91 / 133
レミとサヤカ①
しおりを挟む
◆レミとサヤカ
サヤカは、顎の関節が緩くなっているのか、口をガクガクと揺らしながら何かを言っている。「んおっ、んぷっ」と意味不明の声を出した後、
「レミ・・レミが、体の、中に」と言った。確かにそう言っている。
その目は、焦点を失っていて、左右に上下にと回転している。
そして、次に、「お・の・れ・・レミ」と、
自分の体を巣食うレミに対しての憤りの言葉・・恨み辛みのような言葉を吐いた。
僕は少しずつ理解し始めた。
渡辺さんの妹、サヤカの中に入っている「あれ」は、伊澄さんのお姉さん、伊澄レミの体の一部だ。
おそらく、これまで出会った「あれ」は、全て、伊澄さんのお姉さんの一部だったのだ。
屋敷内で初めて白山あかねが空中に噴き出した血を吸い上げたのもそうだったし、体育の大崎の中に入っていたのも、伊澄瑠璃子の姉のレミの一部だった。
つまり、この町で起こった異変は全て、この姉妹に起因するものだった。
だとしたら、まさか・・
「伊澄さん」
僕は伊澄さんに呼びかけた。
「何かしら? 屑木くん」
伊澄瑠璃子は胸元で両腕を組んでいる。この場の状況を楽しんでいるかのようだ。
「君は、多くの人間の体に、君のお姉さんの一部を植え付けていたんだな」
「だいたいのことは、合っているわ」と伊澄さんは言った。
おそらくそうだ。
伊澄瑠璃子は、姉の一部を人間の体に植え付けていた。その目的は、それに人間の血を吸わせ、大きくするためだ。
確かに人間の血を吸った「あれ」は大きくなっていったようだ。
あの屋敷にいた学生の男女が言っていた。
「まだ完全ではない」と。
あれは、伊澄レミの体が、「元に戻っていない」そういう意味にとれる。
「だったら・・本体は、君のお姉さんの本体は、どこにいるんだ?」
伊澄レミの本体・・それはどこにいる?
「本体?」
伊澄瑠璃子は、僕の言葉に「本体って、イヤな言い方ね。屑木くんが言うのは、レミ姉さんのことだと思うけれど」
「言い方はともかく、君のお姉さんはどこにいるんだ?」
「屑木くんも何度か、出会っているはずよ」
「もしかして、あの屋敷で、白山あかね、そして、佐々木奈々の血を空中に出させた・・あの物体が君のお姉さんだったのか?」
伊澄瑠璃子は「ええ」と頷き、「ただし、レミ姉さんは、今はあの屋敷にはいないわ」と言った。
その時、僕は別のことを考えていた。
それは血の吸い方についてだ。
初めて人が血を吸われるのを見た時、それはあの屋敷で、白山あかねの血が空中に吹き出した時だ。あれが伊澄レミの本体だった。
ひょっとすると、血を空中に吸い上げるほどのパワーのある物体は、伊澄レミの本体だけではないのか。
他の伊澄レミの分身である「あれ」が宿っている人間は、皆、首からしか血を吸うことができないのではないか。つまり、本体ほどのパワーがないということだ。
おそらく、このサヤカという女もそうなのだろう。
このサヤカは、伊澄レミの分身が宿り、体の中身を奪われているだけに過ぎない。
神城が上ずった声で、
「で、でも、どうして、こんなことが・・」と、ようやくの思いで言った。
神城には、目の前の怪物女の存在自体が信じられない、そんな表情だ。
僕だって、こんな現象は信じられない。けれど、目をそむけるわけにはいかない。
同時に、神城と君島さんをこの家から出してやらなければいけない。
それは僕の義務だ。
僕は意を決して「伊澄さん、お願いだ!」と言った。
「神城と君島さんは、ここから出してやってくれ、家に帰してくれ。催眠を解いてやってくれ。この二人には何の罪もないんだ」
サヤカは、顎の関節が緩くなっているのか、口をガクガクと揺らしながら何かを言っている。「んおっ、んぷっ」と意味不明の声を出した後、
「レミ・・レミが、体の、中に」と言った。確かにそう言っている。
その目は、焦点を失っていて、左右に上下にと回転している。
そして、次に、「お・の・れ・・レミ」と、
自分の体を巣食うレミに対しての憤りの言葉・・恨み辛みのような言葉を吐いた。
僕は少しずつ理解し始めた。
