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想いと葛藤2
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「…国の外に行くこと、話に来たの?」
部屋に入り、どうにも話を切り出せないレンを見かねてレナが切り出してくれる。
部屋の空気はどうしようもなく重くて、静かだった。
鉛のように重い空気が、レンの上にのしかかる。それはレナも同じだろう。彼女は珍しい気まずい表情を浮かべている。
頭の中が真っ白なのは変わりなかったが、まっすぐ見つめてくる彼女の視線に押されるように、口を開いた。
「明日、朝に出るんだ。カイが来たから知ってるとは思うんだけどさ…、レナちゃんとは結構前からの付き合いで、結構お世話になったと思ってて、…だから僕からも、少しは、言っておいたほうがいいかなと思って…。まぁでも、カイから基本全部聞いてると思うし、何話すんだって感じだよな(笑)…僕が来たってなにも意味ねぇって思ったんだけどさ」
口から出た言葉は何もまとまってはいない言葉で、最後はいつもの弱々しくはない言い方をするので精一杯だった。情けない。そんな感情がレンの頭の中を埋めた。
「聞いてるよ。明日なんだ…そっか。…あいつ、国の外に行くとしか、言わなかったから。そっか、あいつ、誕生日なんかに、行っちゃうんだね。…ほんとバカ」
しまった。と思った。カイが国の外に出る日を伝えてなかったのは、予想外だったのだ。
でも考えてみれば当たり前だ。日にちを伝えてしまって、レナが当日手は出さないにしても見に来ないとは限らない。最悪の場合、兵士たちと戦う際に出てきてしまえば命の危険性だってある。
レナには、行くことだけを伝えてそっと出ていき、帰りを国の中で静かに待っててもらうほうが、カイにとっては良かったのだ。
少し考えればカイと同じでレナを大事に思う自分だって同じ考え方をしたはず。
どうしようもない後悔がレンを一瞬で呑み込んだ。
どうしたらと考えてしまい、黙り込んでしまう。そこで口を開いたのはレナだった。
「それとさ、その強がってるその口調、やめていいよ。私、レンがそうやって男っぽい口調をまだ練習してた頃から知ってるんだから。あんたが本当は弱虫な男って、知ってる」
少し笑いながら言うレナに、ホッとした。緊張が少し溶けた気がした。
好きな相手に弱虫と言われるのは少し癪だが、どうでもよかった。それに、自分より彼女のほうが強いってことは、昔から知っている。
カイのように強くてまっすぐで、綺麗な彼女に自分は惚れたのだから。
「強くなりたいと思ってやってたんだから、いいでしょ?…でも今は、素の僕のほうが喋りやすいや…ごめん。ありがとう」
「謝ることじゃないから」
「…うん、そうだね」
きっぱりと言い切った彼女に、やっぱりかっこいいなと思い、少し笑った。カイもレナも、いつだって自分を引っ張ってくれる。
そんな二人が、眩しくて、羨ましくて…
「明日行くって、カイは伝えてなかったんだね…。なら、本当は言わないほうが良かったのかもしれない。でも言っちゃったものは仕方ないし…明日、絶対に見に来るとか、そういうのはしないでほしいんだ。約束してほしい」
「……」
レナは黙り込んだ。やはり、顔は見せないにしろ、こっそり見に行くつもりだったのだろう。カイはそれをわかっていたから言わなかった。申し訳ないと、心の中で思う。
「見に来て、もしレナちゃんが見つかってしまうようなことがあれば、最悪命にかかわる。そんなことがあったら、カイは、国の外になんて出られなくなっちゃう。僕は、カイに夢をかなえてほしいと思う。そう思うから…」
そう言ってレナの顔を見ると、ハッと、何かに気付いた表情をする。レナも、本当は自分と同じ気持ちなのだろう。
ただ、認めきれないだけで。受け入れきれないだけで。
「それだけは絶対しないで。我儘すぎるって思う。…でも、僕が必ずカイを連れて帰るって約束する。カイだけじゃなくて、コウと三人でまたここに帰ってくるって。…無責任かもしれないけど約束するから、今回だけは、許してはくれないかな…」
本当なら守れるかもわからない約束なんてしないべきだ。期待だけさせて裏切ってしまう結果になることが、一番酷い。
でも、それでも、約束してほしかった。彼女を失ってしまうようなことがあれば、カイだけでなく、自分自身も前に進むことができなくなってしまう。
「……わかってる。送り出さなきゃいけないことなんてわかってる。でも、残されるほうの気持ち、カイは知ってる。私も知ってる。レンだって知ってるでしょ?そんな中で、あいつもレンも絶対変えないって目をして言うんだから、酷いよ」
「うん、ごめん。ありがとう」
きっと彼女はカイに明日の話を告げられた時、強がりながらもすぐ受け入れ返事をしたのだろう。自分の気持ちを必死に押し殺して。
そんな弱い部分を、恋愛感情のない、自分だから少し見せてくれる。それが今はそんなこと思う時ではないとわかっているけど、嬉しくて、『好き』が溢れてしまいそうになる。
その気持ちが、いろんな感情に押しあげられて、今にも口から溢れてしまいそうだった。
僕は、もう耐えきれなかったんだ。もう会えなくなるかもしれない。一生話せなくなるかもしれない。そんな気持ちがどうしようもなく襲い掛かってきて、思わず、口に出てしまったんだ。
