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お別れ
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◇
あれから「芦田堂」に遊びに行って智子のお父さんが私のために作ってくれた大福を食べた。
お腹一杯になって、しばらく私はお店の中で動けなくなってしまった、
お茶を飲んでくつろぎはじめると、智子のお母さんは奥から智子の小さかった頃のアルバムを出してきて見せてくれた。
智子が「お母さん、恥ずかしいから、加奈ちゃんに見せるのやめてよお」と言っていたけど、お母さんが「お友達なんだから、見せてもいいじゃないの」と言うと智子は「そうだね」と言ってアルバムの頁をめくった。
生まれた時の智子、歩き始めた智子、幼稚園に入学してお父さん、お母さんと一緒に映っている智子。カメラの前でかしこまっているのが可愛らしい。
他にも「芦田堂」の前で撮っていたり、ピクニックでお握りを頬張っている写真や、こけたのかな?・・泣いている智子がいた。
お母さんが智子、その時、こけたのよ、と説明した。
智子、小さい時からよくこけていたんだ。
私は少し落ち着くと長田さんのことを話し始めた。
智子は最初はビックリしていたけれど、なぜか長田さんのことはよくわかるようだった。
智子はうん、うんと頷いて私の長い話、そして私のお願いを聞いてくれた。
「加奈ちゃんのお願い、私が聞かないわけがないじゃない」
智子は話の終わりにそう返事をした。
私と智子にとっては一緒に過ごせる最後の日曜日だった。
遊園地に行って歩きながらお菓子やソフトクリームを食べたりした。
そして、夢にまで見たジェットコースターに乗った。
私は最初イヤだって言ったけど智子に無理やり乗せられた。
でも怖くなかった。きっと智子と一緒だからだ。それにすごく楽しい。
私は怖くはなかったけれど智子は横で目を瞑っていた。
降りた後、智子をからかってやった。
「今度は大丈夫だよお」と強がるのでまた乗った。けれど、次も目を瞑っていた。
「やっぱり怖いのはダメだよお」
智子は荒い息を吐きながら泣きそうな顔で私の顔を妬ましそうに見た。
「加奈ちゃん、そっち行っていい?」
観覧車の中で最初は向かい合わせに座っていたけれど、智子はそう言って私の横に来た。
「加奈ちゃん、もう日が暮れそうだね」
智子は寂しそうにしながら夕暮れを眺めている。
こんな所にきたらよけいに寂しくなる。
けれど、こんな所に来なければよかった、とそう思うことは絶対にない。
「私、昔っから暗い性格だったけど、智子に出会えて少し明るくなれたんだよ」
智子の顔を見ずに夕陽を見ながら言う。智子の顔を見たら泣いてしまいそうだった。
「加奈ちゃんがいなくなったら、私、ダメかもしれない」
智子も前を見ながら話していた。
けれど洟を啜る音がしたので横を見ると智子は泣いていた。
「智子はきっと大丈夫だよ」
私は智子の頬の涙を拭ってあげた。
「私、智子は誰かを幸せにするために生まれてきたんだって思うの」
少なくとも私は幸せになった・・そして智子は私以外の子も幸せにできる、と思っていた。
「そんなことないよ。私の方こそ加奈ちゃんといれて幸せだったよ」
観覧車が一番上にまで来た。あとは降りていくだけだ。
「ごめんね、智子、長田さんの友達になってあげてって変なお願いをして」
智子は首を横に振った。
「ちっとも変なお願いじゃないよ」
「でも、私の勝手なお願いだし」
不思議だ。智子はこんな願いを何も言わずに聞いてくれた。
「なんだか、私、そんな気がしてたの」
「智子の感なの?」
「小さい時、お父さんが言っていたの、智子は明るい子だから、いっぱい人を幸せにできるって」
本当にいいお父さんだ。智子はいろんなことを教えてもらっている。
子供に親は必要なんだ。けれど、今、長田さんにはそんな親もいなければ友達もいない。
「智子ならきっと長田さんの友達になってあげられる」
どうして、そう確信をもてるのだろうか?
