蓮ノ空日記 Hasunosora-Diary

Tomo.H

文字の大きさ
2 / 2

小さなつぼみ

しおりを挟む
――小さなつぼみ――

今日の天気は雨だ。病弱なあたしは今日もベッドの上。太陽の力を享受することもできずに、低気圧のいたずら――片頭痛にうなされている。

「花帆~。調子が悪いのはわかるけど、中学校が春休みだからって遅くまで寝ているのもよくないわよ。しっかり朝ご飯は食べなさい!」

「うるさいなぁ。分かったよママ。」

少し強めの口調で返してしまったけれど、正直なところ、朝ご飯はあたしの毎日の楽しみだ。家の中での一日は単調で、ご飯勉強ご飯ゲームご飯お風呂睡眠・・・と、呪文のように繰り返すだけ。料理が上手なママの作るご飯は、あたしの生活を彩る小さな花みたい、とあたしは思う。

「よいしょっと!」

思いっきり起き上がったことを頭痛とともに後悔しながら食卓へと足を進める。今日の朝ご飯は…

「うわぁ~!パンケーキ!!」

「今日は雨だし、甘いもののほうが花帆は喜ぶかなと思って。」

あたしの反応を見て誇らしげに話すお母さん。とっても嬉しいけど、なんだか恥ずかしい。

「別に、そんなことないもーん!」

先に起きてきていた妹たち――みのりとふたばと一緒に食卓につく。妹たちのパンケーキは1枚だけど、あたしはお姉ちゃんだから2枚重ね!お姉ちゃんの特権だよね。思わず笑みがこぼれちゃう。パンケーキの上には四角く切られたバターが乗せられていて、お皿の隅にはラナンキュラスの花びらが添えられている。あたしの家はラナンキュラスの。育てたものの中で形がきれいじゃなかったり虫食いがあったりしたものは、こうやって使うことも多い。花びらの色はこんがり焼けた黄金色のパンケーキともマッチしていて、まるで芸術作品みたい。

食べ始めてからは一瞬だった。バターの香ばしい匂いとメープルシロップの優しい甘みは私の重い体にしみわたって、いつの間にか頭痛もどこかへ飛んで行ってしまった。ママの魔法はすごいや。

「なんだか雨も上がってきたみたいだし、散歩にでも行ってきたら?ずっと家にいても気持ちは明るくならないわよ。」

すっかり気持ちは明るくなっていたので、ママは自分の持ってる(私の気持ちを操る)技術に気づいていないのかなぁ、と思いつつ、せっかくなので散歩には行くことにした。

雨が上がったばかりの空は、まだまだ雲に覆われている。長野の春は寒いので、薄手のコートを羽織る。黄色に緑の縁取りがされたお気に入りの傘は、公園に忘れてしまうとよくないので家に置いて外へと出る。あたしは暑いよりもひんやりした感じのほうが好きなので、なんだかんだこれくらいの気温が快適だ。

「近くの公園にでも行こうかな。もしかしたら少しだけお花も咲いてるかも!」

あたしは名前に花という文字が入っているだけあって、お花が大好き。小学生の頃は運動がなかなかできなかったので、公園で集めた綺麗なお花を押し花にして集めていた。そのコレクションは今でも勉強机の引き出しの中に保管してある。

 ほとんど雪は解けてしまったが、街路樹の葉っぱや木の下、建物の裏などに顔をのぞかせれば、少しだけかくれんぼしていた雪を見つけることができる。まるで宝探しをしているような気分になりながら、あたしは公園へと足を進めた。

「ふぅ~、疲れたぁー!」

家から歩いて15分ほどの少しだけ坂がある程度の道のりが、あたしには苦しかった。

「まだ咲いているお花はほとんど無さそうだなぁ。」

ベンチに腰かけて、ぼーっと空を見上げる。お日さまが輝いている…と思ったのも束の間、薄い雲が太陽を隠してしまった。雲の影はあたしの心にも影を落とし、思わず物思いにふけってしまう。こんな体力でいいのかなぁ…というのは、もういつも思っていることである。あたしは、そんな自分があまり好きじゃない。そして、それを言い訳に頑張ろうとしない自分はもっと嫌い…。そんなとき、あたしには見つけることのできなかった――きれいな花をもって公園を駆け回る少年たちの姿が見えた。

「あたし、花咲きたい…!」

これがあたしの心の本当の声。あたしの中に、小さなつぼみがあることを、確かに感じた。その後しばらくは、ベンチの上で花帆開花計画(仮)のプランを練った。

「朝は7時までに起きて~、元気な日はこの公園まで走ろうかな?もちろんお勉強も…まあそれなりにはやって!楽しい高校に入って花咲くんだ!あたしが花咲いたら、今度は他の人が花咲けるようにお手伝いもしたいから…。」

こんなにポジティブなことを考えられるのは初めてかもしれない。

「よーし!とりあえず、家までダッシュで帰って勉強だー!」

周りの目などお構いなしに、あたしは大きな声を出した。先ほどまでお日さまを隠していた雲はいつの間にかいなくなり、ベンチの下にある、小さなつぼみを照らしていた。


~あとがき~
みなさんこんにちは。今回初めてショートストーリーを執筆させていただきました、Tomo.Hと申します。見苦しい部分もあったかと思いますが、最後までお読みいただき誠にありがとうございます。
さて、今回のショートストーリーは高校生になる前、中学生だったころの花帆ちゃんのある日を想像して執筆させていただきました。また、今回は公式の設定をなるべく忠実に拾っていくことも意識しております。蓮ノ空が活動を開始して間もなく1年。ファンの中でキャラのイメージが確立しつつあるからこそ、忘れてしまった「あの設定」があるのではないでしょうか。自分もこの執筆のためにいろいろ公式設定を復習しましたが「そんな設定そういえばあったな!」という発見があり、とても楽しかったです。
この作品自体を楽しんでもらうことはもちろんですが、この作品が、皆さんが蓮ノ空をより楽しむための一助となれば幸いです。


※このストーリーはフィクションです。また、このシリーズは一般人が作成する同人作品であり ©プロジェクトラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 及び スクールアイドル応援活動アプリ/Link!Like!ラブライブ! が提供する公式設定・ストーリーとは一切の関係はございません。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...