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本編 第4章
お仕事開始
それからしばらくして、ヴェルディアナはラーレに連れられ、厨房に向かった。リベラトーレの三時の軽食だというスイーツを料理人からもらい、ワゴンを押しながら屋敷の廊下をラーレと歩く。目的地はもちろんリベラトーレの部屋だ。
「えぇっと、ラーレ、さん、は……」
「私のことはラーレで構いませんよ、ヴェルディアナ様」
ヴェルディアナがラーレのことをどう呼べばと思えば、彼女は淡々とそう言葉を返してくる。そのため、ヴェルディアナは静かに「……ラーレ」と呼び捨てにした。すると、彼女は満足そうにうなずく。どうやら、これで正解らしい。
「……その、私のことを様付けするのは、ちょっと」
次にそう言って、ヴェルディアナは眉を下げる。
今の自分は貴族ではないのだ。だからこそ、様付けされる意味はない。そういう意味を込めてラーレに抗議したのだが、彼女は「いえ、リベラトーレ様にそう命じられておりますので」としか言わない。……どうにも、リベラトーレはヴェルディアナのことを普通の侍女として雇ったわけではないらしい。まぁ、自身の専属として雇った時点で、普通ではないのだろうが。
その後しばらく歩けば、一つの豪華絢爛な扉の前でラーレが立ち止まる。その扉には色とりどりの宝石が埋め込まれており、何処となく神秘的な雰囲気だった。
宝石たちは光を受けて輝いている。とても、きれいだ。
ヴェルディアナがそう思いながらぼんやりとそれらを見つめていれば、ラーレは「リベラトーレ様」と扉越しに声をかけ、ノックする。
「ヴェルディアナ様をお連れしました。それから、三時のスイーツでございます」
ラーレがそう声をかければ、中から「どうぞ」という声が聞こえてきた。そのためだろう、ラーレは扉の前から退き、ヴェルディアナに入るようにと促す。……ここからは、一人か。何処となく心細い気持ちになりながらも、ヴェルディアナは与えられた仕事を全うしようと足を踏み出す。少し丈の短いスカート部分の所為だろうか。足元が少しだけ寒い。
「リベラトーレ様。……スイーツを、お持ちいたしました」
部屋に入り、ラーレに教えられたとおりのセリフを口にする。それから、ゆっくりと顔を上げた。
そうすれば、リベラトーレは部屋の一番奥にある執務机の前で何かの書類と格闘しているようだった。彼の目の前には山積みの書類が置いてある。ちなみに、部屋の最奥には黒色の星に金色の縁取りがしてある大きな壁掛け時計がかかっていた。あの形は『シュタイン』の紋章だ。そう思いながらヴェルディアナがワゴンを押して執務机の横に移動すれば、リベラトーレはにっこりと笑う。
「今日のスイーツは、何ですか?」
「えっと……マドレーヌと、フィナンシェでございます」
リベラトーレの問いかけに、教えてもらった通りのセリフを返す。ワゴンの上にはティーセット、それからマドレーヌとフィナンシェが載った皿が置いてある。これをリベラトーレに届ければ、この仕事は終わりだ。そんなことを思いながらヴェルディアナは机の空いたスペースにティーセットと皿を載せる。
「わ、私は、これにて失礼いたしま――」
呼び止められることはないだろう。ヴェルディアナはそう楽観視していた。しかし、リベラトーレは「待ってください」とヴェルディアナに声をかけてくる。……なんとなく、嫌な予感がする。背中に伝う嫌な汗を感じながらヴェルディアナがリベラトーレと視線を合わせれば、彼は口元を歪めながら「食べさせてください」とある意味とんでもないことを言ってきた。
「……そ、その」
リベラトーレは幼子ではない。だから、何故自分が食べさせなければいけないのか。そんなことを考えていたヴェルディアナを他所に、リベラトーレは立ち上がりヴェルディアナの方に近づいてくると、その身体を抱き上げる。そして、自身が腰掛けていた椅子に戻ると、そのまま腰掛けた。ちなみに、ヴェルディアナは彼の膝の上に座ることを強要されている形だ。もちろん、対面で。
「ほら、あーんって、して?」
甘えるようにそう言われ、ヴェルディアナは戸惑った。リベラトーレはヴェルディアナの目をしっかりと見つめている。つまり、真っ赤になったこの顔もしっかりと見られているということだ。その所為で、さらに顔に熱が溜まるのを実感してしまう。
「そ、その、ご自分で――」
「俺の専属侍女なんですから、俺の言うことはきちんと聞いてください」
そう言われても、これは絶対に侍女の仕事じゃない――!
