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本編 第2章
第9話
「ふわぁぁ」
思わず間抜けな声をあげた。
ヴィリバルトさんは私に温かい視線を向けたあと、重そうな扉に手をかける。
「――」
なにかを唱え、取っ手を握る。
すると、ごぉぉと地鳴りのような音を鳴らし、扉が開いていく。
一分もする頃には、扉は大きく開かれていた。
「さぁ、行きましょう」
ヴィリバルトさんが私に手を差し出す。迷った末に彼の手を取って、私は建物の中に入った。
建物内の空気はひんやりしていた。
つい周囲をきょろきょろ見渡してしまう。
「ここは段差が多いので、気を付けて」
私は素直にうなずいて、彼のあとに続いていく。
少し歩くと、視界の奥になにか巨大なものが見えた。丘のようにも見えるけど、あれはきっと――。
「ギード、調子はどうですか? どこか痛かったりしませんか?」
ヴィリバルトさんの声に反応するように、巨大なもの――ドラゴンが身をよじる。
ドラゴンは折りたたんだ翼をちょっとだけ広げた。
「私は大丈夫ですよ。ヴィリのほうこそ、なにか変わったことは――」
ドラゴンの目が私を捉えた。
ドラゴンに対してのあいさつなどわからない。迷った末に会釈をする。
「ど、どうも」
声が上ずっている。なんか、今までにないほど緊張していた。
あれだけ楽しみにしていたのに、今では緊張のほうが上回っている。どうしてなのかはわからない。
「ギード、彼女はメリーナさんです。これからしばらく一緒に住むので、紹介しようと思いまして」
「メリーナです。よろしくお願いします……」
このあいさつで合っているのか。不安を胸に抱きつつ、私は頭を下げる。
ドラゴン――ギードさんは私とヴィリバルトさんを交互に見て、ツンと顔を背けた。
「別に構いません。私とヴィリは仕事上のパートナー、プライベートのことなど知らなくてもいいのです」
なんだか、拗ねている風に見えるのは気のせい?
「だから、事後報告でも全然気にしていませんよ。えぇ、私は心が広いので……」
絶対に拗ねている。
これだけ巨大な身体で拗ねられても、普通はほほえましいなんて思えない。けど、私には可愛く見えた。
ヴィリバルトさんは、ギードさんに近づく。そして、翼を撫でた。
「ギード、彼女はそういう相手ではありませんよ。困っていたので、住居を提供したまでです」
「……そうなのか?」
「はい。あなたには嘘をつかないと決めていますから」
優しい手つきでギードさんのうろこを撫で、ヴィリバルトさんは笑っていた。
目元は見えない。わかるのは、声が優しいから。
「だが……」
「昨夜出逢ったんですよ。そもそも、交際している相手ならきちんとあなたに報告します」
……ん?
「それに、あんなにも美しい人が俺みたいな冴えない男を相手してくれるとは思えませんし」
……ちょっと待って。
「結婚なんて夢のまた夢です。俺は――」
「ヴィリバルトさん!」
声をあげる。ヴィリバルトさんとギードさんの視線が、私に集まった。
「えっと……その。ギードさんは、私たちのことを……」
「はい。勘違いしていたみたいです。あなたを俺の伴侶だと思ったようで」
確かに、そう思っていたなら今までの言葉も納得できる。
……そっか。だから拗ねていたのね。
「ギードさん」
「な、なんでしょうか」
「ヴィリバルトさんは、私なんかにはもったいない人ですよ」
彼の素顔を見たことはないけど。
性格だけでも、彼が素敵な人だというのはわかってしまう。
こんな可愛げのない女にはもったいない人だって、知っている。
思わず間抜けな声をあげた。
ヴィリバルトさんは私に温かい視線を向けたあと、重そうな扉に手をかける。
「――」
なにかを唱え、取っ手を握る。
すると、ごぉぉと地鳴りのような音を鳴らし、扉が開いていく。
一分もする頃には、扉は大きく開かれていた。
「さぁ、行きましょう」
ヴィリバルトさんが私に手を差し出す。迷った末に彼の手を取って、私は建物の中に入った。
建物内の空気はひんやりしていた。
つい周囲をきょろきょろ見渡してしまう。
「ここは段差が多いので、気を付けて」
私は素直にうなずいて、彼のあとに続いていく。
少し歩くと、視界の奥になにか巨大なものが見えた。丘のようにも見えるけど、あれはきっと――。
「ギード、調子はどうですか? どこか痛かったりしませんか?」
ヴィリバルトさんの声に反応するように、巨大なもの――ドラゴンが身をよじる。
ドラゴンは折りたたんだ翼をちょっとだけ広げた。
「私は大丈夫ですよ。ヴィリのほうこそ、なにか変わったことは――」
ドラゴンの目が私を捉えた。
ドラゴンに対してのあいさつなどわからない。迷った末に会釈をする。
「ど、どうも」
声が上ずっている。なんか、今までにないほど緊張していた。
あれだけ楽しみにしていたのに、今では緊張のほうが上回っている。どうしてなのかはわからない。
「ギード、彼女はメリーナさんです。これからしばらく一緒に住むので、紹介しようと思いまして」
「メリーナです。よろしくお願いします……」
このあいさつで合っているのか。不安を胸に抱きつつ、私は頭を下げる。
ドラゴン――ギードさんは私とヴィリバルトさんを交互に見て、ツンと顔を背けた。
「別に構いません。私とヴィリは仕事上のパートナー、プライベートのことなど知らなくてもいいのです」
なんだか、拗ねている風に見えるのは気のせい?
「だから、事後報告でも全然気にしていませんよ。えぇ、私は心が広いので……」
絶対に拗ねている。
これだけ巨大な身体で拗ねられても、普通はほほえましいなんて思えない。けど、私には可愛く見えた。
ヴィリバルトさんは、ギードさんに近づく。そして、翼を撫でた。
「ギード、彼女はそういう相手ではありませんよ。困っていたので、住居を提供したまでです」
「……そうなのか?」
「はい。あなたには嘘をつかないと決めていますから」
優しい手つきでギードさんのうろこを撫で、ヴィリバルトさんは笑っていた。
目元は見えない。わかるのは、声が優しいから。
「だが……」
「昨夜出逢ったんですよ。そもそも、交際している相手ならきちんとあなたに報告します」
……ん?
「それに、あんなにも美しい人が俺みたいな冴えない男を相手してくれるとは思えませんし」
……ちょっと待って。
「結婚なんて夢のまた夢です。俺は――」
「ヴィリバルトさん!」
声をあげる。ヴィリバルトさんとギードさんの視線が、私に集まった。
「えっと……その。ギードさんは、私たちのことを……」
「はい。勘違いしていたみたいです。あなたを俺の伴侶だと思ったようで」
確かに、そう思っていたなら今までの言葉も納得できる。
……そっか。だから拗ねていたのね。
「ギードさん」
「な、なんでしょうか」
「ヴィリバルトさんは、私なんかにはもったいない人ですよ」
彼の素顔を見たことはないけど。
性格だけでも、彼が素敵な人だというのはわかってしまう。
こんな可愛げのない女にはもったいない人だって、知っている。
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