美しの王女と死の帝王

クイーン・ドラゴン@アヤメ

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第1章 復活の帝王

12.キオク

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ロウはじっと、静かにレイチェルを見つめた。
深淵の焔を思わせる深紅の瞳の中に見え隠れする感情を読むことはできない。
「……ロウ?」
ロウの様子にレイチェルは、ロウの名を呼んだ。
「………気が向いたら、教えてやるよ。」
ロウはそう言うと、奥の部屋に籠ってしまった。



その晩、レイチェルはロウと同じベッドに潜り込んで、ロウの暖かさを感じながら眠った。
夢を、見た。
とても、不思議な夢だった。



レイチェルは、学校にいた。
兄のクラウスが通っていた魔法大学のようなところだ。
クラウスが通っていた魔法大学は、ロウの時代よりももっと前にできた学校らしい。
クラウスの通っていた大学よりも、幾分かは綺麗だった。
レイチェルの体は、レイチェルの意思とは関係なく動く。
一つの教室に入って、席に着く。
レイチェルの視線は、いつもとある少年に向いていた。
後ろ姿で、顔は見えないが、烏の濡れ羽色の髪を長く伸ばし、後ろで三つ編みにした少年である。
顔が見えなくとも、少年には品位があった。
そのころには、レイチェルは誰かのキオクを見ているのだと気づいていた。
「……レイラ、勉強教えて!」
学校のクラスメイトが、レイチェルに話かける。
レイチェルの体の主は、レイラ、と言うらしい。
「わかったわ。今、行くわね。」
レイラは、レイチェルと同じような鈴を転がした美しい声で、返事をすると席を立つ。
少年のほうへチラリ、と視線を向ける。
少年はやはり、前を向いていた。
その時。
少年がこちらを向いた。
深紅の瞳。
薄い唇。
その配置は完全なシンメトリーで、美しい。
レイチェルは息をのんだ。
なぜなら。
幾分か幼かったが、確かにロウだったからだ。
鋭い眼光を受けて、周りの生徒が悲鳴を上げる。
「ロウ、怯えさせるな、っていつも言ってるよね?」
声が、聞こえた。
クラウスと同じ、声。
幼いクラウスと瓜二つの、姿。
その人を見たロウは、不満げに小さく身体を揺らした。
「怯えさせてるつもりは、ない。」
ロウの幾分か幼く、舌足らずな言葉が鼓膜を揺らした。
「クライスに言われたから。相手が、勘違いするだけ。」
ロウは、小さく反論する。
しかし、怯える容姿をしているのを自覚しているのか、声は小さかった。
「まあね。僕は知ってるつもりだよ。君が竜の血を引いてること。だから、本能的な恐怖を与えちゃうんだよね?」
クライスは悪戯っぽく言う。
周りから驚きの声は上がらない。
周知の事実であったようだ。
だが、その事実をレイチェルは知らなかった。
「レイラさんは怯えないんだね。」
クライスはレイラへ言う。
「ええ。私も竜の血をかすかにですが継いでいますもの。ロウ様よりは、ずっと薄いですけど。」
レイラは薄く微笑みながら、言った。
「どうりで。似た、気配を感じた。」
ロウは若干楽しそうにレイラへ告げる。
「私は、正反対の気配を感じましたけど。」
レイラは、疑問をぶつけた。
「たぶん、竜としての、力の違い。俺のは、すごく凶暴的だけど、レイラのは、すごく大人しくて、すごく綺麗。感じ方が違えば、感じる気配も違う。」
ロウはレイラにそう教える。
今のロウにはない、純粋なレイラへの興味だった。
今のロウは、何もかも達観していて、何事にも興味なさげであった。
レイチェルは、少しだけ寂しく感じた。
私も、彼らと同じ時に生まれればよかったのに。
そう思えてならなかった。
「じゃあ、今度教えてくださいませんか、竜のことを。」
「うん、いいよ。よろしく、レイラ。」
「ええ。よろしくお願いします、ロウ様。」



そっと、レイチェルは目を開ける。
もう、ロウはとっくの昔に起床したようで、ベッドにロウのぬくもりはなかった。
「本当に。あのときのような、会話をしたかった。」
レイチェルは呟く。
レイラの人格に引きずられているようで、レイチェルの口調が少し乱れた。
「私、何故、この時代に生まれたの……?あの時代に生まれたのならば、こんな気持ちにならなかったのに……。」
レイチェルは呟いた。
その言葉は、宙に溶けて消えていく。
ロウに聞かれていないのが救いだった。
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