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ダンジョンにて想う
ダンジョンにて想う②ダンジョン探検のススメ
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瑠紅が、このルートで通勤し始めた頃は、乗換駅のホームは、身動きも取れないくらい人で溢れかえっていた。「古くからあるビジネス街なのに、この狭さは何?」と思ったら、ホームの中央が工事用資材置き場にされていて、それで狭くなっていたらしい。
その駅には、一つのホームを挟み、上り下りと線路が一つずつあるのだが、ホームの中央には、ところどころ上層へ上がる階段がある。つまり人々がホームを行き交うには、その階段の脇の細いスペースを通らないといけないのだが、その幅は、人二人分程。
階段を上りたい人がそこをぞろぞろと歩いているところへ、電車が駅に滑り込んできてドアが開くと、下りてきた人で混雑が増す。なのに、ホームの中央を囲って資材置き場にするなんて正気の沙汰ではない。
大阪万博開催に向けて、駅構内の化粧直しをするための工事用資材置き場だったようだが、危な過ぎん?転落防止柵の開け閉めが出来んぞ――などと思っていたら、ある日、資材置き場がなくなり、混雑が緩和されていた。工事が終わったらしい。でも、どこがどう変わったのか、新参者の瑠紅には分からなかった。
そもそも、通路が狭い、天井が低い、という構造自体は変えられないのだから、焼け石に水的なお金のかけ方しなくても……と思いつつ漫然と日を過ごしていたら、今度は突然、ホームから一階層上がった通路の壁に四角い穴が空き、大阪万博会場がある夢洲行き電車が発着するホームに抜ける通路が出現した。それも二カ所。これ、作っとったんか……。
それにしても、ある日突然、それまで何もなかったところに通路が出現するなんて。まさにダンジョンである。入り口に立って、その中をのぞき込んでみる。幅広のスタイリッシュな階段が続くそこに、人影はない。
興味はあるものの朝から迷子になりたくない瑠紅は、結局、スルー。従来通り、人の流れに沿って通路の左端を歩き、突き当たりの長いエスカレーターに乗って下層階を目指す。
出勤時は、毎朝のルーティン通りに動くのが、鉄則だ。遅刻しないために。それは、誰しも同じこと。つまり、新通路を作っても、そっちに行く人は、そういないということだ。
などと思っていたら、突然、いつものルートが塞がれた。夢洲行き電車のホーム階へと続く長いエスカレーターが全て上り専用になり、そこへ続く通路も左側通行から右側通行に変えられ、乗換駅のホームから上がってきた人々は通路の右側に寄り、その壁沿いにある新通路を使うことを強いられるようになった。
いや、しかし、これが無理なんよ。構造上、左側通行が根付いているし、それが安全なんよ。階段上がったら、向こうから人がザクザク歩いて来ているなんて、怖いよ。正面衝突するよ。しかも、その途切れることのない人波の間を縫って向こう側に行くなんて、至難の業よ。危ないよ。
などと思うものの、係の人に「右にお進み下さい~」と言われれば、そうせざるを得ない。新通路は、確かに、夢洲行き電車のホーム階へ抜けることができる。幅も広い。でも、階段だから、バリアフリーではない。
大阪万博が終わるまでは仕方ないかと諦めていたら、指摘があったのだろう、ある朝から、突然、左に進むことになった。既成の地下通路を利用したチートルートが、左側に用意されたのだ。
このルートは、左手の自動改札機横の専用レーンを抜け、駅改札外の構内通路を通って、別の改札口に移動し、そこから入るというもの。夢洲行き電車のホーム階の中程へ行ける。乗車券の提示は求められない。不安にはなるが、係員の指示に従えば迷うことはない。少し距離はあるけれど。そして、なんと、このルート、怖々歩けばダンジョンを探検している気分になれる。それは、得がたい経験と言っていいのではないだろうか?
この万博に行くための乗換駅は、本当にダンジョン。混雑はするけれど、話の種に歩いてみるのもいいだろう。 一度で懲りるとは思うけれど。
その駅には、一つのホームを挟み、上り下りと線路が一つずつあるのだが、ホームの中央には、ところどころ上層へ上がる階段がある。つまり人々がホームを行き交うには、その階段の脇の細いスペースを通らないといけないのだが、その幅は、人二人分程。
階段を上りたい人がそこをぞろぞろと歩いているところへ、電車が駅に滑り込んできてドアが開くと、下りてきた人で混雑が増す。なのに、ホームの中央を囲って資材置き場にするなんて正気の沙汰ではない。
大阪万博開催に向けて、駅構内の化粧直しをするための工事用資材置き場だったようだが、危な過ぎん?転落防止柵の開け閉めが出来んぞ――などと思っていたら、ある日、資材置き場がなくなり、混雑が緩和されていた。工事が終わったらしい。でも、どこがどう変わったのか、新参者の瑠紅には分からなかった。
そもそも、通路が狭い、天井が低い、という構造自体は変えられないのだから、焼け石に水的なお金のかけ方しなくても……と思いつつ漫然と日を過ごしていたら、今度は突然、ホームから一階層上がった通路の壁に四角い穴が空き、大阪万博会場がある夢洲行き電車が発着するホームに抜ける通路が出現した。それも二カ所。これ、作っとったんか……。
それにしても、ある日突然、それまで何もなかったところに通路が出現するなんて。まさにダンジョンである。入り口に立って、その中をのぞき込んでみる。幅広のスタイリッシュな階段が続くそこに、人影はない。
興味はあるものの朝から迷子になりたくない瑠紅は、結局、スルー。従来通り、人の流れに沿って通路の左端を歩き、突き当たりの長いエスカレーターに乗って下層階を目指す。
出勤時は、毎朝のルーティン通りに動くのが、鉄則だ。遅刻しないために。それは、誰しも同じこと。つまり、新通路を作っても、そっちに行く人は、そういないということだ。
などと思っていたら、突然、いつものルートが塞がれた。夢洲行き電車のホーム階へと続く長いエスカレーターが全て上り専用になり、そこへ続く通路も左側通行から右側通行に変えられ、乗換駅のホームから上がってきた人々は通路の右側に寄り、その壁沿いにある新通路を使うことを強いられるようになった。
いや、しかし、これが無理なんよ。構造上、左側通行が根付いているし、それが安全なんよ。階段上がったら、向こうから人がザクザク歩いて来ているなんて、怖いよ。正面衝突するよ。しかも、その途切れることのない人波の間を縫って向こう側に行くなんて、至難の業よ。危ないよ。
などと思うものの、係の人に「右にお進み下さい~」と言われれば、そうせざるを得ない。新通路は、確かに、夢洲行き電車のホーム階へ抜けることができる。幅も広い。でも、階段だから、バリアフリーではない。
大阪万博が終わるまでは仕方ないかと諦めていたら、指摘があったのだろう、ある朝から、突然、左に進むことになった。既成の地下通路を利用したチートルートが、左側に用意されたのだ。
このルートは、左手の自動改札機横の専用レーンを抜け、駅改札外の構内通路を通って、別の改札口に移動し、そこから入るというもの。夢洲行き電車のホーム階の中程へ行ける。乗車券の提示は求められない。不安にはなるが、係員の指示に従えば迷うことはない。少し距離はあるけれど。そして、なんと、このルート、怖々歩けばダンジョンを探検している気分になれる。それは、得がたい経験と言っていいのではないだろうか?
この万博に行くための乗換駅は、本当にダンジョン。混雑はするけれど、話の種に歩いてみるのもいいだろう。 一度で懲りるとは思うけれど。
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