捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。

扇レンナ

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本編 第2章

第4話

「最近あまり人に振る舞っていなかったので、不安だったんです」

 ヴィリバルトさんはなんてことない風にそう言って、肩をすくめた。

 ……その表情は本当に安心しているかのよう。でも、私にはそれよりも重要なことがあって。

(このお料理、ヴィリバルトさんが作ったの……?)

 ぽかんとしつつ、料理を見つめる。

 私のその姿を見たヴィリバルトさんが、笑った。

「この邸宅には俺しかいませんからね。すべてのことにおいて、自分でしなくちゃ」

 彼はさも当然のようにそう言うけれど。それって、すごく立派なことなんじゃないだろうか。

「……その、わた、しは」

 私にもなにか出来ないだろうか。

 そう言おうとして、ヴィリバルトさんに手で制された。

「メリーナさんはお客さんですから。なにもしなくていいんですよ」

 にこやかに笑った彼が、そう告げてくる。

 確かに、それはそうなのかもしれない。けど、迷惑をかけている自覚はあるのだ。なにか、恩返しくらいしたい。

「ですが、私、本当ご迷惑ばっかりかけていて……」

 酔い潰れたこともそうだけれど、一晩泊めてもらったことも。本当に申し訳なくて仕方がない。

 眉を下げてそう言えば、ヴィリバルトさんは「気にしないで」と言ってくれる。

「俺がしたくてやっていることですから」

 そう言われても、私はやっぱり納得できない。

 そんな風に思いつつ視線を下げていれば、ふとヴィリバルトさんが声を上げた。

「そういえば、これから行く当てはあるんですか?」
「……いえ」

 彼の問いかけにゆるゆると首を横に振る。

 そうだ。今の私は、そんなことを考えている場合ではないのだ。

(住む場所とか、働く場所とか。探さなくちゃ……)

 貴族の娘を雇ってくれる場所なんて、あるのだろうか……?

 という不安を抱いて、頬を引きつらせてしまう。

(それに、いつまでも宿を借りているわけにもいかないわ。お金ばかり、かさんでしまう)

 ある程度はお金があるとはいえ、一生宿暮らし……なんていうのは、絶対に無理だ。本当に無理だ。それくらい、私にもわかる。

 つまり、今私がするべきは。

(お仕事を見つけて、アパートを借りるということ)

 ある程度のお仕事があれば、アパートだって契約できるだろう。

 よし、決めた。

「ただ、この後お仕事を探して、アパートでも借りれたら……とは、思っています」

 パンをちぎりつつ、私はそう伝える。

「しばらくは宿暮らしになるでしょうが、それも仕方がないことですし……」

 雨風をしのげるだけ、マシというものだろう。

 私が肩をすくめてそう続ければ、ヴィリバルトさんが少し考えこむような素振りを見せた。

「……実は俺、考えていたことがあって」

 彼がお水の入ったグラスを手に取って、真剣な面持ちで私を見つめてくる。

「メリーナさんさえよければ、ここに滞在しませんか?」

 ……が、その言葉の意味がすぐには理解できなかった。

 どう、いうことなんだろうか。

「え、えぇっと」
「いえ、深い意味はないです。どうせ、部屋は有り余っていますし」

 彼はなんてことない風にそう言うけれど、そんな理由で居候するのも、ちょっと悪いというか。

「それに、今すぐに働く場所を見つけようとしても、きっとうまくはいきません」
「……それは、そう、かもですが」

 貴族の令嬢が出来る仕事なんて、たかが知れている。彼は、そう言いたいのだろう。

「だから、ここで仕事に就くための練習をするんです」
「……練習、ですか?」
「はい。これでも俺は一人で暮らしていますし。家事系統ならば、ある程度教えられます」

 ヴィリバルトさんが、口元を緩めてそう言ってくれる。

 長い前髪の所為で、目がどんな感じなのかはわからない。けれど、悪いことを考えているようには思えない。

(そりゃあ、私になにもしなかっただけ、信頼できるんだけど……)

 酔い潰れた私になにもしなかった。それだけで、信頼は出来る。

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