明晰夢〜めいせきむ〜

夏目すず子

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第四章 真実

明晰夢〜めいせきむ〜

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「弥彦…私何かおかしいんだよね…私だけ時間止まっちゃってるみたいで何だか怖いよ…弥彦…」
「そうか…気付いてしまったんだね」
「気付いてってどういう意味!?」
「違和感を感じたんだろ?」
「そう違和感…弥彦と出会ってから私弥彦以外の人1人も見てないの!誰とも話してないし、買い物してないのに無くなったはずの食材まだ残ってる!お腹もすかないし何も飲んでないし…カレンダーだって去年のがまだ壁に掛かったまんまだし…それに今日が何日で日にちどころか何月かもわかんなくなってきて…」
「落ち着いて…落ち着いて僕の話を聞いて欲しいんだ、君はもう現実の世界には存在しない人なんだ…つまり君は一年前君の会社が倒産した日、僕の正体を知った日に亡くなっている…僕のせいで…」
「私が死んでる…?!まさか!だって小説だって毎日書いて更新して昨日の夜も」
「君がこの状態に違和感を感じなければ、まだ君は小説を書き更新していただろうね、ただしそれは架空の出来事で実際には君の書いた小説はネットに載る事はないんだ、幽霊が書いてるんだから当たり前の事なんだけど、君がおかしいと思った瞬間使えていたパソコンは使えなくなった」
「そんな…じゃあ夢は?!夢は私の小説に反映されるんじゃ…」
「君の小説に反映している訳じゃなかったんだ、本当は君の未来、君の生まれ変わりを予知する能力を与えた。君が次どんな人物になってどんな人に出会うか、それを見せてあげたかった」
「私が死んだのが弥彦のせいってどういう意味?」
「君は死ぬ前に僕と言葉を交わした。覚えているだろう?君は僕の事を神主だと勘違いしていたみたいだったけど、僕は今までにも神社を訪れる人の子に話しかけてみた、でも僕の問いかけに答えてくれたのは君だけだった…又君に会いたいと願った。その願いが君に届き君は此処に来ようとして、その行き道で事故にあって死んでしまったんだ、僕が会いたいと願わなければ君はあの日此処に来る事はなかったのに…」
「あの時の車にひかれてた…!?」
「君が此処に来たとき以前会った時と気配が変わっている事に気付いた僕は神社に続く道を見に下まで下りた、そこで見たのは道に倒れている君だった…君の体から魂が出てきて僕に会いにきていた。君は自分が死んだ事に気づかないまま1年が過ぎてしまったんだ」
「どうして黙ってたの?私が死んでる事」
「君と話をしていたかった…出来ればずっと君がこのままでいてくれたらと」
「弥彦…」
「でも君はきっと気付く、そう思った僕はせめてもの償いに君の未来、生まれ変わっている君の世界を見せてあげたかったんだ…死というものに恐怖しないように…」
「そうか…そうなんだ…死んでたんだね私…でも不思議だね、生きてる時より今の方がずっと生きてる感じがする…きっと弥彦が居てくれたからだね、ありがと…」
「君の未来はこの先にある…もう行くかい?」
「弥彦は?弥彦は生まれ変わったりしないの?私みたいに…」
「僕は…僕は神様だから…どうだろうね…」
「弥彦と一緒に居たいって言ったら居てもいい?」
「それは駄目だよ、君は人の子だから…人の子はずっと魂だけの姿でいると悪い物の怪に変わってしまう、そういうものなんだよ、だから君はここに居ちゃ駄目だ」
「弥彦…又一人ぼっちになっちゃう…私も…」
「もしも…僕が生まれ変わる事が出来たらきっと君を見つける」
「ほんとに?ほんとに私だってわかる?弥彦生まれ変われる?私の事見つけてくれる?」
「生まれ変わって必ず君を見つけるよ、約束する…だからその時は僕の前から居なくならないで…僕の側にいて欲しい…これは僕の願いだ」
「わかったよ…弥彦…約束だね」
私の体は段々足元から透けて月の光に溶け込むように消えて行った。私は最後に弥彦と口づけをかわした。私の体が全部消えてなくなるまでずっと…

弥彦の唇にはいつまでもその感触が残っていた。この時初めて弥彦の心にも人の子と同じ愛おしいと思う気持ちが芽生えている事に気付いたのだった。それは涙という形になって頬をつたうのだった。

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