視線だけでリベラトーレにそう訴えるものの、彼は「あーんって、して?」なんて甘えたように言ってくるだけだ。……柄にもなく可愛らしいと思ってしまうのは、幼い頃の彼の姿を知っているからだろうか。あの十年前の少年と目の前の青年が重なる。その所為で、拒めないのだろうか。
「あーんってしてくれないと、俺、ちょっと悪戯しちゃうかもしれません」
躊躇い続けるヴェルディアナにしびれを切らしたのか、リベラトーレはヴェルディアナの腰に手を回し、その細い腰を撫でた。その撫で方には下心がこもっており、身体がびくりと震え反応してしまう。そのままエプロンの中に手を入れられ、リベラトーレの手はヴェルディアナのブラウスのボタンを一つ、外した。
「や、やめ……!」
ぷつり、ぷつりと外されていくブラウスのボタン。それに混乱していれば、リベラトーレは「ほら、あんまり遅いと……」と言って、ヴェルディアナのブラウスのボタンを一つ残らず外してしまう。そのままエプロンに手をかけ、さらりと取り除く。そうすれば、ヴェルディアナは胸元を隠す下着をリベラトーレの眼下に晒してしまった。
「ヴェルディアナの身体、とってもきれいですよね……! 下着もずらしちゃおうっと」
そう言って、リベラトーレはヴェルディアナの胸を覆う下着をずらす。その結果、ヴェルディアナの胸を隠すものは何一つとしてなくなってしまう。胸を隠そうと手を持っていこうとしたが、リベラトーレの視線にねじ伏せられてしまう。彼の目は、言っている。
――絶対に隠すな、と。
「えぇっと、ラーレ、さん、は……」
「私のことはラーレで構いませんよ、ヴェルディアナ様」
ヴェルディアナがラーレのことをどう呼べばと思えば、彼女は淡々とそう言葉を返してくる。そのため、ヴェルディアナは静かに「……ラーレ」と呼び捨てにした。すると、彼女は満足そうにうなずく。どうやら、これで正解らしい。
「……その、私のことを様付けするのは、ちょっと」
次にそう言って、ヴェルディアナは眉を下げる。
今の自分は貴族ではないのだ。だからこそ、様付けされる意味はない。そういう意味を込めてラーレに抗議したのだが、彼女は「いえ、リベラトーレ様にそう命じられておりますので」としか言わない。……どうにも、リベラトーレはヴェルディアナのことを普通の侍女として雇ったわけではないらしい。まぁ、自身の専属として雇った時点で、普通ではないのだろうが。
その後しばらく歩けば、一つの豪華絢爛な扉の前でラーレが立ち止まる。その扉には色とりどりの宝石が埋め込まれており、何処となく神秘的な雰囲気だった。
宝石たちは光を受けて輝いている。とても、きれいだ。
ヴェルディアナがそう思いながらぼんやりとそれらを見つめていれば、ラーレは「リベラトーレ様」と扉越しに声をかけ、ノックする。
「ヴェルディアナ様をお連れしました。それから、三時のスイーツでございます」
ラーレがそう声をかければ、中から「どうぞ」という声が聞こえてきた。そのためだろう、ラーレは扉の前から退き、ヴェルディアナに入るようにと促す。……ここからは、一人か。何処となく心細い気持ちになりながらも、ヴェルディアナは与えられた仕事を全うしようと足を踏み出す。少し丈の短いスカート部分の所為だろうか。足元が少しだけ寒い。
「リベラトーレ様。……スイーツを、お持ちいたしました」
部屋に入り、ラーレに教えられたとおりのセリフを口にする。それから、ゆっくりと顔を上げた。
そうすれば、リベラトーレは部屋の一番奥にある執務机の前で何かの書類と格闘しているようだった。彼の目の前には山積みの書類が置いてある。ちなみに、部屋の最奥には黒色の星に金色の縁取りがしてある大きな壁掛け時計がかかっていた。あの形は『シュタイン』の紋章だ。そう思いながらヴェルディアナがワゴンを押して執務机の横に移動すれば、リベラトーレはにっこりと笑う。
