【完結】【R18】婚約破棄から十年後、元婚約者に呪われた。

扇レンナ

文字の大きさ
39 / 47
本編 第7章

オリヴァーの真実

「僕はアイクラー子爵の隠し子でした。……僕は偶然にも優秀で、アイクラーの姓を名乗ることが許されています」

 目を伏せて、オリヴァーは自身の過去を語ってくれた。

 オリヴァーの母は、アイクラー子爵家で働いているメイドだったらしい。その容姿を気に入られ、現在のアイクラー子爵のお手付きになり、オリヴァーを身籠ったそうだ。

「ですが、夫人はそんな母を嫌いました。母に嫌がらせを繰り返し、しまいには母は精神を病んでしまいました」
「……そう、なのですか」
「でも、僕には夫人の子供たちよりも魔法の才能があった。父はそれを喜び、僕を引き取ることにしたそうです。その条件として、僕は母のために小さな屋敷を建ててほしいとお願いしました」

 どうやら、オリヴァーは相当母親思いらしい。

 そして、オリヴァーの話を聞いていると「……もしかして」という可能性がヴェルディアナの頭の中に湧き出てくる。

「父はそれを了承し、ここに小さな屋敷を建ててくれました」
「……オリヴァー、さま」
「父は生粋の王弟派の魔法使いでした。なので、僕に王弟派の魔法使いになるようにと命じました。……母を、人質にとって」

 そう言ったオリヴァーはその手のひらをぎゅっと握りしめる。どうやら、ヴェルディアナの予想していた通りらしい。オリヴァーの言葉たちにヴェルディアナが目を伏せていれば、彼は「それに、王弟派の魔法使いになれば、母が回復するかもと思ったんです」と続ける。

「禁術の中には、そういう魔法があります。僕はそれを手に入れたくて、仕方がなかった」

 禁術とは、その名の通り使うことを禁止された魔法である。代償が大きい、または秩序を乱すと判断され使用を禁止された魔法。その資料は王国が所有する研究所の資料庫に保管されているらしい。ということは、オリヴァーが『シュタイン』にスパイとして侵入したのは――……。

「……オリヴァー様は、その禁術を手に入れるために、『シュタイン』に潜入したのですか……?」

 ヴェルディアナがそう問えば、彼は静かに頷いた。

「本来ならば、僕はさっさと『シュタイン』を後にするつもりでした。ただ、同期として入ってきたのがリベラトーレだったんです」

 リベラトーレの名前を呼ぶオリヴァーの声音は、どうしようもない感情が混ざっているようだった。様々な感情が混ざり合い、一言では言い表せない感情へと変化している。それに気が付き、ヴェルディアナは一度だけ息を呑む。

「……なんていうか、初めは僕、あいつのこと嫌いだったんです。恵まれた環境で生まれ育って、両親にも愛されて。あぁ、僕とは違うんだ。僕みたいなドロドロした気持ちなんて、こいつは知らない。そう、思っていました。でも、あいつの中にはいつだってドロドロした気持ちが渦巻いていた。……恋っていう名の、毒のようなものが」
「……それ、は」
「いつしか、僕はあいつと仲良くなっていました。……けど、僕が王弟派である以上、いつかは敵対する運命だった。……本当のところは、リベラトーレのこと陥れたくなかったんですよね」

 肩をすくめながらオリヴァーはそう言う。……だからこそ、ヴェルディアナは何も言えなかった。

 オリヴァーの気持ちは何となくだがわかる。でも、やっていいことと悪いことがある。

「だけど、母を人質に取られている以上、僕は王弟派で居続けなくちゃならない。……母とリベラトーレを天秤にかけたら、母が勝ちました。……ねぇ、ヴェルディアナさん」
「……はい」
「ここで、一つ僕が条件を出します。その条件を呑んでくれるんだったら、僕は自首します。僕がリベラトーレを陥れたんだって、白状してきます」

 ヴェルディアナのことを見つめながら、オリヴァーはそう言う。だからこそ、ヴェルディアナは少しためらったものの頷いていた。

「ありがとうございます。……僕は、母のことを救いたいんです。だから、どうか――」

 ――貴女の力で、母のことを助けてはくれないでしょうか?

 その橙色の目がヴェルディアナのことを射貫く。けれど、それよりも。

「……私の力って、どういうこと、ですか?」

 思わずヴェルディアナはそう呟いていた。だって、ヴェルディアナに特殊な力などないのだから。

あなたにおすすめの小説

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

皇太子殿下は、幼なじみの頬しか触らない

由香
恋愛
後宮には、美しい妃が大勢いる。 けれど皇太子・曜は、誰にも触れないことで有名だった。 ――ただ一人を除いて。 幼なじみの侍女・翠玉。 彼女の頬だけは、毎日のようにつつき、摘まみ、抱き寄せる。 「殿下、見られてます!」 「構わない」 後宮中が噂する。 『皇太子は侍女に溺れている』 けれど翠玉はまだ知らない。 それが幼なじみの距離ではなく、皇太子の独占欲だということを。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。