「僕は、ずっと___」
部屋に入り、どうにも話を切り出せないレンを見かねてレナが切り出してくれる。
部屋の空気はどうしようもなく重くて、静かだった。
鉛のように重い空気が、レンの上にのしかかる。それはレナも同じだろう。彼女は珍しい気まずい表情を浮かべている。
頭の中が真っ白なのは変わりなかったが、まっすぐ見つめてくる彼女の視線に押されるように、口を開いた。
「明日、朝に出るんだ。カイが来たから知ってるとは思うんだけどさ…、レナちゃんとは結構前からの付き合いで、結構お世話になったと思ってて、…だから僕からも、少しは、言っておいたほうがいいかなと思って…。まぁでも、カイから基本全部聞いてると思うし、何話すんだって感じだよな(笑)…僕が来たってなにも意味ねぇって思ったんだけどさ」
口から出た言葉は何もまとまってはいない言葉で、最後はいつもの弱々しくはない言い方をするので精一杯だった。情けない。そんな感情がレンの頭の中を埋めた。
「聞いてるよ。明日なんだ…そっか。…あいつ、国の外に行くとしか、言わなかったから。そっか、あいつ、誕生日なんかに、行っちゃうんだね。…ほんとバカ」
しまった。と思った。カイが国の外に出る日を伝えてなかったのは、予想外だったのだ。
でも考えてみれば当たり前だ。日にちを伝えてしまって、レナが当日手は出さないにしても見に来ないとは限らない。最悪の場合、兵士たちと戦う際に出てきてしまえば命の危険性だってある。
レナには、行くことだけを伝えてそっと出ていき、帰りを国の中で静かに待っててもらうほうが、カイにとっては良かったのだ。
少し考えればカイと同じでレナを大事に思う自分だって同じ考え方をしたはず。
どうしようもない後悔がレンを一瞬で呑み込んだ。
どうしたらと考えてしまい、黙り込んでしまう。そこで口を開いたのはレナだった。
「それとさ、その強がってるその口調、やめていいよ。私、レンがそうやって男っぽい口調をまだ練習してた頃から知ってるんだから。あんたが本当は弱虫な男って、知ってる」
少し笑いながら言うレナに、ホッとした。緊張が少し溶けた気がした。
好きな相手に弱虫と言われるのは少し癪だが、どうでもよかった。それに、自分より彼女のほうが強いってことは、昔から知っている。
カイのように強くてまっすぐで、綺麗な彼女に自分は惚れたのだから。
「強くなりたいと思ってやってたんだから、いいでしょ?…でも今は、素の僕のほうが喋りやすいや…ごめん。ありがとう」
「謝ることじゃないから」
「…うん、そうだね」
きっぱりと言い切った彼女に、やっぱりかっこいいなと思い、少し笑った。カイもレナも、いつだって自分を引っ張ってくれる。
そんな二人が、眩しくて、羨ましくて…
「明日行くって、カイは伝えてなかったんだね…。なら、本当は言わないほうが良かったのかもしれない。でも言っちゃったものは仕方ないし…明日、絶対に見に来るとか、そういうのはしないでほしいんだ。約束してほしい」
「……」
レナは黙り込んだ。やはり、顔は見せないにしろ、こっそり見に行くつもりだったのだろう。カイはそれをわかっていたから言わなかった。申し訳ないと、心の中で思う。
「見に来て、もしレナちゃんが見つかってしまうようなことがあれば、最悪命にかかわる。そんなことがあったら、カイは、国の外になんて出られなくなっちゃう。僕は、カイに夢をかなえてほしいと思う。そう思うから…」
そう言ってレナの顔を見ると、ハッと、何かに気付いた表情をする。レナも、本当は自分と同じ気持ちなのだろう。
ただ、認めきれないだけで。受け入れきれないだけで。
「それだけは絶対しないで。我儘すぎるって思う。…でも、僕が必ずカイを連れて帰るって約束する。カイだけじゃなくて、コウと三人でまたここに帰ってくるって。…無責任かもしれないけど約束するから、今回だけは、許してはくれないかな…」
本当なら守れるかもわからない約束なんてしないべきだ。期待だけさせて裏切ってしまう結果になることが、一番酷い。
でも、それでも、約束してほしかった。彼女を失ってしまうようなことがあれば、カイだけでなく、自分自身も前に進むことができなくなってしまう。
「……わかってる。送り出さなきゃいけないことなんてわかってる。でも、残されるほうの気持ち、カイは知ってる。私も知ってる。レンだって知ってるでしょ?そんな中で、あいつもレンも絶対変えないって目をして言うんだから、酷いよ」
「うん、ごめん。ありがとう」
きっと彼女はカイに明日の話を告げられた時、強がりながらもすぐ受け入れ返事をしたのだろう。自分の気持ちを必死に押し殺して。
そんな弱い部分を、恋愛感情のない、自分だから少し見せてくれる。それが今はそんなこと思う時ではないとわかっているけど、嬉しくて、『好き』が溢れてしまいそうになる。
その気持ちが、いろんな感情に押しあげられて、今にも口から溢れてしまいそうだった。
僕は、もう耐えきれなかったんだ。もう会えなくなるかもしれない。一生話せなくなるかもしれない。そんな気持ちがどうしようもなく襲い掛かってきて、思わず、口に出てしまったんだ。
「僕は、ずっと___」
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