美しの王女と死の帝王

クイーン・ドラゴン@アヤメ

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第1章 復活の帝王

13.訓練

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レイチェルは、あのキオクを頭の隅へと追いやった。
ロウと訓練するときにあのキオクは邪魔だと、思ったからだ。
それに、ロウから確信の言葉を聞くのも怖かった。
必要以上に、ロウの核心に触れることを恐れる自分。
レイチェルには、理由がわからなかった。
だから、せめて思い出さないようにしよう。
そう、レイチェルは考えた。
ロウがレイチェルに剣技を教えるとき。
ロウはよくレイチェルの体に触れた。
体をぴったりと、くっつけて。
耳元で囁くように。
剣技をロウ自身が、見せてくれることもあった。
訓練の時に気づいたのだが、ロウがレイチェルの体に触れると、体が温かくなり、力が増す。
それが何故だかわからなかったが、ロウに問うことはしなかった。
知っても、知らなくても、変わりはしないのだから、と。
レイチェルはよく努力をした。
ロウからは、素振り千回と言われていたが、二千回も、三千回もすることはざらだった。
それは、レイチェルが自国を自分の力で救いたかったかもしれない。
ロウがそんな危険なことをレイチェルにさせるとは思えなかったが。

ロウは約束通りにレイチェルに魔法を教えた。
魔法を使うには、適正が合わなければ魔法を使うことはできない。
ロウは、光属性以外の全属性使うことができたが、クラウスは闇属性を使うことはできず、その他の属性はすべて使うことができた。
レイチェルの魔法適正。
闇属性を使えず、火属性も使えないが、その他の属性は使えた。
特に水属性の魔法の才能は飛びぬけていた。
水属性の魔法だけならば、一日もたたずに上級魔法まで行使することができるようになった。
無詠唱も夢じゃないだろう。
ロウはそう言った。

何日も何日もそのような生活を繰り返した。
レイチェルの手は王女らしくない剣だこだらけだ。
さすがはクライスの子孫である。
戦闘センスは抜群であった。
だが、ロウには及ばない。
幾つもの国を滅ぼした経験豊富な死の帝王には。
切り結べる程にはなったが。
まだまだ力も体力も足りない。
「ロウ。わたくしは強くなっていますか?」
レイチェルは実感が湧かないようで、こてり、と首を傾げ聞く。
「ああ。強くなってるよ。だが、強くなって何をしたい?」
ロウは聞く。
「わたくしは強くなりたいです。ロウに守られるのではなく、自分の身は自分で守れるようになりたい。そして、いつかは祖国を救いたい。祖国にいるお兄様やお父様、国民たちの力になりたいのです。」
レイチェルはそう信念と覚悟の籠った瞳で、ロウに告げた。
「………そうかい。お前は、殺戮者にでもなりたいのか?」
「え?」
「だって、そうだろう?祖国を救いたい。その思いは立派だがな、それは敵国の人間を殺すことの裏返しだ。俺には、レイチェルが俺みたいな畜生に落ちることを、誰も望んじゃいねぇとは思うが。」
「私は、人を殺さなくてもいいです。」
「甘ったれんな。剣を持つってことは、人を殺す覚悟を持つってことだ。命を奪う覚悟がないのなら、剣なんてもん、捨てちまえ。一生隠れて生きろ。祖国の人間から生かしてもらったことに感謝しながら、生きるんだな。」
「……剣を持つことは、そういうことなのですか?お兄様も、その覚悟がおありなのですか?」
「少なくとも、お前よりはあるだろうよ。今でも剣を握ってるんだからな。つーか、俺に容赦なく剣を向けてきたぞ?」
ロウはクツクツと笑う。
なんとなく、懐かしさが滲み出ている気がした。
「それでもわたくしは………わたくしは、救いたいです。人をたくさん殺すことになったとしても、国民たちに嘆かれたとしても。わたくしだけが生かされて、のうのうと生きるのはいや。………のうのうと生きるくらいならば、わたくしは死を選ぶ。わたくしの命を誰かのために投げ出す。だから………わたくしは剣を、とります。」

『私は、あなたに生かされたまま生きるのは嫌よ。………私が生かされて、あなたが死ぬというのならば、私は誰かの為に命を投げ出し、救いながらも、死を目指すわ。だから、私の覚悟を踏みにじらないで、ロウ。』

ロウは目を見開く。
昔、ロウの為に命を投げ出し、救った女性の影を見た気がした。

『ロウ、私はあなたと生きることが出来て、幸せでした。』

ロウの耳に、最後の言葉が蘇る。
その時、初めてチカラを欲した。
大事なものを守るチカラが欲しくなった。
彼女を殺した相手に初めて憎しみを抱いた。
そして、気づいた。
ロウの、竜としての力は。
負の感情に呼応して強くなることに。
あの時ロウは。
初めて国を滅ぼした。

「はぁッ……はぁッ……はぁッ……はぁッ……はぁッ……!!」
過去を思い出し、自然とロウの呼吸が早く、浅くなっていく。
何故、思い出せなかったのだろう。
レイチェルに縫ぐるみのことを聞かれて、何故記憶が抜け落ちていることに気付けなかったのだろう。
「ロウ?ロウ?」
レイチェルがロウの異変に気付き、声をかける。
だが、意識が朦朧とし始めたロウにレイチェルの声は届かない。
「レ…イラ………」
そうロウは呟くと、気を失った。
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