「今日のスイーツは、何ですか?」
「えっと……マドレーヌと、フィナンシェでございます」
リベラトーレの問いかけに、教えてもらった通りのセリフを返す。ワゴンの上にはティーセット、それからマドレーヌとフィナンシェが載った皿が置いてある。これをリベラトーレに届ければ、この仕事は終わりだ。そんなことを思いながらヴェルディアナは机の空いたスペースにティーセットと皿を載せる。
「わ、私は、これにて失礼いたしま――」
呼び止められることはないだろう。ヴェルディアナはそう楽観視していた。しかし、リベラトーレは「待ってください」とヴェルディアナに声をかけてくる。……なんとなく、嫌な予感がする。背中に伝う嫌な汗を感じながらヴェルディアナがリベラトーレと視線を合わせれば、彼は口元を歪めながら「食べさせてください」とある意味とんでもないことを言ってきた。
「……そ、その」
リベラトーレは幼子ではない。だから、何故自分が食べさせなければいけないのか。そんなことを考えていたヴェルディアナを他所に、リベラトーレは立ち上がりヴェルディアナの方に近づいてくると、その身体を抱き上げる。そして、自身が腰掛けていた椅子に戻ると、そのまま腰掛けた。ちなみに、ヴェルディアナは彼の膝の上に座ることを強要されている形だ。もちろん、対面で。
「ほら、あーんって、して?」
甘えるようにそう言われ、ヴェルディアナは戸惑った。リベラトーレはヴェルディアナの目をしっかりと見つめている。つまり、真っ赤になったこの顔もしっかりと見られているということだ。その所為で、さらに顔に熱が溜まるのを実感してしまう。
「そ、その、ご自分で――」
「俺の専属侍女なんですから、俺の言うことはきちんと聞いてください」
そう言われても、これは絶対に侍女の仕事じゃない――!
視線だけでリベラトーレにそう訴えるものの、彼は「あーんって、して?」なんて甘えたように言ってくるだけだ。……柄にもなく可愛らしいと思ってしまうのは、幼い頃の彼の姿を知っているからだろうか。あの十年前の少年と目の前の青年が重なる。その所為で、拒めないのだろうか。
「あーんってしてくれないと、俺、ちょっと悪戯しちゃうかもしれません」
躊躇い続けるヴェルディアナにしびれを切らしたのか、リベラトーレはヴェルディアナの腰に手を回し、その細い腰を撫でた。その撫で方には下心がこもっており、身体がびくりと震え反応してしまう。そのままエプロンの中に手を入れられ、リベラトーレの手はヴェルディアナのブラウスのボタンを一つ、外した。
「や、やめ……!」
ぷつり、ぷつりと外されていくブラウスのボタン。それに混乱していれば、リベラトーレは「ほら、あんまり遅いと……」と言って、ヴェルディアナのブラウスのボタンを一つ残らず外してしまう。そのままエプロンに手をかけ、さらりと取り除く。そうすれば、ヴェルディアナは胸元を隠す下着をリベラトーレの眼下に晒してしまった。
「ヴェルディアナの身体、とってもきれいですよね……! 下着もずらしちゃおうっと」
そう言って、リベラトーレはヴェルディアナの胸を覆う下着をずらす。その結果、ヴェルディアナの胸を隠すものは何一つとしてなくなってしまう。胸を隠そうと手を持っていこうとしたが、リベラトーレの視線にねじ伏せられてしまう。彼の目は、言っている。
――絶対に隠すな、と。
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