「えへへ、すごく大変そうだね」
すごく大変だけろうけど、智子ならきっと長田さんの話し相手になってあげられる。
「だけど、私、頑張るよ」
智子は涙を拭うと笑顔を浮かべた。
「智子、私、大人になったら、必ずこの町に帰ってくる」
何年後かわからないけれど私が一人立ちできるようになったら、この町に帰ってこよう。
「加奈ちゃん、その時は有名なピアニストだね」
智子は丸い顔に微笑みを浮かべた。
日が沈み、観覧車が着くと係りの人の手が私たちの方に差し出された。
そして、智子との楽しかった小学五年生の日々は終わった。
◇
「絶対に仲良くなってよね」
また駅前の喫茶店に私は来た。
今度は向かいに長田さんが座っていた。遠野さんが同席している。
「友達って、はじめてだからよくわからないと思うけど、もし困ったことがあったら電話ちょうだい」
友達がはじめて、って、私すごく失礼なことを言っているけど、長田さんは否定していない。
「これ、私の仙台の家の電話番号、持っててよ、失くしたらダメだからね」
紙に書いたメモを長田さんに渡した。長田さんは少し見た後、大事そうに折り畳みカバンの中にしまった。
「智子を泣かしたら承知しないわよ」
何も返事が返ってこない。大丈夫かな?こんなのでちゃんと智子の相手ができるのかな?
承知しない、とか失礼なことを言っているから怒っているのかな?
「私の一番、大事な人を、あなたに預けていくんだから」
返事がなくてもいい。言いたいだけ言っておこう。
「長田さん、最後にあなたにお願いがあるの」
これは智子への最後のプレゼントだ。
長田さんが本当に智子と友達になれるのなら、長田さんも私の友達みたいなものだ。
長田さんが智子の友達になったら、その時、長田さんは私のお願いを聞いてくれるだろう。
お願いを言ったあと、長田さんは「わかったわ」と静かに返事をした。
店を出る時、遠野さんが何度も「ありがとうございます」と繰り返した。
私は次の日曜日、仙台に向かった。
あれから「芦田堂」に遊びに行って智子のお父さんが私のために作ってくれた大福を食べた。
お腹一杯になって、しばらく私はお店の中で動けなくなってしまった、
お茶を飲んでくつろぎはじめると、智子のお母さんは奥から智子の小さかった頃のアルバムを出してきて見せてくれた。
智子が「お母さん、恥ずかしいから、加奈ちゃんに見せるのやめてよお」と言っていたけど、お母さんが「お友達なんだから、見せてもいいじゃないの」と言うと智子は「そうだね」と言ってアルバムの頁をめくった。
生まれた時の智子、歩き始めた智子、幼稚園に入学してお父さん、お母さんと一緒に映っている智子。カメラの前でかしこまっているのが可愛らしい。
他にも「芦田堂」の前で撮っていたり、ピクニックでお握りを頬張っている写真や、こけたのかな?・・泣いている智子がいた。
お母さんが智子、その時、こけたのよ、と説明した。
智子、小さい時からよくこけていたんだ。
私は少し落ち着くと長田さんのことを話し始めた。
智子は最初はビックリしていたけれど、なぜか長田さんのことはよくわかるようだった。
智子はうん、うんと頷いて私の長い話、そして私のお願いを聞いてくれた。
「加奈ちゃんのお願い、私が聞かないわけがないじゃない」
智子は話の終わりにそう返事をした。
私と智子にとっては一緒に過ごせる最後の日曜日だった。
遊園地に行って歩きながらお菓子やソフトクリームを食べたりした。
そして、夢にまで見たジェットコースターに乗った。
私は最初イヤだって言ったけど智子に無理やり乗せられた。
でも怖くなかった。きっと智子と一緒だからだ。それにすごく楽しい。
私は怖くはなかったけれど智子は横で目を瞑っていた。
降りた後、智子をからかってやった。
「今度は大丈夫だよお」と強がるのでまた乗った。けれど、次も目を瞑っていた。
「やっぱり怖いのはダメだよお」
智子は荒い息を吐きながら泣きそうな顔で私の顔を妬ましそうに見た。
