捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。

扇レンナ

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本編 第2章

第11話

 疑問に小首をかしげる私の手首を、ヴィリバルトさんはつかんだ。

 彼の力加減は絶妙だ。優しいはずなのに、なぜか圧も感じる。離さないって伝えてくるみたいで――。

(って、そんなわけないわ)

 私は首を横に振って考えを振り払う。

 ヴィリバルトさんは親切だ。圧なんてかけてくるはずがない。

 彼に連れられ邸宅に戻る。少し歩いて、彼は立ち止まった。手首を離して、私に向き合う。

「すみません。……勝手なことをしてしまって」

 軽く頭を下げた彼の言葉の意味がわからない。

 勝手なことなんてされた覚えがない。

「その。ギードと交流していたのに、引き離してしまって」

 声が本当に申し訳なさそうで、私は手をぶんぶんと横に振る。気にしないでほしい。

「いえ! それに、ギードさんのためですよね。療養中なのに、見知らぬ人がいたら落ち着きませんし……」

 苦笑を浮かべる。それに、私は興奮していた。うるさい他人がいたら、ギードさんだっていやだよね。今更気づいた。

「……そういうわけじゃ、ないんです」

 ヴィリバルトさんがぐっとこぶしを握る。

「あなたがギードと簡単に打ち解けていくのを見て、柄にもなく嫉妬したんです」

 彼の言葉に私の心が揺さぶられた。だって、それって……。

(ギードさん、案外私のことを好ましく見てくれているってこと?)

 だから、一日一回会いに来てもいいって言ってくれたんだ――!

「こんなこと言われても困りますよね。すみません」

 感動していたけど、慌てて現実に戻ってくる。深々と頭を下げたヴィリバルトさんに向かって手を横に振る。

「ヴィリバルトさんのお気持ちは当然だと思います。ご自分のパートナーがほかの人に気を許すのって、あまりいい気持になりませんよね……」

 ドラゴンは気難しい。気に入らない人間の指示には絶対に従わない。

 竜騎士はドラゴンとの絆に誇りを感じるという。長年のパートナーとぽっと出の私。仲良くしていたらいやに決まっている。

「私の気遣いが足りなくてすみません! 私、本当にドラゴンが好きで……!」

 決して悪意なんてなかったのだと、必死に伝える。

 ヴィリバルトさんは私の話を聞いて、ポリポリと頬を掻いていた。信じてもらえたらいいんだけど……。

「メリーナさんは、本当にドラゴンが好きなんですね」

 彼がぽつりとつぶやく。私は何度も首を縦に振った。

「はい。そこら辺の人じゃ敵わないくらい、ドラゴンへの愛があります」

 笑う。ヴィリバルトさんは私の笑みを見て、どう思ったのだろう。前髪から覗く瞳に宿った感情は見えない。

「そう言ってくれて、ギードも嬉しいでしょうね。……さぁ、昼食にしましょう。こしらえるので、待っていてください」

 歩き出した彼の背中を、慌てて追いかける。

「私も手伝います。……あまり役には立てないでしょうが」

 食事の後片付けだけであの惨状なのだ。料理ができるとは思えない。

「朝も言いましたが、だれだってはじめは初心者です。それに、俺はあなたのその気持ちが嬉しいですから」

 声のトーンがちょっと高い。本当に嬉しいって思ってくれているんだろう。

「簡単なものから練習しましょう。いつか役に立つでしょうからね」

 彼の言葉にうなずく。

 そう。私はいずれここから出ていく。一人で暮らす術を身に着けなくちゃならない。

 ヴィリバルトさんはそこまで考えてくれている。私も、きちんとしなくちゃ。

(彼に迷惑ばっかりかけていられないもの)

 自分の頬を軽くたたいて、気合を入れる。

 さぁ、がんばろう。

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