4 / 15
第1章 復活の帝王
3.レイチェルとロウ
しおりを挟むラディウスとクラウスが地下室から、出て行き、レイチェルとロウは二人きりになる。
「ロウ様。わたくし、貴方あなたに会ったことがある気がいたします。会ったことがありますか?」レイチェルは、ロウに聞いた。
「……さぁな。勘違いじゃねぇのか?」ロウは、レイチェルをジッと見たが、それも一瞬で興味無さげに言った。
「勘違いではありません。確かに会ったことがありますわ。いつだったかを覚えていないだけです。」レイチェルは、ロウの推測をきっぱりと否定した。
「そ。俺は知らねぇ。」ロウは、やはり興味無さげに言う。
否。
興味無さげに見せているだけのようだ。
内心は、レイチェルと会ったことを覚えているのだろう。
「本当にそう思うなら、自分で思い出してみな。」ロウはレイチェルを辛辣に突き放した。
「はい。ロウ様は教えてくれ無さそうなので、そうすることにいたしますわ。」レイチェルはそうため息をついて、言った。
「あー、ロウ様はやめろ。ロウでいい。」ロウは、レイチェルに様づけされるのが、慣れなかったようで、そうレイチェルに言った。
「はい、わかりました。ロウ……こ、こうですか?」レイチェルは恥ずかしそうに、頰を赤らめて言った。
「敬語もやめろ。」ロウは続けて、レイチェルに注文する。
「無理です。わたくしの敬語は、癖なのですから。」レイチェルは、ロウの2つ目の注文には、応えなかった。
「何故だ、小娘。」ロウは不機嫌そうに眉をひそめると、言った。
「それよりも、わたくしのことは、レイチェル、とお呼びくださいませ。小娘と呼ばれるのは、不快でなりません。」レイチェルは、可愛く拗ねて見せ、言う。
「……レ、レイチェル……?」ロウは、困惑してレイチェルの名を呼んだ。
その時。
「思い出しましたわ!」レイチェルは突然叫んだ。
ロウは、変なものを見る目で、レイチェルを見る。
「ロウ、貴方わたくしに嘘をつきましたね?」レイチェルは、ロウを睨みつけた。
が。
全く怖くなく、むしろ可愛い。
「何の話だ?」ロウは、それでもやはり惚けている。
「わたくしと会ったことがあるかの話です!」レイチェルは、大きい声で言った。
(そう、あれはわたくしがまだ幼い時。)
レイチェルが、まだ幼い頃の話だ。
レイチェルは、その日、ロウの封印されている地下室に迷い込んでしまった。
そして、ロウに触れ、ロウの意識を覚醒させてしまったのだ。
ロウは、封印を解け、と強要する訳でなく、レイチェルの名を呼び、泣くレイチェルを慰めたのだった。
その姿は、冷酷無慈悲な“死の帝王”などでは、なかった。
ただ一人の優しい人間だったのだ。
当時、よく人見知りをしていたレイチェルが心を開いたのは、言うまでもなかった。
レイチェルは、ロウと話した。
母のこと。
父のこと。
兄のこと。
様々なことを。
ロウは、レイチェルの話を黙って聞いていた。
だが。
ロウは、レイチェルを城へ帰した。
まだ帰りたくない、と駄々をこねるレイチェルを諌め、また会えると言って。
レイチェルを帰したあと、ロウは、レイチェルの汚点に自分がならないように、自らの意識を、自らの意思で手放した。
もう、レイチェルに会うことはない、と思いながら。
レイチェルは、それからロウに会いに行くことが出来なくなった。
ロウの封印されている地下室に行ったことがバレたからだ。
そして、今に至る。
「ロウ、貴方はもうわたくしと会わない、と思っていたでしょう?」レイチェルは、拗ねて言う。
「あぁ。もう、ここにお前は来ないと思っていた。ガキほど言ったことを実行しないのはいないからな。」ロウは、少し寂しそうに笑って言った。
「また会えましたね、ロウ。」レイチェルは、花のような笑顔で、言った。
「そうだな。チビだったガキがこんなにデカくなりやがって。」ロウは、そう嬉しそうに、そして、悲しそうに言った。
「……どうして、そう悲しそうにするんですの?」レイチェルは、不思議そうにこてん、と首を傾げて、聞いた。
「………さぁな。レイチェル、お前には、わからんよ。」そう静かにロウは言ったときだった。
ラディウスが、二本の黒と白の刀を持って現れた。
「やっと持って来たか。待ちくたびれたぞ。」ロウは、ラディウスから嬉しそうに刀を受け取った。
「大事なものか?」ラディウスがそう聞くと、ロウは、コクンと頷いた。
「俺がクライスと……いや、何でもない。」ロウは何かを言いかけたが、途中で口を噤んだ。
「出立は、早い方がいいだろう。金と宝石を準備してくれ。明日か明後日の夜に出る。小型竜がいたら、小型竜がいいな。あと、レイチェルが使っている化粧品類も欲しい。レイチェルの変装に使う。ウィッグも欲しい。全部違うやつだ。あとは、何も望まない。」とロウは次々に決めていった。
「…わかった。明後日までに準備する。それまで、待っておくといい。」とラディウスは、言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる