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芦田智子
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◇
私こと芦田智子は加奈子ちゃんと友達だ。
私はずっと加奈ちゃんを見ていた。時々話しかけたりしたけど、加奈ちゃんは私のことはあんまり意識していなかった。
でも、今日、やっと友達になれた。
「智子」って下の名前で呼んでもらえた。けれど、私は気づかないふりをした。
少し、恥かしかったから。
加奈ちゃんは時々昼休みに音楽室に行ってピアノを弾いていた。
私は楽器なんて笛とハーモニカくらいしか吹けないからすごく羨ましかった。
私は加奈ちゃんと友達になりたいのと同時に、加奈ちゃんに憧れてもいるファンの一人だ。加奈ちゃんは四年生の頃から香山さんという綺麗な女の子を目標にしているみたいだ けど、あまり相手にされていないのが私にはわかった。
香山さんは私たちを見ていない。もっと遠くを見ている。
五年生になると香山さんと私たちは違うクラスになった。五年生になってからの加奈ちゃんは教室でいつも一人きりで寂びしそうに見えた。
香山さんという目標と離れてしまったせいだろうか?
家が遠いせいだろうか?
加奈ちゃんはきっと無理して生きてる、と私は感じた。
私は学校の成績は悪いけど、そういうのはすぐにわかる。
それに音楽室にこもってピアノを弾く回数も最近増えた。
だから、私が友達になって、仲良くなって加奈ちゃんの力になってあげると決めていた。
「智子、自分の顔を鏡で見なって、石谷さんと仲良くしても自分が損するだけだよ」
きっと周りの人はそう言うだろう。
みんな、私の顔で判断してそう言うに決まってる。
ブスだと加奈ちゃんと友達になってはいけないの?そんなことないよね。
昔、近所の男の子たちに「智子のブス」とよく言われた。
私が四年生の時も「お母さん、香山さんみたいなお洋服買って」とお母さんにおねだりしたら「あなたみたいな子に似合うわけないでしょう」一言で返された。
あなたみたいな子ってどういう意味?
自分の娘なのに、お母さんまで私をブスだと言いたいのかな?
私は鏡を見る。こうやって近くで見ていると、目も程よく大きいし、口だって小さい。
「邪魔だ、そこ、のけよ。ブス」
家の中で鏡を見ているとお兄ちゃんが通りすがりに言う。
私、そんなにブスじゃないよ。
「それ、私のこと?」と私はお兄ちゃんに訊く。
「聞こえねえのか。お前しかいねえじゃねえかよ、ブス!」
又、私のことをブスと言った。
ブスと言う方がブスなんだ。私はいつも心の中で言い返す。
「智子はブスじゃないよ」
加奈ちゃんはまるで私の考えていることがわかるように言ってくれた。
私がブスじゃないとはっきり言ってくれたのは加奈ちゃんだけだ。
だから私は加奈ちゃんに何があってもついていく。
香山さんを目標にしている加奈ちゃんについていきます。
二人一緒ならこの世に怖いものなんて何一つないんだ。
でも、私には一つ心配事がある。
私たちの隣のクラスには長田さんというお嬢さんがいる。
加奈ちゃんは長田さんのことをすごく意識しているようだ。
同じようにピアノを習っているからだろうか?
長田さんは香山さんと雰囲気が違って冷たい感じがする。
四年生の時、長田さんは私たちに挨拶のしるしのように押し花を配った。
あまりいい感じはしなかった。
押し花は「私の配下になりなさい」という意味らしかった。
なんだ、物で釣るのか、と思い更に嫌な感じを抱いた。
「これ頂くの、少し、考えさせてください」と私は言った。
お父さんから「何かを判断する時にはそう答えなさい」といつも言われている。
相手にされなかったけど、私は長田さんより香山さんのような人が好きだった。
どことなく孤独な感じがして格好いい。目標にするのなら絶対香山さんがよかった。
別に金持ちだからとかそんなことは関係ない。
でもそう上手くいかないのが世の中だ。
少し前に長田さんの母親と長田さん本人がお店に来て和菓子を大量注文したことがある。
「こちらの大福、二百個ほど頂けるかしら?」
お父さんは「時間がかかるので自宅に配達します」と丁寧に受けていた。
二百個の大福・・どうするんだろう?
けれど、お父さんもお母さんも大喜びだった。
私の家は銭湯の横で「芦田堂」という名前の和菓子屋さんを営んでいる。もう何十年も続く老舗店なのだと、お父さんはよく町の人に自慢している。
だから、私にはわかる。長田さんの家は商売が上手いのだ。
和菓子店は駅前に行けばもっとたくさん種類の多い店がある。わざわざ、ここで買うのは地元だからだ。
「芦田堂」に恩を売っているのだ。いくら私がバカで、ブスでもそれくらいわかる。
私は和菓子店の娘だ。
長田さんは母親の横で私の方を見て微笑んでいた。
すごく嫌な感じがした。
私こと芦田智子は加奈子ちゃんと友達だ。
私はずっと加奈ちゃんを見ていた。時々話しかけたりしたけど、加奈ちゃんは私のことはあんまり意識していなかった。
でも、今日、やっと友達になれた。
「智子」って下の名前で呼んでもらえた。けれど、私は気づかないふりをした。
少し、恥かしかったから。
加奈ちゃんは時々昼休みに音楽室に行ってピアノを弾いていた。
私は楽器なんて笛とハーモニカくらいしか吹けないからすごく羨ましかった。
私は加奈ちゃんと友達になりたいのと同時に、加奈ちゃんに憧れてもいるファンの一人だ。加奈ちゃんは四年生の頃から香山さんという綺麗な女の子を目標にしているみたいだ けど、あまり相手にされていないのが私にはわかった。
香山さんは私たちを見ていない。もっと遠くを見ている。
五年生になると香山さんと私たちは違うクラスになった。五年生になってからの加奈ちゃんは教室でいつも一人きりで寂びしそうに見えた。
香山さんという目標と離れてしまったせいだろうか?
家が遠いせいだろうか?
加奈ちゃんはきっと無理して生きてる、と私は感じた。
私は学校の成績は悪いけど、そういうのはすぐにわかる。
それに音楽室にこもってピアノを弾く回数も最近増えた。
だから、私が友達になって、仲良くなって加奈ちゃんの力になってあげると決めていた。
「智子、自分の顔を鏡で見なって、石谷さんと仲良くしても自分が損するだけだよ」
きっと周りの人はそう言うだろう。
みんな、私の顔で判断してそう言うに決まってる。
ブスだと加奈ちゃんと友達になってはいけないの?そんなことないよね。
昔、近所の男の子たちに「智子のブス」とよく言われた。
私が四年生の時も「お母さん、香山さんみたいなお洋服買って」とお母さんにおねだりしたら「あなたみたいな子に似合うわけないでしょう」一言で返された。
あなたみたいな子ってどういう意味?
自分の娘なのに、お母さんまで私をブスだと言いたいのかな?
私は鏡を見る。こうやって近くで見ていると、目も程よく大きいし、口だって小さい。
「邪魔だ、そこ、のけよ。ブス」
家の中で鏡を見ているとお兄ちゃんが通りすがりに言う。
私、そんなにブスじゃないよ。
「それ、私のこと?」と私はお兄ちゃんに訊く。
「聞こえねえのか。お前しかいねえじゃねえかよ、ブス!」
又、私のことをブスと言った。
ブスと言う方がブスなんだ。私はいつも心の中で言い返す。
「智子はブスじゃないよ」
加奈ちゃんはまるで私の考えていることがわかるように言ってくれた。
私がブスじゃないとはっきり言ってくれたのは加奈ちゃんだけだ。
だから私は加奈ちゃんに何があってもついていく。
香山さんを目標にしている加奈ちゃんについていきます。
二人一緒ならこの世に怖いものなんて何一つないんだ。
でも、私には一つ心配事がある。
私たちの隣のクラスには長田さんというお嬢さんがいる。
加奈ちゃんは長田さんのことをすごく意識しているようだ。
同じようにピアノを習っているからだろうか?
長田さんは香山さんと雰囲気が違って冷たい感じがする。
四年生の時、長田さんは私たちに挨拶のしるしのように押し花を配った。
あまりいい感じはしなかった。
押し花は「私の配下になりなさい」という意味らしかった。
なんだ、物で釣るのか、と思い更に嫌な感じを抱いた。
「これ頂くの、少し、考えさせてください」と私は言った。
お父さんから「何かを判断する時にはそう答えなさい」といつも言われている。
相手にされなかったけど、私は長田さんより香山さんのような人が好きだった。
どことなく孤独な感じがして格好いい。目標にするのなら絶対香山さんがよかった。
別に金持ちだからとかそんなことは関係ない。
でもそう上手くいかないのが世の中だ。
少し前に長田さんの母親と長田さん本人がお店に来て和菓子を大量注文したことがある。
「こちらの大福、二百個ほど頂けるかしら?」
お父さんは「時間がかかるので自宅に配達します」と丁寧に受けていた。
二百個の大福・・どうするんだろう?
けれど、お父さんもお母さんも大喜びだった。
私の家は銭湯の横で「芦田堂」という名前の和菓子屋さんを営んでいる。もう何十年も続く老舗店なのだと、お父さんはよく町の人に自慢している。
だから、私にはわかる。長田さんの家は商売が上手いのだ。
和菓子店は駅前に行けばもっとたくさん種類の多い店がある。わざわざ、ここで買うのは地元だからだ。
「芦田堂」に恩を売っているのだ。いくら私がバカで、ブスでもそれくらいわかる。
私は和菓子店の娘だ。
長田さんは母親の横で私の方を見て微笑んでいた。
すごく嫌な感じがした。
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