忘れられた側室は、次期王の寵妃になりたくないので

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5「でも流石に不憫ですから、今日は夜来たら一生に寝てあげる事にします」



「ああ、アイリス。リーシャは?」

アイリスと呼ばれた侍女は、部屋の香の掃除をしていた。リーシャが唯一心を許す彼女だけが寝室までの入室も許可されている。

「陛下、ご挨拶申し上げます。リーシャ様はお昼寝中です。大体いつもこの時間はお昼寝をなさっているのを…ご存知では?」

「ああ…うん、起きている時に来てもどうせ会ってくれないし」

リーシャの怒りは、まだ続いておりフェルナンドの見えざる尻尾はだらんと垂れ下がる。
捨てられた犬のように悲しげにそう言った。

「でしたら…ご要件は?」

「いや、こんな時じゃないと君にも話聞けないだろう?色々聞きたくて」

あれから、二週間も経ったのにフェルナンドは許されない。贈り物をしたり文を書いたり、出来る事はなんでもしたが、リーシャはフェルナンドを受け入れる事は無かった。

それに痺れを切らせたフェルナンドは、少しでもヒントを貰おうと、こうしてリーシャの不在を狙ったのだ。

「リーシャ、やっぱり怒ってる?」

「えと……怒ってるわけではないと思うのですが…あの方は一度臍を曲げたら長いのです」

フェルナンドは、深いため息を吐きながらしゃがみこむと、アイリスと呼ばれた侍女はリーシャの好むお茶を差し出した。

「僕は抱くべきだったんだろうか」

「陛下……申し訳ないのですが、私にも分かりかねます。抱いたら抱いたで、それ程の愛だと仰られている気もしますし、むしろ興味を失う気さえします」

そう、リーシャは本当に気難しい。
特にアイリスから言わせてみれば、フェルナンドに対してだけ異常な程に難しい感情を持ち合わせている。

「リーシャはさ、父上にも…しかも兄上にも寵愛を賜ってただろ?だからさ、もううんざりかと思ったんだ。だから僕くらいは…自由にしてあげたくて」

「リーシャ様は、逆に…怖いくらいに、共寝に眉ひとつ動かさない方でした。私も謀反までの三年程はお仕えしていなかったので詳しくは分かりませんが…」

「やっぱり…抱けばよかったのかなぁ、リーシャも男の子だから…性欲が溜まるんだ」

一国の王が、侍女の前でしゃがみこんで懸想に苦しみ相談事を吐き出しているのがアイリスは可笑しい。

だが、彼女はリーシャをずっと支えてきたからこそ、フェルナンドの寵愛が自分の事のように嬉しかった。

「陛下、リーシャ様はそんなものは持ち合わせませんよ」

いきなり立ち上がると、紅茶を一気に煽るフェルナンド。

息を吸い込み、また鬱屈なため息を吐く。

「じゃあ……なんで、アルベルトと関係を持つのさ……」

フェルナンドが、リーシャの自死の件から従者を常に付けていることくらい周知の事実だ。もちろんリーシャ本人も。

それを承知の上で、リーシャはアルベルトと関係を持った。何故そういう事になったのか、確かな空気感は分からない。

リーシャの美しさに興味を持ったアルベルトが散歩中のリーシャに声を掛け、リーシャが側室宮に誘ったというのが報告からは伺える。

フェルナンドはリーシャの自由と笑顔だけを望んでいるのだから、何をしようが束縛するつもりはないが、流石に弟との逢瀬は堪えたらしい。

「陛下…先程も言いましたが…リーシャ様は性交に関して、意味を成さない事はありません。今の…リーシャ様なら、一番考えやすいのは当てつけじゃないでしょうか」

「やっぱりそうかな、僕の愛を試してる延長?」

「…というよりは、陛下の初めての人が自分じゃないという憤りをぶつけているのか…。強かな方ですから、それだけではないと存じますが」

ずっと鬱屈な黒い息を吐くフェルナンドは、ほんの少しの喜びをアイリスに向けた。

「リーシャは、僕がリーシャ以外の子とシてたからあんなに怒ってるのか?」

少なくとも、あの晩はそうだった…とアイリスは耳打ちした。

パッと咲くフェルナンド、アルベルトの事など忘れたかのように嬉しそうに花を撒き散らす。

「リーシャ…ヤキモチ、じゃあないか?それは……うう…やきもちなのか?違うんだ、リーシャに少し似てる子見つけて…ちゃんとずっと僕が思ってたのはリーシャで………」

アイリスは、正直に教えてやったことをほんの少し後悔していた。

「リーシャ様がそろそろ……」

まだ、いつもなら起きてくる時間ではないが、これ以上フェルナンドの愚痴と惚気を聞く程アイリスも暇ではない。

相変わらず花を撒き散らすフェルナンドは、アイリスの手の中に少しの路銀を握らせる。

「…ああ、ありがとう。リーシャがアルベルトに飽きるまで…悲しいけれど、どうにかリーシャに許して貰う為に頑張るよ。にしても…リーシャが僕の初めてにやきもち……はぁ」


