るくNote(るくのおと)

きりと瑠紅 (きりと☆るく)

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ダンジョンにて想う

ダンジョンにて想う①止めときなはれ

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 大阪万博が始まった。正直、早く終わって欲しい。
 この2月に異動があり、瑠紅は地下鉄を乗り継いで新しい職場に通っているのだが、あろうことかその通勤ルートが、大阪万博会場に行くルートと一部、重なっているのだ。
 乗換駅は、大阪最大のビジネス街にあり、駅改札内の乗り継ぎ通路は、狭い上に天井が低い。そこを、黒っぽい服を着て黒っぽい鞄を持った黒っぽい髪の人々が、ざっざっざっざ……と無言で歩く。同じ方向へ向かって。
 下層に向かう長いエスカレーターに乗っていると、下層からも人々を乗せたエスカレーターが上がってくる。上から見ると、黒っぽい頭が数珠つなぎになっていて、蟻の行列かと思ってしまう。その中に、瑠紅もいるのだが、ついつい、「人間が、アリのようだ」などとつぶやいてしまうのは、致し方のないことではないだろうか。
 乗り継ぐ路線は、どこかの駅で他の路線と接続している。地下鉄だけでなくニュートラムや近鉄まで。おかげで、駅に電車が滑り込み、ドアが開くと、各駅で集めてきた人々が瘴気(異様な空気)と共に、どわ~っと下りてくる。
「ドアから、どわ~。どこでもドア~」
 決死の形相で我先に下りてくる人々に圧倒され、思考が壊れる瑠紅。つまらんギャグしか出てこない。「中程の空いた車両にお乗り下さい~」と、ファントム(駅員)が、がなりたてるが、広がる黒い瘴気(人波)に行く手を阻まれ、仕方なく最後尾の混んでいる車両に乗る。座れるわけがない。自立出来る空間を確保するのが精一杯。だが、生きて職場に辿り着くためには、そこで手を打たざるを得ない。ダンジョンって、怖い。
 そう、ダンジョン。この乗換駅の構内を歩く度、瑠紅は、ファンタジーやゲーム世界におけるダンジョン(地下構造物)を探索しているような錯覚にとらわれる。
 迷路のように入り組んだ、角張った長い通路を、ざっざっざっざ……と鬼気迫る様相で瘴気を放ちながら同一方向に歩いて行く、人もどき。瑠紅もその中に入り、ざっざっざっざ……。先を見ると、芋の子洗いのようにボコボコと上下に動く黒く丸いもの(頭)が、どこまでも続いている。血の池地獄で浮き沈みする人間の頭って、こんな感じかな、などと考えてしまう。
 異様な空間、異様な集団、異様な時間――。だが、共に行軍する瑠紅の胸の内には、妙な安心感がある。頑張って生きているのは、私だけじゃない、独りじゃないという気がするし、いざとなれば結束してラスボスと戦ってくれるなどと訳の分からない信頼感すら、このボコボコと上下運動する頭の持ち主たちに対して抱いてしまう。
 一度、このダンジョン内に、全くと言っていいほど人がいなかった時があり、その時は、時系列を間違えたかのような戸惑いと不安を覚えた。地下構内って、やっぱり怖い。何か得体の知れないものが、線路の奥の暗闇から出て来そうで。人がいてナンボ。人気がないと怖い。だから、人っ子一人いないよりは、ざくざく人が歩いていた方がいい。
 で、何が言いたいかというと、このビジネス街乗り継ぎルートでは、この異様な空間を通らないと大阪万博会場に行けないのだよ。通勤通学ラッシュの時間帯は、2~3分間隔で電車が来るにも関わらず、どの電車も満杯で、ホームに下りて人の流れに沿ってゆるゆる歩いていたら、ホーム端の乗り換え口に辿り着く前に次の列車が到着し、沢山の人が吐き出されて行く手を阻む。やっと端に辿り着いて上りエスカレーターに乗れば、何故か毎回、強力な向かい風。そして、流れに乗って、ざっざっざっざ……と次に乗る路線の乗車口まで、アリの大行進。
 この時間帯にこの場所を通過しなければ、大阪万博会場東ゲートに九時までに行くのは無理なのだが、大きなスーツケースを転がしたりベビーカーを押したり小さい子供の手を引いたりしながら、出来ます~?この行進?悪いこと言わん、止めときなはれ。
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