渡辺さんの妹、サヤカの中に入っている「あれ」は、伊澄さんのお姉さん、伊澄レミの体の一部だ。
おそらく、これまで出会った「あれ」は、全て、伊澄さんのお姉さんの一部だったのだ。
屋敷内で初めて白山あかねが空中に噴き出した血を吸い上げたのもそうだったし、体育の大崎の中に入っていたのも、伊澄瑠璃子の姉のレミの一部だった。
つまり、この町で起こった異変は全て、この姉妹に起因するものだった。
だとしたら、まさか・・
「伊澄さん」
僕は伊澄さんに呼びかけた。
「何かしら? 屑木くん」
伊澄瑠璃子は胸元で両腕を組んでいる。この場の状況を楽しんでいるかのようだ。
「君は、多くの人間の体に、君のお姉さんの一部を植え付けていたんだな」
「だいたいのことは、合っているわ」と伊澄さんは言った。
おそらくそうだ。
伊澄瑠璃子は、姉の一部を人間の体に植え付けていた。その目的は、それに人間の血を吸わせ、大きくするためだ。
確かに人間の血を吸った「あれ」は大きくなっていったようだ。
あの屋敷にいた学生の男女が言っていた。
「まだ完全ではない」と。
あれは、伊澄レミの体が、「元に戻っていない」そういう意味にとれる。
「だったら・・本体は、君のお姉さんの本体は、どこにいるんだ?」
伊澄レミの本体・・それはどこにいる?
「本体?」
伊澄瑠璃子は、僕の言葉に「本体って、イヤな言い方ね。屑木くんが言うのは、レミ姉さんのことだと思うけれど」
「言い方はともかく、君のお姉さんはどこにいるんだ?」
「屑木くんも何度か、出会っているはずよ」
「もしかして、あの屋敷で、白山あかね、そして、佐々木奈々の血を空中に出させた・・あの物体が君のお姉さんだったのか?」
伊澄瑠璃子は「ええ」と頷き、「ただし、レミ姉さんは、今はあの屋敷にはいないわ」と言った。
その時、僕は別のことを考えていた。
それは血の吸い方についてだ。
初めて人が血を吸われるのを見た時、それはあの屋敷で、白山あかねの血が空中に吹き出した時だ。あれが伊澄レミの本体だった。
ひょっとすると、血を空中に吸い上げるほどのパワーのある物体は、伊澄レミの本体だけではないのか。
他の伊澄レミの分身である「あれ」が宿っている人間は、皆、首からしか血を吸うことができないのではないか。つまり、本体ほどのパワーがないということだ。
おそらく、このサヤカという女もそうなのだろう。
このサヤカは、伊澄レミの分身が宿り、体の中身を奪われているだけに過ぎない。
神城が上ずった声で、
「で、でも、どうして、こんなことが・・」と、ようやくの思いで言った。
神城には、目の前の怪物女の存在自体が信じられない、そんな表情だ。
僕だって、こんな現象は信じられない。けれど、目をそむけるわけにはいかない。
同時に、神城と君島さんをこの家から出してやらなければいけない。
それは僕の義務だ。
僕は意を決して「伊澄さん、お願いだ!」と言った。
「神城と君島さんは、ここから出してやってくれ、家に帰してくれ。催眠を解いてやってくれ。この二人には何の罪もないんだ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/18:『いるみねーしょん』の章を追加。2025/12/25の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/17:『まく』の章を追加。2025/12/24の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/16:『よってくる』の章を追加。2025/12/23の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/15:『ちいさなむし』の章を追加。2025/12/22の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/14:『さむいしゃわー』の章を追加。2025/12/21の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる