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命
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「…カイ、…泣いてるの?」
「っ!」
普段人に弱みを見せない、常にその場の雰囲気を作るカイが、初めて誰かの前で、泣いた。
レナはそれを見て目を見開き、強くカイの頭を抱き締めた。
「ねぇカイ、何かあるなら言って…?何でもいいから」
「っ……お前が優しいとか…珍しすぎるだろ、」
「いいから」
普段の調子を取り繕うとするカイを、レナは言葉で制止した。そこにはさっきまで泣きそうだったレナの姿はなく、カイは思わず押し黙る。
「…言って。最後になるかもしれないなら、1回くらい頼ってよ…」
カイは少し俯いて、顔を上げた。
「…俺だって……」
「え…?」
カイはどこか遠い場所を見つめながら、ポツリ、ポツリと話し始めた。
「…俺だって、レナと、離れたくねぇよ……もう会えなくなるかも、しれねぇのに。……でも、俺が決めたことだから…。これが、ジュン兄の叶えられなかった、夢だから…。…でも、それより、…それより…」
カイの表情が、苦しそうに、クシャっと歪んだ。
「それより…?」
「っ……あいつらを…俺は無理矢理死なせるかもしれねぇ場所に、連れてくんじゃねぇかって……」
「……っ」
カイの顔はくしゃくしゃで、涙をボロボロと零していた。
「最初はこれでいいと思ってた。…昔から、国の外へ出たいって話してたし、…俺とレンは、兄貴を兵士のせいで亡くしてて、だから、いいと思ってたんだ…。俺は、ジュン兄みたいに兵士のせいで死んだって、いいと思ってた。…でも、あいつらは…死んでいいって本気で思ってるわけ、ないだろ…!!…いつの間にか、俺とあいつらを一緒にしてた。…でも、大切な人達に会って話しておけって言った時の、あいつらの顔が、頭から離れねぇ…っ…これで本当に良かったのかって…。あいつらは、俺が外に出るって言ったから、行くしかなかったのかって…!」
「……」
カイは顔を手で覆う。レナは、何も言えなかった。言えなくなってしまった。
「俺…2人の命背負ってんのと同じだよな…あいつらがもし死んだら、…俺が殺したのと、同じだよな…」
彼女の目の前にいるカイは、今まで見てきたカイの面影は全く無くて、今にも崩れてしまいそうだった。
「………でも、2人はちゃんと、自分で行くって、言ったんでしょ…?カイが行くって言い切ってそんなこと決めるわけないもん。ちゃんと2人に聞いて、行くって、言ったんだよね?」
「…そうだけど、俺が言ったから…」
レナは、カイの言葉を聞いて拳を握りしめた。
「ウジウジすんな!!」
「いっ!?」
レナはカイの頭を思いっきり殴った。カイは思わず困惑した顔をする。
「2人は自分で答えを出したの!何でカイはいつもいつも自分のせいにしたがんの!」
「……」
「何で2人の言葉を受け止めてあげないの!私から一つだけ教えてあげる。有難く思ってよね!」
レナはぽかんとしたカイの顔に自分の顔を近づけた。
「2人を信じてあげて」
「!」
カイは目を見開いた。レナは自慢げな顔をして腕組む。
「…………信じる…?」
「そう。2人が行くって言った言葉を。あの2人を。信じてあげて」
「……」
部屋の重い空気が変わった。
カイは、しばらく呆然としながらどこか遠くを見つめていた。
「っ!」
普段人に弱みを見せない、常にその場の雰囲気を作るカイが、初めて誰かの前で、泣いた。
レナはそれを見て目を見開き、強くカイの頭を抱き締めた。
「ねぇカイ、何かあるなら言って…?何でもいいから」
「っ……お前が優しいとか…珍しすぎるだろ、」
「いいから」
普段の調子を取り繕うとするカイを、レナは言葉で制止した。そこにはさっきまで泣きそうだったレナの姿はなく、カイは思わず押し黙る。
「…言って。最後になるかもしれないなら、1回くらい頼ってよ…」
カイは少し俯いて、顔を上げた。
「…俺だって……」
「え…?」
カイはどこか遠い場所を見つめながら、ポツリ、ポツリと話し始めた。
「…俺だって、レナと、離れたくねぇよ……もう会えなくなるかも、しれねぇのに。……でも、俺が決めたことだから…。これが、ジュン兄の叶えられなかった、夢だから…。…でも、それより、…それより…」
カイの表情が、苦しそうに、クシャっと歪んだ。
「それより…?」
「っ……あいつらを…俺は無理矢理死なせるかもしれねぇ場所に、連れてくんじゃねぇかって……」
「……っ」
カイの顔はくしゃくしゃで、涙をボロボロと零していた。
「最初はこれでいいと思ってた。…昔から、国の外へ出たいって話してたし、…俺とレンは、兄貴を兵士のせいで亡くしてて、だから、いいと思ってたんだ…。俺は、ジュン兄みたいに兵士のせいで死んだって、いいと思ってた。…でも、あいつらは…死んでいいって本気で思ってるわけ、ないだろ…!!…いつの間にか、俺とあいつらを一緒にしてた。…でも、大切な人達に会って話しておけって言った時の、あいつらの顔が、頭から離れねぇ…っ…これで本当に良かったのかって…。あいつらは、俺が外に出るって言ったから、行くしかなかったのかって…!」
「……」
カイは顔を手で覆う。レナは、何も言えなかった。言えなくなってしまった。
「俺…2人の命背負ってんのと同じだよな…あいつらがもし死んだら、…俺が殺したのと、同じだよな…」
彼女の目の前にいるカイは、今まで見てきたカイの面影は全く無くて、今にも崩れてしまいそうだった。
「………でも、2人はちゃんと、自分で行くって、言ったんでしょ…?カイが行くって言い切ってそんなこと決めるわけないもん。ちゃんと2人に聞いて、行くって、言ったんだよね?」
「…そうだけど、俺が言ったから…」
レナは、カイの言葉を聞いて拳を握りしめた。
「ウジウジすんな!!」
「いっ!?」
レナはカイの頭を思いっきり殴った。カイは思わず困惑した顔をする。
「2人は自分で答えを出したの!何でカイはいつもいつも自分のせいにしたがんの!」
「……」
「何で2人の言葉を受け止めてあげないの!私から一つだけ教えてあげる。有難く思ってよね!」
レナはぽかんとしたカイの顔に自分の顔を近づけた。
「2人を信じてあげて」
「!」
カイは目を見開いた。レナは自慢げな顔をして腕組む。
「…………信じる…?」
「そう。2人が行くって言った言葉を。あの2人を。信じてあげて」
「……」
部屋の重い空気が変わった。
カイは、しばらく呆然としながらどこか遠くを見つめていた。
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