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カメラ
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◆
「勇気いるなあ・・」
「陽ちゃん、どないしたん?」
僕が受話器の前で戸惑っていると案の定、叔母さんが声をかけてきた。
「今から電話をかけるんや」
「ふーん。それで、誰に?」
「クラスの子やけど、すごい金持ちの女の子なんや」
「ああ、運動会の時のダンスの上手い子」
すぐに叔母さんにはわかってしまう。
「叔母さん、ここにおったるから、はよ、かけなさい」
「よけいにかけられへんやん」
「別にええやん。デートの誘いでもないんやろ?」
「デートやったら、どないするんや」
「うーん。たぶん、デートとちゃうと思う」叔母さんは少し考えた後そう答えた。
確かにデートと違うけど。なんかそう言われてしまうと何だかしゃくだ。
「そやけど、陽ちゃんって、ほんま、優しい子やなあ」
「なんでいきなりそんなこと言うんや」
「困ってる子をほっとかれへんのやろ?」
また叔母さんに見抜かれた。
「そんなんとちゃうってっ!」
僕が慌てているのを見るのが叔母さんは楽しいみたいだ。
「今度、叔母さんが困ってたら、陽ちゃん、すぐに気づいて助けてちょうだい」
叔母さんはそう言いながら居間に戻った。
叔母さんがいなくなると僕は急いでダイヤルを回した。
呼び出し音が二回くらいで女の人が出た。
「はい。長田です。どちらさまでしょうか?」
大人の女の人の声だ。落ち着いた声だ。誰だろう?
「あの、長田さんと同じクラスの・・」
そこまで言うと「村上さんですね。少々お待ちください。恭子さまをお呼びいたします」
なんで僕ってわかるんや!
長田さんは僕の電話に呼び出されて高台の公園のベンチに座って僕を待っていた。
金色の髪が高台に吹く風に揺れている。誰がどう見ても美少女だ。
この高台には以前、香山さんと来たことがあったから、場所を知っていた。ここなら静かに話すことができる。
あの時は香山さんに呼び出されてここに来た。今日は僕が長田さんを呼び出した。
人の関係って不思議だ。繋がっていないようで、どこかで繋がっている気がする。
「これなの」長田さんは持ってきたカメラを手提げから出して僕に見せた。
相変わらず言葉が短い。これって直らないのか?
「僕、このカメラ、覚えてるよ」
僕はライカを受け取って触りながら言った。最高級のライカだ。
カメラの使い方を教えるために電話で長田さんにここまで来るように言ったのだ。
「覚えてくれているの?」
「だってこんなすごいカメラ、一回見たら、頭に刻み込まれるやんか」
長田さんは何かを思い出したようにくすりと笑った。
「確か、四年生の時、これに触らしてもらったよな」
「ええ、そうよ」
この公園にいたら香山さんに会いそうだな。会ったら何て言えばいいんだ。でも別に長田さんとデートしてるわけじゃないからかまわないか。それに香山さんにからかわれるのも悪くない気がする。
「カメラの中に一枚だけ、撮ってあるの」
よくわからないけれど長田さんは少し頬を染めて恥ずかしそうにしている。
「いつ撮ったんや?」
「だいぶ前よ」
「あんまり時間が経ったら、色が変わってしまうで」
「そ、そうなの? 大変だわ」
長田さんは慌てたような困ったような顔をした。
「いつや?」
「一年前だけど大丈夫かしら?」
かなり色が変わってしまっているかもしれない。
「何で現像せんかったんや?」
「は、恥ずかしいから」
長田さんは顔を染めた。なんか可愛らしいところもあるんやな。
「何が映ってるか聞いてかまへんか?」
僕が聞くと長田さんは「私の顔」とだけ答えた。
どんな顔だろう?
それから僕はカメラのシャッタースピードや絞り、露出について長田さんに説明した。
うん、うんと長田さんは頷いてちゃんと聞いている。
僕が説明するのなんて、一回だけやぞ、と心で思いながら丁寧に説明する。
「長田さん、少しはわかった?」
「少しだけ」
言葉が短いけど大丈夫かな?「わからなくなったわ」って家に電話がかかってきたりしないよな。
「・・村上くん、今日はありがとう」
なんだか長田さんに言われるとすごく重い言葉のように聞こえるから不思議だ。
長田さんはカメラを手提げにしまい込んで「車を待たせてあるから」と言った。
「長田さん、一つ訊いてかまへんか?」
僕には長田さんの押し花以外に前から気になることがあった。
「何で二学期の委員長に立候補したんや?」長田さんの返事を待つまでもなくそう訊ねた。
長田さんは少し顔を上げた。
「香山さんが、立候補したから」僕の問いかけに長田さんはすぐに答えた。
「私、多数決で勝つなんて思ってもなかったの」
きっとそうだと思っていても僕は確かめておきたかった。
長田さんの行動は全て友達を作るためだった。
おそらく長田さんは副委員長になって香山さんを助ける役割になりたかったのだろう。
そうすれば、たとえ押し花を受け取ってもらえなかった相手でも友達になれるのではと考えた。
そこまでしてどうして香山さんと友達になりたかったのかはわからない。
香山さんの家も自分と同様に金持ちだ。憶測だが長田さんは香山さんも自分と同じような境遇だと考えたのではないだろうか?
