14 / 15
第1章 復活の帝王
13.訓練
しおりを挟む
レイチェルは、あのキオクを頭の隅へと追いやった。
ロウと訓練するときにあのキオクは邪魔だと、思ったからだ。
それに、ロウから確信の言葉を聞くのも怖かった。
必要以上に、ロウの核心に触れることを恐れる自分。
レイチェルには、理由がわからなかった。
だから、せめて思い出さないようにしよう。
そう、レイチェルは考えた。
ロウがレイチェルに剣技を教えるとき。
ロウはよくレイチェルの体に触れた。
体をぴったりと、くっつけて。
耳元で囁くように。
剣技をロウ自身が、見せてくれることもあった。
訓練の時に気づいたのだが、ロウがレイチェルの体に触れると、体が温かくなり、力が増す。
それが何故だかわからなかったが、ロウに問うことはしなかった。
知っても、知らなくても、変わりはしないのだから、と。
レイチェルはよく努力をした。
ロウからは、素振り千回と言われていたが、二千回も、三千回もすることはざらだった。
それは、レイチェルが自国を自分の力で救いたかったかもしれない。
ロウがそんな危険なことをレイチェルにさせるとは思えなかったが。
ロウは約束通りにレイチェルに魔法を教えた。
魔法を使うには、適正が合わなければ魔法を使うことはできない。
ロウは、光属性以外の全属性使うことができたが、クラウスは闇属性を使うことはできず、その他の属性はすべて使うことができた。
レイチェルの魔法適正。
闇属性を使えず、火属性も使えないが、その他の属性は使えた。
特に水属性の魔法の才能は飛びぬけていた。
水属性の魔法だけならば、一日もたたずに上級魔法まで行使することができるようになった。
無詠唱も夢じゃないだろう。
ロウはそう言った。
何日も何日もそのような生活を繰り返した。
レイチェルの手は王女らしくない剣だこだらけだ。
さすがはクライスの子孫である。
戦闘センスは抜群であった。
だが、ロウには及ばない。
幾つもの国を滅ぼした経験豊富な死の帝王には。
切り結べる程にはなったが。
まだまだ力も体力も足りない。
「ロウ。わたくしは強くなっていますか?」
レイチェルは実感が湧かないようで、こてり、と首を傾げ聞く。
「ああ。強くなってるよ。だが、強くなって何をしたい?」
ロウは聞く。
「わたくしは強くなりたいです。ロウに守られるのではなく、自分の身は自分で守れるようになりたい。そして、いつかは祖国を救いたい。祖国にいるお兄様やお父様、国民たちの力になりたいのです。」
レイチェルはそう信念と覚悟の籠った瞳で、ロウに告げた。
「………そうかい。お前は、殺戮者にでもなりたいのか?」
「え?」
「だって、そうだろう?祖国を救いたい。その思いは立派だがな、それは敵国の人間を殺すことの裏返しだ。俺には、レイチェルが俺みたいな畜生に落ちることを、誰も望んじゃいねぇとは思うが。」
「私は、人を殺さなくてもいいです。」
「甘ったれんな。剣を持つってことは、人を殺す覚悟を持つってことだ。命を奪う覚悟がないのなら、剣なんてもん、捨てちまえ。一生隠れて生きろ。祖国の人間から生かしてもらったことに感謝しながら、生きるんだな。」
「……剣を持つことは、そういうことなのですか?お兄様も、その覚悟がおありなのですか?」
「少なくとも、お前よりはあるだろうよ。今でも剣を握ってるんだからな。つーか、俺に容赦なく剣を向けてきたぞ?」
ロウはクツクツと笑う。
なんとなく、懐かしさが滲み出ている気がした。
「それでもわたくしは………わたくしは、救いたいです。人をたくさん殺すことになったとしても、国民たちに嘆かれたとしても。わたくしだけが生かされて、のうのうと生きるのはいや。………のうのうと生きるくらいならば、わたくしは死を選ぶ。わたくしの命を誰かのために投げ出す。だから………わたくしは剣を、とります。」
『私は、あなたに生かされたまま生きるのは嫌よ。………私が生かされて、あなたが死ぬというのならば、私は誰かの為に命を投げ出し、救いながらも、死を目指すわ。だから、私の覚悟を踏みにじらないで、ロウ。』
ロウは目を見開く。
昔、ロウの為に命を投げ出し、救った女性の影を見た気がした。
『ロウ、私はあなたと生きることが出来て、幸せでした。』
ロウの耳に、最後の言葉が蘇る。
その時、初めてチカラを欲した。
大事なものを守るチカラが欲しくなった。
彼女を殺した相手に初めて憎しみを抱いた。
そして、気づいた。
ロウの、竜としての力は。
負の感情に呼応して強くなることに。
あの時ロウは。
初めて国を滅ぼした。
「はぁッ……はぁッ……はぁッ……はぁッ……はぁッ……!!」
過去を思い出し、自然とロウの呼吸が早く、浅くなっていく。
何故、思い出せなかったのだろう。
レイチェルに縫ぐるみのことを聞かれて、何故記憶が抜け落ちていることに気付けなかったのだろう。
「ロウ?ロウ?」
レイチェルがロウの異変に気付き、声をかける。
だが、意識が朦朧とし始めたロウにレイチェルの声は届かない。
「レ…イラ………」
そうロウは呟くと、気を失った。
