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第一章
33 -ルークside- ⑩
しおりを挟む一度覚えてしまった快楽は、まるで依存性の高いクスリのようだ。思考が支配されて他のことが手につかなくり、ひたすらそれを渇望してしまう。
そばにいられるだけでも充分幸せなのに、人の欲というものには本当に際限がない。いくら毎晩、礼拝堂で二人きりになれるとはいえ、身体の触れ合いが週に一度の数時間だけでは全然足りなかった。
どうにかしてユイとの時間をもっと増やせないものかと考えていた時、ユイの身体に変化を感じた。それはユイに魔力が宿ったことだ。試しに、持った者の魔力で色が変化する魔石を、ユイに持たせてみた。すると、ユイが握った魔石は鮮やかな紫色の光を発した。
「ユイの瞳と同じ色だね」
「信じられない…。僕、魔法が使えるようになるの?」
「うん。俺が教えてあげる」
期せずしてユイとの時間が増え、1日おきに午後の数時間を使い、魔力の操作方法を教えた。ユアンが行った訓練法から少し趣向を変えて、<秘密基地>の近くにある泉で、魔力を操作して水を浮かせる訓練をすることにした。
初めこそ上手くいかなかったが、ユイは楽しそうに取り組んでいた。そして、気晴らしに歌を歌いながら魔力操作をやってみたら、これまでと比べ物にならないほど精度が上がった。
ユイの周囲を舞うように動く様は、まるで水が意思を持っているかのように見えて、つい魅入ってしまった。
「ユイはどこまで俺を夢中にさせるんだろうね」
「それはお互い様だよ?」
泉の畔で休息を取るユイを後ろから抱きしめたら、首元に顔をうずめた俺の頭を優しく撫でながらユイが返した。そして、触れるだけのキスをすると、ユイは嬉しそうに笑っていた。
そうして穏やかな日々が続き、ユイがこの世界に来て瞬く間に2年が過ぎた。
魔力操作を覚えたユイは、そのあと徐々に生活魔法も使えるようになり、今ではすっかりこの世界の住人だ。
「自分がもう20歳だなんて、信じられない」
ユイの誕生日を間近に控えたある日の午後、<秘密基地>で二人で過ごしているとき、ユイが言葉を漏らした。
異世界から来たユイにはこの世界での誕生日がなく、初めて出会ったあの日が誕生日になった。去年は何を贈ろうかあれこれ考えているうちに時間がなくなってしまって、既存のバッグに魔法を付与しただけのマジックバッグをプレゼントした。あまり褒められた出来ではなかったが、実用性が高いという点がよかったのか、ユイは喜んでくれた。
「今年のプレゼント、もうすぐ出来上がるから楽しみにしてて」
去年の反省を踏まえて、今年はしっかり準備をした。時間をかけて素材を見つけ、手持ちの素材と少しずつ錬成を重ねていった。それを加工して物の原型を作り、嵌め込む魔石や宝石に魔法を付与した。あとは、装飾模様を彫るだけだ。
「錬金術師からのプレゼントなんて、本当に贅沢だね」
「まだ見習いだよ」
「僕から見たら、あれだけの物をつくれる人は、もう立派な錬金術師だよ」
後ろから抱き寄せていたユイが振り返って、目をキラキラさせながら力強く言った。純粋にすごいと思ってくれているようで、何だかくすぐったい。
俺が一人前になった時も、ユイは変わらずそばにいてくれるだろうか?
いや───、
「いつか自分の工房を持って、ユイを養えるようになるね」
「…………うん…?」
俺の言葉の真意を理解していないように、ユイは微笑みながら曖昧に返事をした。小首を傾げる仕草が愛らしくて、逃げられないように腰に手を回して腕の中に閉じ込めた。そして、夜明け色の瞳を覗き込みながら、柔らかい唇をそっと塞いだ。
───絶対、離さないから。
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