花を飛ばしていたかと思えば、やはりため息を吐くフェルナンドを見送り、背後に感じる主の気配に耳を済ませた。

「リーシャ様……」

「フェルナンド、どうしたのです」

「殿下と関係を持つのが悲しいそうです」

「別に私にとってはアルベルトとのセックスなんか挨拶みたいなものです。あれは危険分子だから…気に入られて損は無い」

アイリスは、起きたばかりのリーシャにフェルナンドに入れたものと同じ紅茶を目の前のテーブルに置いた。

「やはり…リーシャ様は当てつけだけじゃない思惑がおありなのですね」

「流石に私だって、当てつけだけで抱かれたりしません。アルベルトは……フェルナンドを暗殺する可能性があります」

流石のアイリスでも、その言葉には狼狽えた。この王宮で、リーシャ以外が絶対口にしない…死罪になりかねないその言葉。

確かに、今たった一人しかいない王位継承権を持つ者。暗殺すれば、次期王はアルベルトだ。

アイリスは、己の主はやはり強かなのだと…唾を飲み込んだ。

「でも流石に不憫ですから、今日は夜来たら一生に寝てあげる事にします」

「承知致しました」







「可愛い」

「ああ…例の、大丈夫なんですか?陛下のお気に入りだとか」

「でも誘ったのはリーシャ様だし、もう二回も抱いちゃった、なんか会う度に可愛くなんだよな、あの男」

その男は、王位継承位を一気に一位まで進めた第一王子。リーシャからの言伝の文を嬉しそうにヒラヒラとさせる。

「で、これから三回目のセックス?」

「そう!今は違うとこに居るらしいけど、逢瀬はいつも側室宮」

いきなり王に仕立てられたフェルナンドと違い、ただ裕福になっただけのアルベルトは出来る限りの私腹を肥やす。

上等な食事、高級な装い…そして、極上の色。

元々リーシャの事は知らなかったようだ。
フェルナンドのお気に入りが大層美しいという話を聞きつけ、散歩に出くわした振りをした。

リーシャはその頬を染め、アルベルトをベッドの中に誘ったという武勇伝は、側近の従者なら聞き飽きた程。

「俺に一目惚れしちゃったのかな、兄上のお気に入りのリーシャ様」

「程々にしてくださいね」

「うん~多分大丈夫、なんか兄上の事嫌いみたいなんだよな、リーシャ様」

「この国では王に刃向かったら死罪だというのに、よく分からないですね」


アルベルトは、一張羅に着替えると側室宮へと足を伸ばした。ここ数年は王からの渡りがないとは聞いていたが、寵愛を受けていた時は同じ廊下を歩いていたのだろうかと、思いを馳せる。

確かに皇后宮よりは遠いが、その遠さまでもが、これから逢うリーシャへの扇情を誘うようだ。

もうリーシャが住まいを変えたからか、どこか寂しいその部屋。扉に手をやると薄着のリーシャが迎える。

「…リーシャ様」

ちゅ、と頬に口付けを落とすと、リーシャはそれに応じるように首に腕を回す。

「アルベルト、早かったですね」

そのまま腰を抱き、首筋に口付けを落とし…抱き上げるとベッドに落とした。

「いい子にしてた?リーシャ様」

ガタンという、どこからか鳴る音にリーシャは肩を揺らす。

「……鼠ですね」

「鼠なんて出るんですか?最近は陛下の命で以前の皇后宮で寝食しているとか。ねえ、俺がもっといい側室宮にしてあげるよ」

もう、アルベルトは早くも猛った性器を取り出すとリーシャの腹に擦り付ける。

「リーシャ様…ほんと、可愛い」

「慣らしてありますから、前戯は必要ありません」

リーシャはそう言うが、アルベルトはその唇に口付けを送った。乳首に舌を這わせ、肌着の中に手を差し入れる。

「っ、ぁ…性器など…触れないでよいのです」

「自分でしたの?見たかったな…俺を思ってしたのですか?」

後孔につぷりと入れられた指を動かしながら、性器に手をやる。使う事を許されていなかったそれに触れられるのが苦手らしく、アルベルトが扱くと快感を逃がそうと腰を揺らす。