ロウと訓練するときにあのキオクは邪魔だと、思ったからだ。
それに、ロウから確信の言葉を聞くのも怖かった。
必要以上に、ロウの核心に触れることを恐れる自分。
レイチェルには、理由がわからなかった。
だから、せめて思い出さないようにしよう。
そう、レイチェルは考えた。
ロウがレイチェルに剣技を教えるとき。
ロウはよくレイチェルの体に触れた。
体をぴったりと、くっつけて。
耳元で囁くように。
剣技をロウ自身が、見せてくれることもあった。
訓練の時に気づいたのだが、ロウがレイチェルの体に触れると、体が温かくなり、力が増す。
それが何故だかわからなかったが、ロウに問うことはしなかった。
知っても、知らなくても、変わりはしないのだから、と。
レイチェルはよく努力をした。
ロウからは、素振り千回と言われていたが、二千回も、三千回もすることはざらだった。
それは、レイチェルが自国を自分の力で救いたかったかもしれない。
ロウがそんな危険なことをレイチェルにさせるとは思えなかったが。
ロウは約束通りにレイチェルに魔法を教えた。
魔法を使うには、適正が合わなければ魔法を使うことはできない。
ロウは、光属性以外の全属性使うことができたが、クラウスは闇属性を使うことはできず、その他の属性はすべて使うことができた。
レイチェルの魔法適正。
闇属性を使えず、火属性も使えないが、その他の属性は使えた。
特に水属性の魔法の才能は飛びぬけていた。
水属性の魔法だけならば、一日もたたずに上級魔法まで行使することができるようになった。
無詠唱も夢じゃないだろう。
ロウはそう言った。
何日も何日もそのような生活を繰り返した。
レイチェルの手は王女らしくない剣だこだらけだ。
さすがはクライスの子孫である。
戦闘センスは抜群であった。
だが、ロウには及ばない。
幾つもの国を滅ぼした経験豊富な死の帝王には。
切り結べる程にはなったが。
まだまだ力も体力も足りない。
「ロウ。わたくしは強くなっていますか?」
レイチェルは実感が湧かないようで、こてり、と首を傾げ聞く。
「ああ。強くなってるよ。だが、強くなって何をしたい?」
ロウは聞く。
「わたくしは強くなりたいです。ロウに守られるのではなく、自分の身は自分で守れるようになりたい。そして、いつかは祖国を救いたい。祖国にいるお兄様やお父様、国民たちの力になりたいのです。」
レイチェルはそう信念と覚悟の籠った瞳で、ロウに告げた。
「………そうかい。お前は、殺戮者にでもなりたいのか?」
「え?」
「だって、そうだろう?祖国を救いたい。その思いは立派だがな、それは敵国の人間を殺すことの裏返しだ。俺には、レイチェルが俺みたいな畜生に落ちることを、誰も望んじゃいねぇとは思うが。」
「私は、人を殺さなくてもいいです。」
「甘ったれんな。剣を持つってことは、人を殺す覚悟を持つってことだ。命を奪う覚悟がないのなら、剣なんてもん、捨てちまえ。一生隠れて生きろ。祖国の人間から生かしてもらったことに感謝しながら、生きるんだな。」
「……剣を持つことは、そういうことなのですか?お兄様も、その覚悟がおありなのですか?」
「少なくとも、お前よりはあるだろうよ。今でも剣を握ってるんだからな。つーか、俺に容赦なく剣を向けてきたぞ?」
ロウはクツクツと笑う。
なんとなく、懐かしさが滲み出ている気がした。
「それでもわたくしは………わたくしは、救いたいです。人をたくさん殺すことになったとしても、国民たちに嘆かれたとしても。わたくしだけが生かされて、のうのうと生きるのはいや。………のうのうと生きるくらいならば、わたくしは死を選ぶ。わたくしの命を誰かのために投げ出す。だから………わたくしは剣を、とります。」
『私は、あなたに生かされたまま生きるのは嫌よ。………私が生かされて、あなたが死ぬというのならば、私は誰かの為に命を投げ出し、救いながらも、死を目指すわ。だから、私の覚悟を踏みにじらないで、ロウ。』
ロウは目を見開く。
昔、ロウの為に命を投げ出し、救った女性の影を見た気がした。
『ロウ、私はあなたと生きることが出来て、幸せでした。』
ロウの耳に、最後の言葉が蘇る。
その時、初めてチカラを欲した。
大事なものを守るチカラが欲しくなった。
彼女を殺した相手に初めて憎しみを抱いた。
そして、気づいた。
ロウの、竜としての力は。
負の感情に呼応して強くなることに。
あの時ロウは。
初めて国を滅ぼした。
「はぁッ……はぁッ……はぁッ……はぁッ……はぁッ……!!」
過去を思い出し、自然とロウの呼吸が早く、浅くなっていく。
何故、思い出せなかったのだろう。
レイチェルに縫ぐるみのことを聞かれて、何故記憶が抜け落ちていることに気付けなかったのだろう。
「ロウ?ロウ?」
レイチェルがロウの異変に気付き、声をかける。
だが、意識が朦朧とし始めたロウにレイチェルの声は届かない。
「レ…イラ………」
そうロウは呟くと、気を失った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる