召喚士なのに前に居る

マナ

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0章:転生前

1話:私は死んだらしい

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本作は連載作品となります。
今回は初投稿ということで、3話一気に公開です。
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「貴女は死んでしまいました」

 真っ暗な空間で、突然美少女からこう言われた私の心情を考えてほしい。マジかーって感じだ。だって、死んだ記憶ないもの。いつも通りの学校生活を送っていたはずなのに、気が付いたらここにいた。それで死にましたと言われても、実感も何もない。

「そう思うのも無理はありません。自分の死なんて、受け入れられなくて当然なのです。貴女は自分の心を守るため、死の瞬間を覚えていないのです」

 そう言われると、なるほどなという気持ちになる。ここは死後の世界なのだろうか。よく、死んだら閻魔様に裁かれると聞くが、目の前の美少女は閻魔様という感じはない。どちらかというと、囚われのお姫様みたいな感じだ。幸薄そうな美少女。

「ふふ、照れてしまいますね。ですが、私はお姫様、というわけではないんですよ。囚われているのは合っています」

 さっきから私の思考と会話してるね。エスパーとか?

「いいえ。私は女神と呼ばれる部類のモノです。昔は闇の女神、と呼ばれていました」

 へぇ、闇の女神様なんだ。たしかに、黒髪に黒目、艶やかなワンピースも黒。いかにもって感じだ。言われてみれば、納得できる程度には闇を体現している。
 それで、なんで私は闇の女神様の前にいるの?

「よくぞ聞いてくださいました。貴女は私の兄が起こした勇者召喚に巻き込まれて死んでしまったのです」

 私の死因がファンタジーすぎてわけがわからない。なに、勇者召喚に巻き込まれて死んだって、ライトノベルじゃないんだからさ。一昔前に流行った巻き込まれ系のオープニングかな。

「本当なんです。貴女は下校途中の道で勇者召喚に巻き込まれ、体を上下に分断されてショック死してるんです」
「想像の倍ぐらいえげつない死に方してた」
「下半身だけ元の世界に取り残されてるんですよ」

 第一発見者が可哀想なことになる感じの死に方じゃん。絶対騒動になるやつ。なんで体が上下に分断されることになったのよ。

「貴女は突如発生した召喚陣から、勇者の彼女を助けようとしたんです。上半身が陣の中に入った時に、陣が発動してしまい……」

 なるほどね。それで上半身と下半身が別れたと。理解はしても納得はできないよね。女神様なら生き返らせることはできないのかな。ライトノベルでもそういうのあったよね。

「私では既に亡くなっている貴女を元の世界に生き返らせることはできないんです」

 なら勇者召喚を行った貴女のお兄さんは? 異世界に干渉して勇者を召喚できるなら可能なんじゃないの?

「あのクソ兄がそのような面倒をするわけがありません。アイツは自分で作った箱庭で戦争ごっこをするのに夢中なんですから」

 空間がガタガタっと揺れた。気に障ってしまったらしい。兄妹仲は良く無いようだ。

「すみません。私の兄はとある世界の創造神なのですが、他人の不幸が蜜の味という破滅的な性格をしていまして」

 創造神なのにそんな性格で大丈夫なの?

「大丈夫ではないんです。何度か落ち着くように進言していたのですが、煩わしいと封印されてしまいまして、今では邪神扱いです。おかげでこんなに弱体化してしまいました」

 囚われのお姫様ならぬ、囚われの女神様でした。ってことは、この暗い空間は女神様が封印されてる場所ってことか。なんで私が入れているんだろう。あ、死んでるから魂だけになって入れたとか?

「私と貴女の相性がとても良かったのです。そのおかげで、魂だけは保護できました」

 そうなんだ。魂だけの私はこれからどうなるんだろう。消えていくのかな。

「貴女には3つの選択肢があります」

 1つ、このまま魂を消滅させること。異世界であるため、輪廻の輪に乗ることはできない。2つ、気が済むまで私と一緒にこの封印された空間で生活する。3つ、この世界に転生して新しい人生を歩む。
 転生できないって話じゃなかったっけ。

「元の世界では、の話です。弱体化した私でも、貴女を私達の世界に転生させることができるんですよ。私と貴女の相性が良かったための力技、とも言えます」

 そうなんだ。このまま消えるだけなら、転生して世界を旅するのも悪くないかな。私を間接的に殺してくれた創造神の顔も拝んでみたいしね。

「わかりました。……であれば、お願いがあるのです」

 お願い? 私にできる事かな。

「もし、もし可能であれば、創造神の戦争ごっこを止めてほしいんです。難しい事はわかっています。なので、できれば、というお願いになります」

 うーん、ただの人間に創造神の企みを止める事ってできるのかな。すでに1回殺されてる身だし、ラノベじゃないんだから神殺しなんて夢のまた夢じゃないかな。

「そうですね。あのクソ兄を殺すことはほぼ不可能でしょう。私ですら3桁ほど失敗しましたからね。なので、貴女に頼みたいのは、貴女の親友である勇者の彼女を助ける事です」

 親友、そう言われて思い浮かぶのは幼馴染の顔。生まれた時からずーっと一緒に過ごしてきた、明るくて元気な女の子。正直、勇者って言われたら納得する程度にはお人好しで、底抜けに明るくて、可愛い女の子だ。名前は田中たなか あかり

「そのアカリさんが勇者なのです。彼女はこれから、色んな戦争に使われるでしょう。きっと、心がボロボロになって、壊れても、クソ兄の玩具にされる」

 それは、許せねぇな。アイツは私の親友で、生まれた時から知ってる、大事な幼馴染だ。アイツの明るい所に何度も助けられた。そんな親友が使い潰されるなんて、絶対ダメ。

「では」

 私、やるよ。灯を助けるために、転生する。ねぇ、私は元の世界に戻れないんだよね。

「はい。元の世界では貴女は死んでしまいましたから」

 なら、灯は? 灯を元の世界に戻すことってできるかな。

「それは、可能です。ただ、クソ兄は玩具を手放すことはないでしょう。私も、封印されている限りはできませんね」

 創造神を殺して、貴女の封印を解除したらどうかな。

「それなら可能です。私の力を使って、アカリさんを元の世界に返すことはできます」

 じゃあ、私がやることは決まった。創造神を殺して、貴女の封印を解く。

「私としてはありがたいですが、クソ兄を殺す、神殺しはとても難しいですよ」

 すでに死んでる身だし、それなら灯の為に何かしてやりたい。難しくてもいい。灯を元の世界に返して、私の死を両親に伝えたいんだ。これは私の我儘だから、やり遂げたら万々歳。やり遂げなければ、そこまでの話だよ。

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