35 / 128
第一章
31
しおりを挟む
収穫祭が終わると冬支度が始まり、村は以前のような長閑さを取り戻しつつあった。
アランも、祭での事はまるでなかったかのように、これまでどおり接していた。
いつものように朝起きてみんなと食事をして、掃除と洗濯が終わったら子ども達と勉強をする。それから、教会で村の人たちの話し相手になったり子どもたちと遊んだりして、夜は礼拝堂でピアノを弾きながらルークと過ごす。
そんな穏やかな毎日を過ごしているうちに季節は巡り、僕がこの世界に来て2年が経とうとしていた。
「ユイとはもう随分長い間、一緒にいる気がする」
僕を後ろから抱き込むような体勢で、ソファに座っていたルークがぽつりと呟いた。
「僕にはこの2年間がすごく早く感じたよ。初めは戸惑ったけど、こんなに穏やかな時間を過ごすことができるなんて、思ってもみなかった」
僕は背中を預けるようにルークにもたれかかって、彼の首筋に頭を擦り寄せた。
もうすぐ18歳になるルークは僕の身長をゆうに追い越し、身体も逞しくなって今では魔法を使わなくても僕を抱きかかえられるほど力が強くなっていた。
「ユイが幸せに過ごせたなら、それだけで嬉しい」
僕を抱きしめる腕に力が入り、目が合うと示し合わせたように互いの唇を重ねた。
<秘密基地>のことを教えてもらったあの日以来、ルークと二人で過ごす時間が格段に増えた。
「……はぁ、早く誕生日が来ればいいのに…」
「あと半年くらいでしょ?」
ここで想いを伝え合ったあと、僕はルークとある約束をした。
ルークがそう漏らすのは、僕との約束をちゃんと守ろうとしてくれているからだ。
僕らがその約束をしたのは、そういう雰囲気になった時のことだった。
僕がルークを押し倒すように覆い被さって深く口づけると、彼の手が腰からお尻へ這うように伸びてきた。そのとき、僕はハッとして唇を離した。
『ねぇ…っ、ルークっ。1つお願いが、あるんだけど……』
『んっ?何?心配しなくても、ユイにつらくないようにするよ?』
『それはっ、嬉しいけどそうじゃなくて!その……、僕…に挿れるの、君が18歳になるまで待ってほしんだっ』
『………………なんで?』
ルークが目を見開いて一瞬固まり、一呼吸おいて彼は理由を尋ねてきた。
『ほらっ、僕って教会に仕えている身だし、…君も孤児院で生活してるじゃない?』
『………それがなにか?』
『だから…、もし僕とルークがそういう関係になったってことが知られて、教会に対して悪いイメージがつくことになったら……』
身寄りもなく、行く当てもない転移者である僕を、温かく迎えてくれた司祭様と院長に迷惑をかけたくない。それに、ルークが成人して孤児院を出た後なら、僕たちの関係に誰も口出しできないだろう。
そんな僕の思いを汲み取ってくれたのか、ルークは大きな溜息をつきながらも了承してくれた。
『分かった、ユイの頼みなら仕方ない。──なら、俺からも1ついい?』
『何?』
『ユイのここをならすの、俺にさせて?』
ルークが僕のお尻の谷間に沿ってゆっくり指を這わせながら、妖しい笑みを浮かべて言った。
『………っっ!!』
『大丈夫。ちゃんとナカでイけるように、じっくり優しく開いていくから……』
『──っ、…わかった。約束ね』
そういうワケで、ルークとは互いに触れ合うものの、まだ身体を繋げていない。僕がそうしてもらったように、僕も未成年であるルークを大切にしたかったからだ。
とはいえ、ルークも十代後半の多感なお年頃だ。そんな彼に、最後までシないという苦行を強いるからには、僕も彼の望みを受け入れるべきだろう。正直、ルークにお尻を弄られるのは、ものすごく恥ずかしいけど……。
でも、気持ちが昂ぶりすぎて、一度だけ礼拝堂でられそうになった時もあった。その時は、何とか理性を働かせて寸前で止められたが、心臓が爆発するかと思うくらいドキドキした。
「でも俺の前に、まずはユイの誕生日だね」
ルークの声が、僕の思考を中断させた。
「…うん。自分がもう20歳だなんて、信じられない」
この世界は、僕が元いた世界の時間の流れと同じように感じるけど、本当にそうなのかは実際のところ分からない。だから僕の誕生日は、この世界に転移してきた日と司祭様と院長が定めてくれた。
「今年のプレゼント、もうすぐ出来上がるから楽しみにしてて」
「うん。ありがとう、ルーク」
この世界に来て一度目の誕生日に、ルークは自作のマジックバッグをプレゼントしてくれた。既存のウエストバッグに、空間魔法と入れる物の時を止める時空魔法が付与されたものだ。僕の部屋ほどの容量があり、おまけに僕以外には開けられない盗難防止の魔法もかけてくれている。
大層な贈り物に尻込みしたけど、ルークは「今あげられるものはこれしかない」と言って、悲しそうな顔をしていた。だから、ありがたく受け取ることにした。
「錬金術師からのプレゼントなんて、本当に贅沢だね」
「まだ見習いだよ」
錬金術師といえば魔法薬を生成したり、色々な物質を組み合わせて新たな物質を創り出すような研究者のイメージが強い。でもこの世界では、魔法具を作ったり、既存の道具に魔法効果を付与することも錬金術師が行うらしい。
「僕から見たら、あれだけの物をつくれる人は、もう立派な錬金術師だよ」
「いつか自分の工房を持って、ユイを養えるようになるね」
「…………うん…?」
なんか今…、さらっとプロポーズみたいなことを言われた気が……。
結局その時は、ソファに押し倒されるように唇を塞がれてしまって、ルークの真意を確かめることができなかった。