香山さんに自分の寂しさを重ね合わせてわかり合える友達になりたかったのではないだろうか?
長田さんは香山さんが委員長に立候補すると、自分も委員長に立候補した。
最初から副委員長に立候補していれば済むだけの話だったけれど、自分が最初から副委員長に名乗り上げれば、押し花を受け取ってくれなかった香山さんなら辞退するのではないか、と考えた。
委員長に名乗り上げ多数決で自分が負けて副委員長になれば辞退しないだろう、と。
そんな気持ちなど、香山さんに、いや、おそらく誰にもわかるはずもない。
長田さんは、多数決になればクラスの生徒は自分に票を入れるはずがない。みんなは香山さんに入れると思っていたのだ。
友達が一人もいない自分に票を入れるはずがない、と。
しかし、長田さんに押し花をもらった女の子はおそらく全員が長田さんに票を入れた。
その結果、多数決で自分が委員長になり、香山さんは副委員長になった。
あの多数決の結果を一番、驚いていたのは長田さん本人だろう。
「村上くん、カメラ、わからないことがあったら、また教えてくれる?」
目の前の美少女にそう言われて断る人がいたら、その人は大バカだろう。
「かまへんよ。いつでも言ってくれたら」僕は迷わずに答えた。
やっぱり、電話はかかってきそうだな。
長田さんと高台の階段を下りて通りまで出ると大きな自動車が待っていた。
長田さんは自動車に乗り込むと窓から手を振って「サヨナラ」と言った。
長田さんは誕生会の僕のプレゼント、思い出したくもないプレゼントのこと、まだ覚えているのだろうか。
「勇気いるなあ・・」
「陽ちゃん、どないしたん?」
僕が受話器の前で戸惑っていると案の定、叔母さんが声をかけてきた。
「今から電話をかけるんや」
「ふーん。それで、誰に?」
「クラスの子やけど、すごい金持ちの女の子なんや」
「ああ、運動会の時のダンスの上手い子」
すぐに叔母さんにはわかってしまう。
「叔母さん、ここにおったるから、はよ、かけなさい」
「よけいにかけられへんやん」
「別にええやん。デートの誘いでもないんやろ?」
「デートやったら、どないするんや」
「うーん。たぶん、デートとちゃうと思う」叔母さんは少し考えた後そう答えた。
確かにデートと違うけど。なんかそう言われてしまうと何だかしゃくだ。
「そやけど、陽ちゃんって、ほんま、優しい子やなあ」
「なんでいきなりそんなこと言うんや」
「困ってる子をほっとかれへんのやろ?」
また叔母さんに見抜かれた。
「そんなんとちゃうってっ!」
僕が慌てているのを見るのが叔母さんは楽しいみたいだ。
「今度、叔母さんが困ってたら、陽ちゃん、すぐに気づいて助けてちょうだい」
叔母さんはそう言いながら居間に戻った。
叔母さんがいなくなると僕は急いでダイヤルを回した。
呼び出し音が二回くらいで女の人が出た。
「はい。長田です。どちらさまでしょうか?」
大人の女の人の声だ。落ち着いた声だ。誰だろう?
「あの、長田さんと同じクラスの・・」
そこまで言うと「村上さんですね。少々お待ちください。恭子さまをお呼びいたします」
なんで僕ってわかるんや!
長田さんは僕の電話に呼び出されて高台の公園のベンチに座って僕を待っていた。
金色の髪が高台に吹く風に揺れている。誰がどう見ても美少女だ。
この高台には以前、香山さんと来たことがあったから、場所を知っていた。ここなら静かに話すことができる。
あの時は香山さんに呼び出されてここに来た。今日は僕が長田さんを呼び出した。
人の関係って不思議だ。繋がっていないようで、どこかで繋がっている気がする。
「これなの」長田さんは持ってきたカメラを手提げから出して僕に見せた。
相変わらず言葉が短い。これって直らないのか?
「僕、このカメラ、覚えてるよ」
僕はライカを受け取って触りながら言った。最高級のライカだ。
カメラの使い方を教えるために電話で長田さんにここまで来るように言ったのだ。
「覚えてくれているの?」
「だってこんなすごいカメラ、一回見たら、頭に刻み込まれるやんか」
長田さんは何かを思い出したようにくすりと笑った。
「確か、四年生の時、これに触らしてもらったよな」
「ええ、そうよ」
この公園にいたら香山さんに会いそうだな。会ったら何て言えばいいんだ。でも別に長田さんとデートしてるわけじゃないからかまわないか。それに香山さんにからかわれるのも悪くない気がする。
「カメラの中に一枚だけ、撮ってあるの」
よくわからないけれど長田さんは少し頬を染めて恥ずかしそうにしている。
「いつ撮ったんや?」
「だいぶ前よ」
「あんまり時間が経ったら、色が変わってしまうで」
「そ、そうなの? 大変だわ」
長田さんは慌てたような困ったような顔をした。
「いつや?」
「一年前だけど大丈夫かしら?」
かなり色が変わってしまっているかもしれない。
「何で現像せんかったんや?」
「は、恥ずかしいから」
長田さんは顔を染めた。なんか可愛らしいところもあるんやな。
「何が映ってるか聞いてかまへんか?」
僕が聞くと長田さんは「私の顔」とだけ答えた。
どんな顔だろう?
それから僕はカメラのシャッタースピードや絞り、露出について長田さんに説明した。
うん、うんと長田さんは頷いてちゃんと聞いている。
僕が説明するのなんて、一回だけやぞ、と心で思いながら丁寧に説明する。
「長田さん、少しはわかった?」
「少しだけ」
言葉が短いけど大丈夫かな?「わからなくなったわ」って家に電話がかかってきたりしないよな。
「・・村上くん、今日はありがとう」
なんだか長田さんに言われるとすごく重い言葉のように聞こえるから不思議だ。
長田さんはカメラを手提げにしまい込んで「車を待たせてあるから」と言った。
「長田さん、一つ訊いてかまへんか?」
僕には長田さんの押し花以外に前から気になることがあった。
「何で二学期の委員長に立候補したんや?」長田さんの返事を待つまでもなくそう訊ねた。
長田さんは少し顔を上げた。
「香山さんが、立候補したから」僕の問いかけに長田さんはすぐに答えた。
「私、多数決で勝つなんて思ってもなかったの」
きっとそうだと思っていても僕は確かめておきたかった。
長田さんの行動は全て友達を作るためだった。
おそらく長田さんは副委員長になって香山さんを助ける役割になりたかったのだろう。
そうすれば、たとえ押し花を受け取ってもらえなかった相手でも友達になれるのではと考えた。
そこまでしてどうして香山さんと友達になりたかったのかはわからない。
香山さんの家も自分と同様に金持ちだ。憶測だが長田さんは香山さんも自分と同じような境遇だと考えたのではないだろうか?
香山さんに自分の寂しさを重ね合わせてわかり合える友達になりたかったのではないだろうか?
長田さんは香山さんが委員長に立候補すると、自分も委員長に立候補した。
最初から副委員長に立候補していれば済むだけの話だったけれど、自分が最初から副委員長に名乗り上げれば、押し花を受け取ってくれなかった香山さんなら辞退するのではないか、と考えた。
委員長に名乗り上げ多数決で自分が負けて副委員長になれば辞退しないだろう、と。
そんな気持ちなど、香山さんに、いや、おそらく誰にもわかるはずもない。
長田さんは、多数決になればクラスの生徒は自分に票を入れるはずがない。みんなは香山さんに入れると思っていたのだ。
友達が一人もいない自分に票を入れるはずがない、と。
しかし、長田さんに押し花をもらった女の子はおそらく全員が長田さんに票を入れた。
その結果、多数決で自分が委員長になり、香山さんは副委員長になった。
あの多数決の結果を一番、驚いていたのは長田さん本人だろう。
「村上くん、カメラ、わからないことがあったら、また教えてくれる?」
目の前の美少女にそう言われて断る人がいたら、その人は大バカだろう。
「かまへんよ。いつでも言ってくれたら」僕は迷わずに答えた。
やっぱり、電話はかかってきそうだな。
長田さんと高台の階段を下りて通りまで出ると大きな自動車が待っていた。
長田さんは自動車に乗り込むと窓から手を振って「サヨナラ」と言った。
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