「リーシャ様、気持ちよくなって。俺が気持ちよくなるだけじゃなくて…」

快楽、リーシャには不要な感情だと言わんばかりに己の片脚を持ち上げると強請るように脚を開いた。

「リーシャ様、ダメです…。我慢できなくなります」

「早く、ナカに来てください」

リーシャは、わざとらしくアルベルトの指を舐ると後孔に押し当てられた結合部を淫靡に撫でた。

「…っはぁ、本当に……煽るのうますぎなんだよっ」

ふーふーと息を吐き、欲を宿すアルベルトはそのまま性器をリーシャの中へ進めた。

「っ~~、ぁあっ」

「っ、やらか」

程よく解れたそこは、アルベルトを簡単に飲み込んでいく。
まるでその為に存在しているかのように、柔らかくうねるリーシャのそこを、遠慮なく突き立てる。

「~~っああぁっ、あぅ」

「リーシャ様のナカっ、ほんと……搾り取られそ……」

アルベルトが腰を進めやすいように脚を持つとリーシャに体重を掛けながらアルベルトは根元まで押し込み、亀頭まで抜き去り、また根元まで入り込んだ。

「ぁ、あああっ……」

「リーシャ様、っすげー潮。これ好きですか?」

射精というよりは、さらさらの液体がリーシャの腹に垂れた。

リーシャの頭の横に両肘を付き、リーシャの身体が無理に丸まるのも気にする素振りはない。

ただ快楽を貪る獣のように、腰を振り、アルベルトが打ち付ける度にバチンとけたたましい音を鳴らす。

「っ、やべ、…っはぁ、もう、俺……」

「っぁあ、ぁ、私のカラダで……ぁ、精を、出して……」


「…いいんですかっ…こんな…ああ…美しい」

「っあ、ええ、思う存分に…っあ、」

細い四肢、その上に跨る男は獣のように猛ると美しい身体に性器を埋め込む。

玉のような嬌声は部屋中に響き渡った。
それを影から聞いている者がいるのは百も承知で、わざと煽るように男を求めては快感に喘ぐ。

だが中に注ぎ込む事は許さずに、射精の直前で性器を引き抜かせ美しい男の腹を汚した。

「…っはぁ、はぁ」

「…こっちまで飛んできてる」

少し不愉快そうに目を細めると、アルベルトはその身体を抱き締める。

「はぁ…リーシャ様、いいのですか?…あなたは兄上の…」

「兄上の…なんですか?私は陛下のものです」

そう言うと、光が宿らない目は虚空を見つめた。

「リーシャ様…今更…あなたを抱いてしまってこんな事を言うのはお門違いにも程があるとは思うんですが…流石に不敬じゃないですか?今の王は兄上…もう陛下と呼んでいいのは、兄上…フェルディナンド王だけしょう」

「ふふ、それなら密告してください…まぁ、どうせ今も覗いているのでしょうけれど」

そう言うと、この国では珍しい艶のある長い黒髪をはためかせて手櫛で梳き身体を清拭していく。

そして、覗いているという言葉に男は恐怖したようでまだ半分立ち上がっている性器を無理やりズボンの中に押し込んだ。

「っ俺は…誘われただけで…陛下に不敬を働くつもりはこれっぽっちも…」

リーシャと呼ばれた美しい男は、もうその男に興味を失くしたようで、バタバタと部屋を出ていく後ろ姿に目もやらなかった。

その部屋は飾り立てられてはいるが、薄らと埃を被ったどこか寂しい部屋だった。
広いベッドの上で全裸で項垂れたまま、何を考えているのか掌を窓に翳す。

「リーシャ」

覗いている、という言葉の通り広い部屋の影から見目の麗しい男が姿を見せた。

「……どうせいるのだと思っていました」

「小さい頃はこの隠し通路から入ると構ってくれたではありませんか」

「哀れだと思ったからです。あなたの母は正室だったにも関わらず、あなたを産んで死んでしまった。そして五番目の陛下の子、王位継承も程遠く母も居ない」

金髪の髪の毛を撫で付けた男は、その細く美しい身体にガウンを掛けると横抱きにして持ち上げた。

愛おしそうに顔に掛かった前髪を退かし、何度も見惚れた翠色の瞳を見つめ、そのまま顔中に口付けを落とす。
唇を吸い、髪の毛に手をやり、痛い程に抱き締めた。

「っは、」

「リーシャ、こんな事しても僕はあなたを嫌いになりませんよ。無駄ですから…弟に身体を許す事などしなくていいのです」

「…腹違いの弟に抱かれている私を醜いとは思わないの?」

「…思いませんよ、こんなに…こんなに美しい。気高くて…可愛くて、僕の、僕のリーシャ」


そう狂おしそうに呟く男…彼は大国において神と呼ばれる存在だった。本来なら彼に歯向かうだけでも死罪になる事もやむを得ない。




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