「加奈ちゃん、そっち行っていい?」
観覧車の中で最初は向かい合わせに座っていたけれど、智子はそう言って私の横に来た。
「加奈ちゃん、もう日が暮れそうだね」
智子は寂しそうにしながら夕暮れを眺めている。
こんな所にきたらよけいに寂しくなる。
けれど、こんな所に来なければよかった、とそう思うことは絶対にない。
「私、昔っから暗い性格だったけど、智子に出会えて少し明るくなれたんだよ」
智子の顔を見ずに夕陽を見ながら言う。智子の顔を見たら泣いてしまいそうだった。
「加奈ちゃんがいなくなったら、私、ダメかもしれない」
智子も前を見ながら話していた。
けれど洟を啜る音がしたので横を見ると智子は泣いていた。
「智子はきっと大丈夫だよ」
私は智子の頬の涙を拭ってあげた。
「私、智子は誰かを幸せにするために生まれてきたんだって思うの」
少なくとも私は幸せになった・・そして智子は私以外の子も幸せにできる、と思っていた。
「そんなことないよ。私の方こそ加奈ちゃんといれて幸せだったよ」
観覧車が一番上にまで来た。あとは降りていくだけだ。
「ごめんね、智子、長田さんの友達になってあげてって変なお願いをして」
智子は首を横に振った。
「ちっとも変なお願いじゃないよ」
「でも、私の勝手なお願いだし」
不思議だ。智子はこんな願いを何も言わずに聞いてくれた。
「なんだか、私、そんな気がしてたの」
「智子の感なの?」
「小さい時、お父さんが言っていたの、智子は明るい子だから、いっぱい人を幸せにできるって」
本当にいいお父さんだ。智子はいろんなことを教えてもらっている。
子供に親は必要なんだ。けれど、今、長田さんにはそんな親もいなければ友達もいない。
「智子ならきっと長田さんの友達になってあげられる」
どうして、そう確信をもてるのだろうか?
「えへへ、すごく大変そうだね」
すごく大変だけろうけど、智子ならきっと長田さんの話し相手になってあげられる。
「だけど、私、頑張るよ」
智子は涙を拭うと笑顔を浮かべた。
「智子、私、大人になったら、必ずこの町に帰ってくる」
何年後かわからないけれど私が一人立ちできるようになったら、この町に帰ってこよう。
「加奈ちゃん、その時は有名なピアニストだね」
智子は丸い顔に微笑みを浮かべた。
日が沈み、観覧車が着くと係りの人の手が私たちの方に差し出された。
そして、智子との楽しかった小学五年生の日々は終わった。
◇
「絶対に仲良くなってよね」
また駅前の喫茶店に私は来た。
今度は向かいに長田さんが座っていた。遠野さんが同席している。
「友達って、はじめてだからよくわからないと思うけど、もし困ったことがあったら電話ちょうだい」
友達がはじめて、って、私すごく失礼なことを言っているけど、長田さんは否定していない。
「これ、私の仙台の家の電話番号、持っててよ、失くしたらダメだからね」
紙に書いたメモを長田さんに渡した。長田さんは少し見た後、大事そうに折り畳みカバンの中にしまった。
「智子を泣かしたら承知しないわよ」
何も返事が返ってこない。大丈夫かな?こんなのでちゃんと智子の相手ができるのかな?
承知しない、とか失礼なことを言っているから怒っているのかな?
「私の一番、大事な人を、あなたに預けていくんだから」
返事がなくてもいい。言いたいだけ言っておこう。
「長田さん、最後にあなたにお願いがあるの」
これは智子への最後のプレゼントだ。
長田さんが本当に智子と友達になれるのなら、長田さんも私の友達みたいなものだ。
長田さんが智子の友達になったら、その時、長田さんは私のお願いを聞いてくれるだろう。
お願いを言ったあと、長田さんは「わかったわ」と静かに返事をした。
店を出る時、遠野さんが何度も「ありがとうございます」と繰り返した。
私は次の日曜日、仙台に向かった。
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