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本編 第2章
第15話
どうして自分がこんなことを言ったのか、自分でもわからなかった。
だって、今までの私なら表面上の付き合いだけで満足していたから。
……元婚約者とだって、家族とだって。表面上だけ付き合っていた。
深く知ろうなんて思いもしなかった。
でも、この人のことを見ていると、今まで知らなかった感情が胸の中に芽生えていく。
どうしてなのかは、わからないけど。
「そりゃあ、出逢ったばかりの女に言われても困るって、わかっています。でも――」
それに、私は居候。現状彼のお荷物でしかない。
「……知りたいって、思ってしまうんです」
出た声は、自分でも驚くほど小さかった。
恐る恐る顔をあげると、彼が私を見ている。気まずくてそっと視線を逸らした。
「困ったり、しませんから」
彼の返事も、とても小さかった。
「だから、そうですね。少しずつ互いのことを知りましょう。たくさん話をして、たくさん一緒にいて――」
彼は「たくさん一緒にいて」という。でも、この関係は長くは続かないって、わかっている。
いつまでも居候でいるなんて、私が耐えられないから。
「……はい。たくさん、お話ししましょう」
だけど、今は彼の言葉に甘えていたかった。
人に甘えるなんて、一体いつぶりだろう。頭の片隅に浮かんだ疑問を振り払い、私はぎこちなく笑う。
ひときわ強い風が吹いて、彼の前髪が崩れた。
「――っと」
慌てて前髪を押さえたヴィリバルトさんは、前髪を整えた。
「すみません。……見てない、ですよね?」
恐る恐る問いかけてくる彼に、私は返事ができなかった。
だって、前髪の下にある彼の素顔を、私ははっきり見てしまったから。
(この人は――)
どうして素顔を隠すんだろう。
その疑問が大きくなっていく。
(だって、この人――すごく、美しいお顔をしていた)
隠すなんてもったいないほど、美しい顔立ちだった。
「俺、自分の顔が好きじゃなくて。……本当、お見苦しいものをお見せして」
肩をすくめた彼の言葉は頭に入ってこない。
いろいろな意味で衝撃的だったんだもの。
(この世で一番美しいと言っても、過言じゃないのに)
彼はその顔が嫌いだという。
もしかしたら、このお顔が原因でなにか嫌なことがあったのかもしれない。
だから、私は無理を言うことはできないのだ。
(――そのお顔を、もう一度見たいって思うのは、いけないこと)
私だって顔で嫌な思いをしてきた。……なら、彼の気持ちはわかるはず。
無理を言うなんて、許されない。許されないのよ。
だって、今までの私なら表面上の付き合いだけで満足していたから。
……元婚約者とだって、家族とだって。表面上だけ付き合っていた。
深く知ろうなんて思いもしなかった。
でも、この人のことを見ていると、今まで知らなかった感情が胸の中に芽生えていく。
どうしてなのかは、わからないけど。
「そりゃあ、出逢ったばかりの女に言われても困るって、わかっています。でも――」
それに、私は居候。現状彼のお荷物でしかない。
「……知りたいって、思ってしまうんです」
出た声は、自分でも驚くほど小さかった。
恐る恐る顔をあげると、彼が私を見ている。気まずくてそっと視線を逸らした。
「困ったり、しませんから」
彼の返事も、とても小さかった。
「だから、そうですね。少しずつ互いのことを知りましょう。たくさん話をして、たくさん一緒にいて――」
彼は「たくさん一緒にいて」という。でも、この関係は長くは続かないって、わかっている。
いつまでも居候でいるなんて、私が耐えられないから。
「……はい。たくさん、お話ししましょう」
だけど、今は彼の言葉に甘えていたかった。
人に甘えるなんて、一体いつぶりだろう。頭の片隅に浮かんだ疑問を振り払い、私はぎこちなく笑う。
ひときわ強い風が吹いて、彼の前髪が崩れた。
「――っと」
慌てて前髪を押さえたヴィリバルトさんは、前髪を整えた。
「すみません。……見てない、ですよね?」
恐る恐る問いかけてくる彼に、私は返事ができなかった。
だって、前髪の下にある彼の素顔を、私ははっきり見てしまったから。
(この人は――)
どうして素顔を隠すんだろう。
その疑問が大きくなっていく。
(だって、この人――すごく、美しいお顔をしていた)
隠すなんてもったいないほど、美しい顔立ちだった。
「俺、自分の顔が好きじゃなくて。……本当、お見苦しいものをお見せして」
肩をすくめた彼の言葉は頭に入ってこない。
いろいろな意味で衝撃的だったんだもの。
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彼はその顔が嫌いだという。
もしかしたら、このお顔が原因でなにか嫌なことがあったのかもしれない。
だから、私は無理を言うことはできないのだ。
(――そのお顔を、もう一度見たいって思うのは、いけないこと)
私だって顔で嫌な思いをしてきた。……なら、彼の気持ちはわかるはず。
無理を言うなんて、許されない。許されないのよ。
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