アランも、祭での事はまるでなかったかのように、これまでどおり接していた。
いつものように朝起きてみんなと食事をして、掃除と洗濯が終わったら子ども達と勉強をする。それから、教会で村の人たちの話し相手になったり子どもたちと遊んだりして、夜は礼拝堂でピアノを弾きながらルークと過ごす。
そんな穏やかな毎日を過ごしているうちに季節は巡り、僕がこの世界に来て2年が経とうとしていた。
「ユイとはもう随分長い間、一緒にいる気がする」
僕を後ろから抱き込むような体勢で、ソファに座っていたルークがぽつりと呟いた。
「僕にはこの2年間がすごく早く感じたよ。初めは戸惑ったけど、こんなに穏やかな時間を過ごすことができるなんて、思ってもみなかった」
僕は背中を預けるようにルークにもたれかかって、彼の首筋に頭を擦り寄せた。
もうすぐ18歳になるルークは僕の身長をゆうに追い越し、身体も逞しくなって今では魔法を使わなくても僕を抱きかかえられるほど力が強くなっていた。
「ユイが幸せに過ごせたなら、それだけで嬉しい」
僕を抱きしめる腕に力が入り、目が合うと示し合わせたように互いの唇を重ねた。
<秘密基地>のことを教えてもらったあの日以来、ルークと二人で過ごす時間が格段に増えた。
「……はぁ、早く誕生日が来ればいいのに…」
「あと半年くらいでしょ?」
ここで想いを伝え合ったあと、僕はルークとある約束をした。
ルークがそう漏らすのは、僕との約束をちゃんと守ろうとしてくれているからだ。
僕らがその約束をしたのは、そういう雰囲気になった時のことだった。
僕がルークを押し倒すように覆い被さって深く口づけると、彼の手が腰からお尻へ這うように伸びてきた。そのとき、僕はハッとして唇を離した。
『ねぇ…っ、ルークっ。1つお願いが、あるんだけど……』
『んっ?何?心配しなくても、ユイにつらくないようにするよ?』
『それはっ、嬉しいけどそうじゃなくて!その……、僕…に挿れるの、君が18歳になるまで待ってほしんだっ』
『………………なんで?』
ルークが目を見開いて一瞬固まり、一呼吸おいて彼は理由を尋ねてきた。
『ほらっ、僕って教会に仕えている身だし、…君も孤児院で生活してるじゃない?』
『………それがなにか?』
『だから…、もし僕とルークがそういう関係になったってことが知られて、教会に対して悪いイメージがつくことになったら……』
身寄りもなく、行く当てもない転移者である僕を、温かく迎えてくれた司祭様と院長に迷惑をかけたくない。それに、ルークが成人して孤児院を出た後なら、僕たちの関係に誰も口出しできないだろう。
そんな僕の思いを汲み取ってくれたのか、ルークは大きな溜息をつきながらも了承してくれた。
『分かった、ユイの頼みなら仕方ない。──なら、俺からも1ついい?』
『何?』
『ユイのここをならすの、俺にさせて?』
ルークが僕のお尻の谷間に沿ってゆっくり指を這わせながら、妖しい笑みを浮かべて言った。
『………っっ!!』
『大丈夫。ちゃんとナカでイけるように、じっくり優しく開いていくから……』
『──っ、…わかった。約束ね』
そういうワケで、ルークとは互いに触れ合うものの、まだ身体を繋げていない。僕がそうしてもらったように、僕も未成年であるルークを大切にしたかったからだ。
とはいえ、ルークも十代後半の多感なお年頃だ。そんな彼に、最後までシないという苦行を強いるからには、僕も彼の望みを受け入れるべきだろう。正直、ルークにお尻を弄られるのは、ものすごく恥ずかしいけど……。
でも、気持ちが昂ぶりすぎて、一度だけ礼拝堂でられそうになった時もあった。その時は、何とか理性を働かせて寸前で止められたが、心臓が爆発するかと思うくらいドキドキした。
「でも俺の前に、まずはユイの誕生日だね」
ルークの声が、僕の思考を中断させた。
「…うん。自分がもう20歳だなんて、信じられない」
この世界は、僕が元いた世界の時間の流れと同じように感じるけど、本当にそうなのかは実際のところ分からない。だから僕の誕生日は、この世界に転移してきた日と司祭様と院長が定めてくれた。
「今年のプレゼント、もうすぐ出来上がるから楽しみにしてて」
「うん。ありがとう、ルーク」
この世界に来て一度目の誕生日に、ルークは自作のマジックバッグをプレゼントしてくれた。既存のウエストバッグに、空間魔法と入れる物の時を止める時空魔法が付与されたものだ。僕の部屋ほどの容量があり、おまけに僕以外には開けられない盗難防止の魔法もかけてくれている。
大層な贈り物に尻込みしたけど、ルークは「今あげられるものはこれしかない」と言って、悲しそうな顔をしていた。だから、ありがたく受け取ることにした。
「錬金術師からのプレゼントなんて、本当に贅沢だね」
「まだ見習いだよ」
錬金術師といえば魔法薬を生成したり、色々な物質を組み合わせて新たな物質を創り出すような研究者のイメージが強い。でもこの世界では、魔法具を作ったり、既存の道具に魔法効果を付与することも錬金術師が行うらしい。
「僕から見たら、あれだけの物をつくれる人は、もう立派な錬金術師だよ」
「いつか自分の工房を持って、ユイを養えるようになるね」
「…………うん…?」
なんか今…、さらっとプロポーズみたいなことを言われた気が……。
結局その時は、ソファに押し倒されるように唇を塞がれてしまって、ルークの真意を確かめることができなかった。
34
あなたにおすすめの小説
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる