美しの王女と死の帝王

クイーン・ドラゴン@アヤメ

文字の大きさ
5 / 15
第1章 復活の帝王

4.クライスの手記

しおりを挟む



ロウは、そのあと城の一室で休息を取っていた。
城内を歩き回らないで欲しい、と懇願されたロウには、することがなかった。
その代わり、といっていいかどうか分からないが、ロウの事が書かれていると言う、クライスの手記を貸して貰ったのだった。
それは、ラディウスの頼みでレイチェルを連れて、国から出る時に一緒に持って行って欲しい、というものだった。
相手の国にとられてはいけないものらしい。
パラリ、とクライスの手記をめくってみる。
懐かしいクライスの角ばった、しかし、綺麗な文字が並んでいた。
ロウの目に涙が浮かび、涙の雫が一筋流れた。
ロウは、懐かしかった。
クライスと過ごした、戻らないあの日々が様々と思い出せる。
(どうして、俺とアイツは敵対してしまったのだろう。)
どこで、道を間違えてしまったのか、ロウには分からない。
バレないように、そっと涙を拭って、クライスの手記に目を向けた。
手記は、クライスとロウの出会いから、始まっていた。
ロウは、当時の様子を瞼に浮かべる。

世界有数の魔法大学に進学したロウとクライスは、そこで運命の出会いをした。
はじめに、話しかけたのはクライスだった。
当時のロウは、辛辣で傍若無人だったが、クライスはそんなロウに、“仲良くなれる”と確信して近づいていったらしい。
クライスの思い通りに、はじめはクライスのことなど歯牙にかけなかったロウだったが、どんどん仲良くなり、親友と呼べる仲までに発展した。
それは、2人とも圧倒的な強者であったためだ。
ロウとクライスは強かった。
だから。
ロウとクライスはライバルになった。
時には、笑いあい、時には、刃を向けて切磋琢磨する。
2人には、そんな絆があった。
だが。
魔法大学を卒業して、道が分かたれたロウとクライスは、しばらくして再び出会った。
敵として。
ロウは、国に害を成す者になっていた。
国1つを1人で殲滅する災害。
一方、クライスは国を救う救世主になっていた。
国を襲う災害から守る者。
その時は、まだ2人の心は繋がっていた。
刃を交え、クライスは、“こちらへ戻れ、まだ間に合う”と、必死にロウに呼びかけた。
ロウは、クライスと敵対しないように、必死になって、理由を説明した。
だが。
2人の意見は交わることがなかった。
また一回また一回と、戦いを重ねていくうちに、ロウとクライスは親友を敵としてしか、見ることができなくなった。
しかし、かつての絆は、まだそこにあった。
2人は、互いに殺すことが出来ない。
実力はもちろんあったが何より。
情が2人を殺すことが出来ないでいたのだ。
それに。
互いに贈り合った武器を、まだ2人とも愛用していた。
でも。
ロウの悪行は、ますます酷くなるばかりだった。
もう、2人にはかつての面影は残っていなかった。
憎むべき敵であると、互いに牙を向け、傷つけ合う。
かつての彼らの友は、2人のその姿に嘆き悲しんだ。
そして。
クライスはロウを封印した。
憎むべき敵であるはずなのに、クライスはロウを殺せなかった。
ロウもまた、敵であるはずの、クライスの封印に抵抗することはなかった。
失われた、と思われていた絆は、確かに存在した。
だが。
その絆に、共に過ごした日々に、2人は気づけなかった。
気づいたのは。
ロウを封印した後だった。
クライスは、ロウが封印された後の平和な時に。
ロウは、封印の深い微睡の中で。
絆に気づいた。
しかし、時すでに遅く。
もう、2人は出会えない。

ロウは、拭ったはずの涙が再び流れ出てくるのを感じた。
人としての心を失ったと思っていたロウは、自分の涙に驚き、そして、戸惑った。
もう、止めることが出来ないその涙を。
ベッドに顔を埋め、隠した。
もう、戻らないクライスとの日々に。
出会えないクライスを想って。
ロウは涙を流す。
そして。
ロウは、泣き疲れて眠ったのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...