捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。

扇レンナ

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本編 第2章

第5話

「……ですが、ご迷惑では?」

 が、易々とその提案を受け入れることは出来ない。だって、この提案だと。

 ――彼に、利益がちっともないのだ。

(人間とは、利益を求めるものではないの?)

 利益、もしくは対価。そのどちらかが発生していれば、私だってここまで迷うことはなかったと思う。

 ……しかし、そんな私の考えは彼には通じなかったらしい。ただただ、肩をすくめていた。

「迷惑だなんて、そんな。……俺が好きでやっていることなので」

 彼の言葉から、嘘はちっとも感じられない。彼は本気でそう思っている。どれだけ、お人好しなのだろうか。

(というか、よくもまぁこんなお人好しの人物が、一人で生きてこられたわね……)

 もしくは、竜騎士という身分があるから、変な人間が近寄ってこなかったのかも……と、思いつつ。

 私は考えてみる。けど、答えなんて最初から出ているようなものだった。

「その、えぇっと」
「はい」
「私、本当になにも出来ません。なので、本当にご迷惑というか、邪魔になると、思います」

 とりあえず、このことは念押ししておかなくちゃならない。

 その一心でそう告げれば、ヴィリバルトさんは大きく頷いていた。

「初めはなにも出来なくて当然です。ゆっくりと覚えていけばいいんです」

 そんなことを言う彼の目は見えない。でも、もしかしたら笑っているのかも……と、思ってしまう。

 分厚い前髪の奥にある、素顔。……見たい、と思ってしまった。

(だけど、そんなこと言えるような立場ではないわ)

 私だって、自分の立場は弁えているつもりだ。

 だから、私はその言葉を呑み込んで。軽く頭を下げる。

「では、その。……よろしく、お願いいたします」

 ちょっと戸惑ったような声でそう告げれば、ヴィリバルトさんがほっと胸をなでおろしたのがわかった。

「はい、よろしくお願いされました」
「……なんですか、それ」

 それは少し、言葉がおかしいんじゃないだろうか?

 そう思って笑う私。ヴィリバルトさんは、少し嬉しそう……に、見える。

「あなたは、笑った顔が可愛いですね。……本当、魅力的だ」

 ……が、さすがに。こんなにも突拍子もない言葉には、戸惑う。すぐに反応が出来ない。

 ぽかんとする私を、ヴィリバルトさんが見つめる。頬杖をついて、何処か愛おしそうに。

「か、からかわ、ないで、ください……」
「からかってないです。……あなたは、本当に魅力的ですよ。愛らしくて、とってもきれい」

 今までは何処か柔らかな声だったのに。そう言ったヴィリバルトさんの声は、力強くて。

 まるで、私の中にある負の感情を押し流そうとしているかのような。

 そんな声に、聞こえてしまった。

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