとレナが付き合いだす前からレナに好意を抱いていた。しかしあの二人が想い合っているのは明白で、今までずっと想いを明かさずにいた。
レナが先日カイのところに訪れたのは知っていた。悩みながらレナの家の近くを訪れた時に家を出る彼女を見かけたからだ。表情で、カイのところへ行くんだと察した。それからしばらくして泣きそうになりながら家に戻る彼女の姿も、レンは見かけていた。
レンにその時彼女に話しかける勇気は持ち合わせていなかった。
そして今も、話しに行く勇気も出せないまま、悩んでる自分がいる。
理由はいくつかあって、一番は二人の関係を邪魔したくなかったからだ。レナに想いを伝えれば、少なからずレナは気にかけてくれるだろう。それに明日死ぬかもしれないのに想いを伝えて、戻ってこられなかったら?
彼女の心に、多少なりとも傷を残してしまうかもしれない。そう思った。
それにカイと話をしたということは、自分たちが国の外に出ることを知っている。今彼女はカイを失うかもしれない不安に襲われているはず。そんな中自分が話しに行って、余計に悲しませてしまったら?と思うと彼女のもとに行く勇気なんてものは、根こそぎ奪われていってしまう。
でも諦めきれなくてこうやって朝早くから外に出ているのだから自分も往生際が悪いと、レンは失笑した。
日の出前からこうして屋根の上に座り続けていたが、もうすっかり日が昇ってきてしまって、国民たちの生活音や声が聞こえてくる。
レンは重い腰を上げた。長い間座り続けて屋根と自分がくっついたんじゃないかと思うほど、立ち上がるのが苦しかった。せめて、僕も行ってくるよと伝えたいと思ったのだ。自分の想いは伝えなくていい。そういう結論をレンは出した。
最小限のことを伝えて、すぐに帰ればいい。そう自分を納得させて、レンは屋根の上を走り、レナの住む家のほうへ向かい始めた。
そして今、レンはレナの家の向かいの家の屋根で動けずにいる。
いざレナの前に立ち、どう切り出したらいいのか、どう切り上げればいいのか、レンには何も思いつかなかった。頭の中が真っ白で、どうすればいいのかわからない。そんな自分に嫌気がさして、余計に自分の体を動かなくさせた。
もう帰ってしまおうかと、弱気になって後ろを向こうとした時、レナがタイミングよく外に出てきてしまう。
「…やばっ…」
そう思った時にはもう遅く、レナと目が合ってしまった。
レナは動けなくなっていたレンを見ると、一瞬、悲痛な顔をしたのがわかった。
「レン…?こんなところでどうかした?私に用?」
わざと普通に接してくれようとしてるのがわかる。罪悪感に襲われ、静かにうなずいてしまった。
「…入っていいよ。今日は予定もないし…それに、私も…。なんでもない!早く入って!私お茶入れるから」
どうすればいいのかとグルグル考えていたレンは彼女の話が一切耳に入らず、彼女の表情でさえ目に入らず、彼女の家へと足を踏み入れた。
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